第61話『神に仕える者たちと、風俗を愛する者たち』
──神殿地下、禁忌の聖域にて。
蒸気と香気がまだ立ち込める中、静かに、だが確かに“戦いの幕”が上がった。
「こちら、《神託の泉》特別警護神官団。“神の愛”を護る、最後の盾」
神官長がそう告げると、奥の扉が開き、
30人近い神官団の戦士たちが次々と現れた。
その中には──魔術師、斥候、武闘派まで、全属性揃っている。
「なるほどな、こりゃ……ただの“癒し商売”じゃなかったわけだ」
常盤流星は、剣の柄に手をかけた。
──だが、次の瞬間。
「さーて♡ こっちの“神の祝福”も、準備できたよ~ん!」
突如、別の扉が派手に開き、現れたのは──
神官服姿のヴァネッサだった。
ただし。
布面積、極小。
露出、大。
まるでビキニとローブを混ぜたような、**“南国風の神官服コスプレ”**だった。
「うぉい!?」
流星が目を剥く。
「これ、衣装室にあったから使っていいって!」
「言ってねぇよ!?」
「リリア! あなたもほら、袖通して!」
「なんで私まで……ッ!?」
もはや半ば強引に引きずり出されたのは、
同じく肌の露出が多い神官服に身を包んだリリア。
「ううう……肩丸見えなんですけど……!」
「でも、よく似合ってるぜ。信仰の力って感じだ」
「それ褒めてるの!?」
続いて現れたのは、アリシアとミレーユ。
こちらも例に漏れず──
清楚系神官服をベースに、露出は少なめだが身体のラインが強調されている仕様。
「……私はこれ、ただの布地コスプレと解釈してるから」
「主観防衛、強すぎない!?」
「こうでもしないと、恥ずかしくてやってられません……!」
だが。
その4人が並び立つ姿は、まるで“愛と信仰の反逆者”のようだった。
──囮作戦、開始。
「おい、あれを見ろ!」
「まさか、神の使徒が裏切ったのか!?」
「“本物の神託”としか思えん美しさだ……」
神官団に、明らかな混乱が生じる。
その隙を突いて、流星が剣を抜いた。
「よし、今だ!!」
──戦闘、開始。
リリアが風のように舞い、
アリシアが魔法で遮蔽を突破、
ヴァネッサが正面から斬り込み、
ミレーユが魔力制御で結界を無力化する。
神官団の武装は硬いが、“女神官たち”の猛攻は、教義をも揺るがせる勢いだった。
──そして中央。
流星が叫ぶ。
「風俗ってのは、誰かに与えられるもんじゃない!!」
「俺が、俺の煩悩で、自分で選んで、自分の金で行くもんだろォ!!!」
「風俗を愛するってのは、自由の証だッ!!」
その言葉に──
リリアたち、
思わず吹き出しそうになりながらも、笑った。
「ほんっとに、ブレないねアンタは……!」
「でも、だからこそ──守ってあげたくなるのよ」
──戦場の空気が、一変する。
神官団の魔術師が一斉に詠唱を開始。
「この者たちは、“信仰を穢す者”……!」
「偽りの愛を掲げる者──ここで討つ!!」
結界が展開され、魔力の波が一気に押し寄せた──が。
その波を真っ向からぶった切ったのは──
常盤流星の剣だった。
「俺は信仰を汚してなんかない。
“癒し”も、“愛”も──現実にしかねぇんだよッ!!!」
彼の言葉と剣が、
空気を、結界を、そして信仰の幻想すらも、真っ二つに裂いた。
光の中で、倒れ伏す神官団。
残った者たちは、誰一人、武器を取ろうとしなかった。
◆
戦いの後──
流星たちは、崩れた地下聖域の最奥へと足を踏み入れた。
そこには、一枚の石板が残されていた。
《真の癒しとは、他者の幻想に溺れることではない。
己の煩悩を知り、意志を持ちて選ぶことなり》
「……随分と、わかってる奴が書いたらしいな」
流星が呟いた。
ヴァネッサが笑って肩を叩く。
「つまり、“風俗も人生”ってことだよね!」
「……まぁ、極論すぎるけど。概ね、そういうことだな」
ヒロインたちはため息をつきながらも、
なぜかその横顔に、安堵をにじませていた。
──風俗を愛する勇者、常盤流星。
また一つ、“本物の癒し”に近づいたようだった。




