第35話 『ラッキースケベが起きない日がない!?』
――それは、戦場だった。
タオル一枚で歩いてくる女戦士。
その背後で天を仰ぎ、崩れ落ちる勇者。
そして窓の外から見ていたエルフと魔法使いが、震える声で囁く。
「……また、やってるわね……」
「ええ。今日は“洗濯場編”ですって……」
◆
その日、グラン・アリーナ村は晴天だった。
魔物討伐の準備で装備を整え、休息をとる流星たちは、久々の洗濯日和に恵まれ、共同浴場と洗濯場を利用することになっていた。
だが、彼は知らなかった。
この晴天が、“事故”の舞台であることを。
◆
「──よし、洗濯終わった!」
タオル一枚。
肌は輝く褐色。
髪は濡れて、鎖骨から胸の谷間へ滴り落ちる。
「んふふ〜、風通し、最高っ!」
そして、そんな状態で颯爽と現れたのが、筋肉女戦士ヴァネッサである。
「おぉ〜〜い! ゆ〜う〜しゃ〜く〜ん♡」
「来たぁああああああああッ!!」
悲鳴をあげて飛び退く常盤流星。
だが、時すでに遅し。
「──どんっ!!」
滑った。
ぶつかった。
押し倒された。
ふわっ……
タオルが、はらり。
ゴンッ!
「おふっ」
頭突き。
ピタリと止まる時間。
流星の視界の真上には、迫るヴァネッサの“存在感”。
しかも、彼の両手は、偶然とはいえ……
「ちょ、ちょっと待って!? これは違う! これは事故だってば!」
「ふふっ……大胆ね♡ 初めてなのに、もう触ってくるなんて♡」
「触ってない触ってないッ!! これ、事故だから!!」
「じゃあ、“事故の続きをしましょ?”」
「おい誰か止めてえええええええええええええ!!」
◆
その後、なんとかアリシアの“氷結魔法”で取り押さえられたヴァネッサ。
室内はしばし沈黙に包まれる。
「ほんっと……変な意味で、女の敵よあの人……!」
「女の敵っていうか、流星の敵っていうか……いや、女も男も困ってるから人類の敵かも」
流星はというと、すでに部屋の隅で体育座り。
「……風呂、行けなくなった……もう、いろんな意味で……無理だ……」
そこへ、反省の色ゼロの当人がバスタオル姿で再登場。
「さっきはごめんね〜! いやあ、私ってばつい! 体温高いと興奮しちゃう性質でさ♡」
「じゃあもう氷の中で生活しててくれッ!!」
こうして、平穏な一日は訪れず。
そして、アリシアはそっと言った。
「流星って、もう一種の“スケベ磁石”よね……」




