閑話 『派遣風俗、参上せり』健全編
「……これは、革命かもしれん」
流星は、ギルド裏の目立たぬ路地で、小さな張り紙を見つめていた。
《出張型リラクゼーションサービス》
《王都内限定・安心安全・合意の癒し》
《要予約・紹介制》
「つまりこれは……」
ゴクリと喉を鳴らす。
“風俗街封鎖”という絶望の中で、突如差し出された一縷の光明。
(派遣型風俗……! これが、王都の“裏サービス”ってやつか……!)
流星は拳を震わせた。
「しかもこれ、“紹介制”ってのがいい。健全感がある!!
倫理的な配慮と高級感が共存してるッ!!」
──数時間後。
彼はすでに、宿の自室を清掃し、湯浴みを済ませ、全裸待機ならぬ“超紳士的準備万端”モードで座っていた。
ピンポーン(風鈴の音)♪
「──失礼します、ご指名のリラクゼーション担当、メリッサです♪」
現れたのは、
ほんのり色気のある、肩までのふわりとした栗色の髪。
ゆったりしたローブを身にまとい、笑顔を崩さない“妖艶お姉さん系ヒーラー”。
(うおおおお!! 当たりか!? これ、絶対“当たり”じゃないか!?)
「さっそく施術、始めますね。ベッドにうつ伏せで……力を抜いてください」
「はい喜んで!」
◆ ◆ ◆
──そして30分後。
「い、癒されすぎて死ぬかと思った……」
流星はぐったりとベッドに沈んでいた。
肩・腰・脚……すべてに魔法とアロマオイルの施術を受け、魂が抜けかけていた。
「今日は“健全コース”ということで、お身体に触れるのは最低限にしております」
「いえもう、十分です……! 合意の癒しって、すげぇな……!」
メリッサはにこりと笑った。
「……王都の風俗街が“閉鎖”されたのも、実は裏で“魔物の気配”が感知されたせいなんです。
現場に行った冒険者、何人か“帰ってない”って噂も……」
「……!」
流星の目が真剣になる。
「つまり──“本来の癒しの地”が、汚されてるってわけか……」
「ええ。ですから……どうか、お客様のような“真に癒しを尊ぶ方”が、
あの場所を取り戻してくださると、嬉しいですね」
「任せろよ……!」
流星はムクリと起き上がり、拳を固めた。
「“合意と敬意”の楽園を、俺が救ってみせる!!」
──そうして、心身ともに万全となった男は、
王都風俗街・ユグノール通りへと歩き出す。
その先に、“魔物の巣”が眠っているとも知らず――




