表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
56/229

第49話『夢魔ローズ、真の姿を現す』

淫夢の結界が軋み、咆哮を上げる。

流星の覚醒とともに、夢のローズ・セレナーデに張られていた精神干渉結界が破られつつあった。


だが──その中心、バラの玉座に佇む女は微笑を崩さない。


「ようやく目覚めましたか、常盤流星さま」


ローズ。館のNo.1ホステスであり、男たちを“癒し”の名のもとに夢へ誘ってきた女。

だが今、その姿は異形へと変貌しつつあった。


白磁の肌が淡く輝き、瞳の奥には“快楽”の魔紋が揺れている。

背から現れた漆黒の翼。足元には、幻影のように消えた“かつての男たち”の面影。


「……やっぱり、あんた、夢魔だったんだな」


「ふふ。いえ、“夢魔”などという下品な呼び方は好きではありません。“ナイトメア・サキュバス”……それが、私の本質」


ローズはしなやかに宙を舞い、玉座の上からすべてを見下ろすようにして語った。


「私を訪れた男たちは皆、幸せを感じながら消えていった。

誰にも迷惑をかけていない。むしろ、癒されて、満たされて……」


その言葉に、アリシアが剣の柄を握りしめた。


「記憶を奪って、現実から逃がして、それで“幸せ”だなんて……!」


「……ねえ、あなたたちに聞きたいわ」ローズは宙にふわりと舞いながら言った。


「現実に耐えきれず、心をすり減らして生きている人に、“永遠に優しい夢”を見せてあげる。それの何が悪いの?」


静寂が落ちた。


「私はね……人間の心をよく知っているの。皆、本当は癒されたいの。“誰かに肯定されたい”の。“否定されずに愛されたい”の」


風が吹く。


「なら私が、その役割を果たして、何が悪いの?」


誰もが言葉を詰まらせた。

その論理は、ある意味で正しかった。


だが──


「……悪いに決まってんだろ」


低い声が、空気を裂いた。


流星だった。


「幸せってのは、“都合のいい幻想”で作られちゃダメなんだよ」


ローズが微笑を崩さず振り向く。


「ふふ、風俗を愛し、風俗で癒されてきたあなたが? その口で言うの?」


「だからこそだ」


彼は剣を構えた。


「俺が行ってた風俗はな、“現実”の中で働いてる女の子たちが、笑って、文句言って、たまに営業スマイルで、でも本当に“癒し”をくれてた場所だったんだ」


一歩踏み出す。


「現実だから、心が動くんだよ。現実だから、“今日も頑張った”って思えるんだよ。アンタの作る夢なんて──作り物だ」


ローズの笑顔が、初めて、わずかに崩れた。


「……なら、あなたは、私の力に飲み込まれなかった“唯一の男”」


「そうらしいな。光栄なことだよ」


「ならば、証明して。現実が、夢に勝ると」


刹那──風が爆ぜた。


ローズの身体が変化する。脚は蹄へと変わり、背に大きなコウモリの翼。

鎖骨から胸元にかけての紋章が、螺旋状の魔導刻印へと変化し、彼女の周囲に幾つもの幻影を生み出した。


「《アート・オブ・エクスタシア──千の夢幻快楽》!」


無数の“理想の女”たちが流星たちを包囲する。


巨乳メイド、清楚な幼なじみ、冷たい美人教師、無垢な妹、エルフの女王……

どれもこれも、“男の夢”を具現化した幻影。


「さあ、あなたの煩悩と、“本当の癒し”で戦いましょう?」


流星が剣を構えた。


「癒しってのは、な……!」


その後ろでリリア、アリシア、ミレーユ、ヴァネッサが続く。


「仲間がいて、現実で汗かいて、筋肉痛で寝込んで、夢精して怒られて、

それでも“また明日”って言えることなんだよ!!」


剣を一閃。


幻影の一人が、断ち切られる。


次の瞬間、戦いが始まった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ