第30話 『ミレーユ、変身!? 王家の秘術と魔物の核』
迷宮回廊を抜けた先──
そこは、地下の最深領域。
天井は高く、まるで神殿のように光の柱が差し込み、
中央には──黒く、脈動する“塊”が浮かんでいた。
「……あれが、“魔物の核”よ」
アリシアが杖を構えながら呟く。
「けど、どこかおかしい。魔力の気配が“薄すぎる”……これは……」
「見えてるのに……“触れられない”?」
リリアが鋭く反応する。
──それは、確かに“存在している”のに、
そこに“干渉”できない。
まるで、現実に存在していないかのような……
あるいは、“観測”されることを拒んでいるような。
そのときだった。
「……やっぱり、出番ね」
すっ……と前に出たのは、ミレーユだった。
上品に整えた金糸の髪。
幼さの残る顔には、今は凛とした決意の色が浮かんでいた。
「王族の魔術……“観測干渉術式”、起動するわ」
彼女の瞳に、青白い魔力光が灯る。
「魔物は“記憶と欲望の濁流”から生まれた。
だからこそ──その核心に触れるには、
“誰よりも深く、人の魂に干渉する力”が必要なの」
アリシアが驚愕する。
「まさか……王家の“魂干渉魔術”!?
それって、本来は“禁術”に分類されてるはず……!」
「私は、“王都を守るため”に生きてきた。
だったらこれくらい──当然でしょ?」
ミレーユが静かに目を閉じ、呟く。
「《エトワール・コードⅥ──魂写しの刻》
──現れなさい、“真なる敵”」
◆ ◆ ◆
瞬間──空間が弾けた。
バァァァンッ!!
魔物の核が“観測”され、
本来の“姿”と“意味”を得たことで、実体化が始まる。
グジュ……ズズ……ッ!
黒く脈打つ塊が、
触手と肉塊と快楽の記憶のような“濁った欲望”の塊へと変貌する。
「おぞまし……!」
アリシアが顔をしかめる。
「これは……“淫魔の根源核”よ。
人々が抱えた、癒されず放置された欲望が凝縮された“負の化身”……!」
流星が剣を抜き、前へ出る。
「つまり、こいつは──
“癒しを忘れた世界”の象徴ってことかよ」
魔物は咆哮と共に、触手を無数に伸ばす!
だが、ミレーユが淡く微笑み、杖を掲げた。
「──核を“完全に観測”した今、
あなたたちの攻撃はすべて、“本体”に届くようになったわ」
「よっしゃあ!!」
流星の瞳が燃える。
「いっくぞおおお!!
この街に、“合意と癒しの夜”を取り戻すためにッッ!!」




