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第47話『幻影戦!ヴァネッサ、理想の筋肉男に堕ちかける』

──ここは、甘い地獄。


 《ローズ・セレナーデ》の地下最深部、淫夢の結界内部。

 それは“現実”の意識を喰らうために設計された、恐るべき幻影領域だった。


 


 個室のような仕切りの向こう、流星たちの仲間はそれぞれ“個別の幻”に囚われていた。

 その中でも、最も異様で、最も濃厚だったのが──


 


「はあ……はぁっ……ちょ、ちょっと、なによこれ……っ!!」


 


 ヴァネッサ・ブラッドフォードの部屋。


 そこは、空間全体が**“濃密な筋肉美男”**で埋め尽くされていた。


 


「ヴァネッサ様、今日もお美しい」


「このプロテイン、貴女の筋線維に合わせて調合しました」


「ぜひ一緒にベンチプレスを……!」


 


 ──眼前、肩幅2メートル超級のイケメンが三人。


 背後、滝のような腹筋を持つ巨漢が五人。


 そして左右を固めるのは、“笑顔のマッチョ執事団”。


 


「なんなのよこの天国ぅぅぅッッ!!!」


 


 ヴァネッサ、珍しく顔を真っ赤にして叫んだ。


 


 あまりにも理想ど真ん中。


 筋肉! 背中! 血管! 汗の香り! スキンシップ時の体温!


 


「くっ……やばい……尊い……これ、全員と風呂入りたい……!!!」


 


 マッスルハーレムが近づいてくる。


 マッスルボイスが耳元でささやく。


 


「強い女性ほど、守りたくなる──」


「貴女のような女神に、尽くさせてほしい」


 


 理性が、泡のように溶けていく。


 


 ──が。


 


「……待てぇぇぇえええいッッッ!!!!」


 


 突然、ヴァネッサは正拳突きを空中に叩き込んだ。


 


 衝撃波が幻影を吹き飛ばす。


 


「……ったりめーだろがい!! 男はな、筋肉見せたくらいでモテると思うなバカヤロォォオオオ!!!」


 


 幻影の筋肉たちがざわつく。


 


「おいそこのアブローラー! いきなり腹筋見せてんじゃねーよ! スロースクワットして出直してこい!」


 


 ヴァネッサは己の太腿を一発叩くと、仁王立ちで叫んだ。


 


「私はなあ!!! 男の筋肉にときめくんじゃねぇ!!! 筋肉と向き合う覚悟に燃えるんだよ!!!!!」


 


 幻影の世界が揺らぐ。


 マッチョたちが次々に蒸発していく。


 


 空間全体が揺れた。


 


 幻影の構造が、理想から“本音”へと破られ始めたのだ。


 


「っはー……危なかった……もう少しで、“五股マッチョ逆ハーレムEND”に堕ちるとこだった……」


 


 額の汗を拭いながら、ヴァネッサはほっと息をついた。


 


「でも……やっぱ筋肉は裏切らないわね♡」


 


 そうして幻影空間を突破した彼女が出てきた先には──


 


「お、おそっ……!」


「何してたの……?」


「なんか……その、すごく顔が蕩けてたような……」


 


 リリア、アリシア、ミレーユの3人が、絶妙な顔をして待っていた。


 


「いや違うんだって! ちょっと筋肉が、ほら、こう……こう!!!」(筋肉ポーズ)


「はあ……アンタだけは一周回って信用できる気がしてきた」


「“筋肉の幻影”ってなんなのよほんとに……!」


 


 4人目が突破し、再び陣形が揃った。


 


 そして、結界の中心──夢魔ローズの元へと向かう、最後の道が開かれる。


 


「流星……アンタも、見てるのね。どんな“夢”に堕ちてるのかは知らないけど──」


 


 ヴァネッサは剣を構えた。


 


「女たちは、ちゃんと現実で迎えに来るから……覚悟しなさいよ♡」

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