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第19話『護送中にまさかの野営!夜のラッキーハプニング』

「……まさか、宿が全滅ってどういうことよ」


ミレーユの声は、月光に負けないくらい冷たかった。


 


辺境の村に辿り着いた一行だったが、タイミングが悪かった。

村祭り、収穫祭、そして“交易騎士団の宿泊予約一斉入れ”。

結果、旅籠も宿屋も満室。


 


「ま、野営なんて冒険者の基本だろ?」


「あなたたちはそれでいいかもしれないけど、私は貴族なのよ?」


「でも、地面は全員に平等だぞ」


「黙ってなさい変態凡人」


 


こうして、川辺の林にテントを張っての野営となった。


 


◆ ◆ ◆


 


夜。


風は涼しく、焚き火の音だけが静かに響く。

リリアが木の根に腰を下ろし、剣を磨き、アリシアは呪文書に目を通していた。


ミレーユは相変わらず馬車の中に閉じこもり、「虫が入る」と一歩も出てこない。


一見、平穏な夜──


 


……だったはず、なのだが。


 


「……ぬ、ぬる……?」


リリアがふと眉をひそめた。


地面に置いていた寝袋が、妙に湿っている。

じわり、と染み出すようなぬるぬる感。


 


「待って、それ……スライムよ!!」


アリシアの叫びと同時に、地面の草の間からスライムの群れが這い出してきた。


 


「ちょっ、なんでこんなとこに……!」


リリアの足元に一体が絡みつき、

ぬるり、と足から太ももへ、そして──


 


「ひゃっ……つ、冷たいっ……っていうか、なんかいやらしいぃっ!」


 


アリシアもすぐに魔法を放とうとしたが──


「だめ、服に染み込まれてる! 魔法、暴発する!」


「嘘でしょ……ああもう!」


ズリュリ……!


スライムの体液に反応したのか、アリシアのローブがゆっくりと溶けはじめた。


「ちょっ……ちょっと!? ここっ、胸のとこっ……! なにこれ、なんでピンポイントで!」


 


◆ ◆ ◆


 


「ミレーユー! 起きてくれぇぇ!」


「なに? わたしは睡眠時間が短いと翌朝の肌に響くのよ!」


「今そんなこと言ってる場合じゃねぇ!!」


 


流星が叫ぶと、馬車の扉がバンッと開いた。

ミレーユが杖を構えて飛び出す。


 


「フルインパクト・サージ──!」


 


直後、地面が炸裂。

だがスライムは分裂して、さらに拡散!


そして、風圧と魔力反動が──


 


「きゃっ……!」


ミレーユのスカートが舞い上がる。


「見たな!!!!!!!!」


「いや不可抗力ですほんとにマジで」


 


◆ ◆ ◆


 


「くっそ、まとめて担いで逃げる!!」


流星は覚悟を決め、リリアを肩に、アリシアを背中に、ミレーユを片腕で抱えて森の奥へ全力疾走した。


「ちょっと!! わたしを物みたいに扱わないでよ!」


「今は全員荷物だ!!」


 


そしてそのまま……どうにか安全な岩陰に辿り着いた頃には、夜は深くなっていた。


 


「……みんな、無事か?」


「……あんた、意外とやるじゃない……」


「私は……パンツが……」


「私は……触られた記憶しかないわ……」


 


その夜。

流星は三人を腕に抱きながら──


「……まさか、これが人生のピークなんじゃ……」


そう呟いた。


 


そして朝。


 


「…………」


「…………」


「…………」


三人の視線が、無言で流星に突き刺さる。


「な、なんだ? 朝からそんなに見つめて……」


「……あんた、さっきから“昨日の夢の続きをニヤけながら呟いてる”のよ」


「そ、そうだった……?」


 

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