第17話『王都へ行け?報酬に釣られて引き受けた任務』
「……おい、これ、マジか?」
流星はギルドの受付カウンターの前で目を丸くしていた。
その手には、真新しい依頼書。
タイトルは──『重要人物護送任務』。
「詳細:貴重な積荷を王都まで搬送すること。道中の警備、護衛を兼任。
積荷の扱いには最大限の注意を払うこと。護衛人員には、高度な戦闘能力と人格が求められます」
「……ふむふむ」
「報酬:金貨100枚」
「──受けます!!」
受付嬢がピクッと眉を動かした。
「……確認もせずに即決、ですか?」
「そりゃそうでしょ! 王都よ!? 風俗街あるでしょ!? それも“王都クラス”の……!」
「風俗のためですか……」
受付嬢の顔が一瞬で冷めたが、流星は気にしない。
むしろ胸を張った。
「俺はね、こう見えて“戦場の癒し”を大切にする主義なんだ。
娯楽と平和はセットだろ? つまり風俗は文化!!」
「……いいでしょう。本人の志がどうであれ、能力は申し分ないですし」
◆ ◆ ◆
翌朝。ギルド裏の馬車置き場に呼び出された流星と仲間たち。
そこには見張りの騎士、しっかり梱包された木箱──ではなく、絢爛な馬車。
そしてその馬車の前に立っていたのは──
「……あなたが、今回の護衛?」
美しすぎる少女だった。
金糸のような長い髪を流し、完璧な作法で背筋を伸ばすその姿は、まさに“高貴”。
だが彼女の目つきは──露骨に不機嫌だった。
「……ギルドも落ちたものね。
こんな品のない、いかがわしそうな男を護衛につけるなんて」
「……は?」
流星が思わず口を開く。
隣のアリシアが小声で耳打ちする。
「彼女……見たことあるわ。“ミレーユ=エトワール”。
王都の魔法学院を首席で卒業した天才魔術士……しかも王族筋の貴族」
リリアも呆れ気味に補足する。
「まさか、今回の“積荷”って……」
「そうよ。まさかとは思うけれど、あなたたち──
“積荷”が人間だって、聞いてなかったの?」
ミレーユの唇が、きつく結ばれる。
「……護衛のくせに、“報酬が高いから即決”なんて浅ましい動機で引き受けたなら──
今すぐ降りてちょうだいな。わたし、愚か者と旅する趣味はないの」
沈黙。
その空気の中──流星が一歩前に出た。
「……ミレーユ様」
「……っ、様は要らないわ。なによ」
「積荷が美女だった時点で、もはや“運ぶ価値しかない”って結論に達しただけだ。
王都まで、命を懸けてお届けします」
「……ッ、馬鹿なの?」
バチッ!
ミレーユの額に青筋が浮かび、魔力がピリッと空気に走った。
アリシアが慌てて止める。
「まあまあ……! とにかく、戦力としては申し分ないから!」
「……まったく、軽薄にも程があるわね……」
ミレーユはため息をついて馬車に乗り込んだ。
その背中を見ながら、流星はにやりと笑う。
「いやー、護送任務っていいなぁ。王都の風俗の前に、まず姫様と旅だなんて──
もう、癒しの先取りってやつじゃん?」
「……あんた、マジで殴られても文句言えないわよ」
リリアが呆れて笑いながら剣を背負い直す。
こうして、“貴族令嬢の極秘護送任務”は始まった。
それが、“王都と国家の陰謀”に繋がる旅になるとも知らず──




