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第54話『それでも俺は風俗へ行く──そして恋もする』

──朝、王都・ユグノール通り。


「さあ流星。今日は“本格的な文化調査”よ」


シェリル王女が香水をまとい、黄金の馬車から気品たっぷりに手を差し出す。


「う、うん……いやあの、視察ってそんなノリなんだ……?」


流星は戸惑いながら、王女に手を引かれて馬車に乗り込む。

そしてそのまま、再び“風俗街視察”という名の地獄に向かった。


 



 


「へえ〜、これが“手繋ぎデートコース”ね。初歩の接客、ふむふむ……」


「おや? こちらは“寝かしつけコース”? 『膝枕と耳かきつき』って書いてある」


「文化だねぇ、実に文化的だねぇ」


シェリルは無邪気に観察していた。

その姿は、まるで修学旅行中の生徒。


 


「なあ王女様よ……ちょっとこの辺で切り上げない?」


「どうして?」


「……心がもたねぇ!!」


流星は叫んだ。


 


風俗街で王女と二人きりというこの構図、ただでさえ危険なのに、

次の瞬間には──


 


「見ぃつけたぁああああ!!」


怒号。


馬車の後方から、三人のヒロインたちが突撃してきた。


 


「また風俗視察!? どんだけ精力的なのよバカ流星!!」


リリア、剣を片手にブチ切れ状態。


「文化調査だかなんだか知らないけど、ちょっと乳寄せて誘ってる女王女にホイホイくっつくなッ!」


アリシア、魔法の杖から雷光がちらつく。


「え、わたしだけノーブラなんだけど!? さっき慌てて着替えて来たらなんでこんな事に!」


ヴァネッサ、全裸に近いスポーツタオル姿。


「なんでその格好で来た!?」


「だって流星がまたハメ外してんじゃないかと思って──♡」


 


地獄のような修羅場が始まった。


 


「そ、そもそも今日は俺が連れてこられたんだってば!!」


流星が言い訳をする横で、ミレーユが小さくため息をついた。


「……このままだと本当に誰か刺されるわね」


「誰が誰をだよォ!?」


 



 


そして──視察の締めとして、王女と流星は“実地調査”と称して、とある店に入ることになった。


 


その名も──《やすらぎの庵》。


静かな雰囲気、優しい灯り、

そして、白い着物を着た落ち着いた接客嬢たち。


「あら……ここ、なんか違うね」


シェリルは目を丸くする。


「ここは“心の癒し”を重視した、いわば“精神風俗”ってやつだな」


「精神風俗!? そんなジャンルまであるの!?」


「あるんだよ……奥が深いのさ」


流星は真顔で語った。


 


案内された個室。


接客嬢が出てきて、静かにお辞儀をする。


「お客様、今日はどのような癒しをお望みでしょう?」


 


──だが。


その時、扉がドン!と開かれた。


「ちょっと待ったあああああああ!!」


リリア・アリシア・ヴァネッサ・ミレーユ、全員が突撃してきたのだ。


「……はぁああああ!?!?」


接客嬢が泡を吹いて倒れる。


 


そして、始まるヒロイン全員からの尋問タイム。


 


「流星! あんた、もう限界よ! どっちなの!? 風俗が本命なの!? それとも私たちのことはどうでもいいの!?」


リリア、涙目。


「愛って何!? 癒しって何!? 風俗の先にあるのが恋愛なの!?」


アリシア、理屈で詰めてくる。


「抱かせてやるから答えろ!!」


ヴァネッサ、筋肉で押してくる。


 


そして──


ミレーユが、ぽつりと口を開いた。


「……流星。あなた、私たちと過ごした時間、“風俗以下”だった?」


 


その問いに、空気が止まる。


流星は立ち上がった。


ギュッと拳を握り、天井を見上げる。


 


──そして。


 


「……俺は、風俗を愛してる」


ヒロインズ全員の顔がこわばる。


 


だが──


 


「だけど……おまえらのことも、すっげぇ大事なんだよ!!」


「え?」


「風俗で癒されたことも、たくさんある。だけど、おまえらと旅して、笑って、泣いて──

俺の煩悩も、心も、身体も……ぜんぶ、おまえらが癒してくれてた」


 


流星は一人ひとりの目を見て言った。


「だからさ──選べねぇ!」


 


「……」


沈黙。


 


──その直後。


 


「はぁああああああ!?!?!?」


「選べないってどういうことよォ!!」


「え、つまりハーレム宣言?」「それって結婚前提で全員抱くってこと!?」「わー!合法的に揉み放題じゃん♡」


 


修羅場、第2ラウンド開始。


流星、またも布団にめり込む。


 



 


翌朝。


「さて、そろそろ次の任務よ」


ギルドからの新たな依頼。


──それは、“南の神殿風俗街”にて起きている怪異の調査だった。


「また……風俗街か……」


「運命ね、流星」


「もう逃げられないな」


「さあ! 筋肉と煩悩を鍛え直すわよ!!」


 


──こうして一行は、また一つ、新たな“癒しの地”へと旅立つのだった。

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