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第12話『夜襲、そして火の粉とスカート』

──深夜。

ローデル村の静寂を、突如として引き裂く咆哮が響いた。


「ギャワァアアアッ!!」


「来たかっ──!」


流星はすぐに飛び起きると、枕元に立てかけていた愛用の剣を抜き、半裸のまま外へ飛び出す。


「風俗はッ! 明日も通いたいから生き延びるぞォオオ!!」


「服着てから言え!!」

背後でリリアが寝巻き姿で叫びながら装備を整えていた。


 


◆


 


外ではすでに、コボルトの本隊が柵を突破して侵入を開始していた。

畑は蹂躙され、家畜は鳴き声を上げて逃げ回る。

村人たちは避難済みだったが、戦える者たちは中央広場に集まり応戦態勢を取っていた。


「リリア! 東側の柵が破られてる! あそこは任せた!」


「任せて!」


 


流星は木柵の上からコボルトの集団を見下ろし、地形を即座に把握。

村の屋根を跳び移りながら斜めに切り込む進路を取り、剣を構えた。


「鹿島神道流・三連斬──!」


ザン! ザン! ザシュッ!


飛び降りると同時に三体のコボルトを斬り捨て、土埃と血しぶきが舞い上がる。

だが──


「っ……くそ!」


後方から飛んできた投石が、リリアの肩を直撃。


「リリアッ!!」


「だ、大丈夫……かすり傷……だけど、ちょっと腕が鈍るかも……」


「くそっ、ここで一人倒れられるかよ……アリシア!」


「──分かってるわ!」


 


アリシアが、村の中央から走り出てくる。

彼女は咄嗟にリリアを庇い、流星の隣へと出ると、杖を両手で構えた。


「今から大規模風魔法を放つ! 吹き飛ばされないように!」


「お、おう!」


「──“トルネード・ラース”!!」


 


魔法陣が足元に展開し、アリシアの杖が白銀の風を纏いながら渦巻き始める。

唸りを上げる風が集まり、空間がねじれたかのような錯覚すら起こす。


「ふはあああ……っ!!」


「すげえ、これが天才魔導士の力……!」


 


だが──その瞬間。


「……あっ」


風圧の反動が、アリシア自身にも直撃。


ローブがはためき、マントが吹き飛び、

そして──


バサァアアアアッ!!


風魔法の衝撃で、スカートが真上に跳ね上がった。


「──っッッッ!!!??」


見えた。

夜の月明かりの下、純白というにはあまりに繊細なレース地の──


「ま、まぶしっ……」


「ぎゃああああああああッ!!!!!」


アリシアの顔が真っ赤に染まり、次の瞬間──


「“ファイア・ショック”!!」


「わああああ!? おれ悪くねえええええ!!」


爆音。火花。爆ぜる屋根瓦。

そして流星の身体は小さな煙を上げながら民家の裏庭に吹き飛ばされた。


 


◆


 


数分後。


村の外へ逃げたコボルトたちはほぼ殲滅され、防衛戦は辛勝に終わった。

流星は焦げた服を着たまま、アリシアの前に正座していた。


「……なんで、あんな風にスカートめくれるほどの魔法撃ったの?」


「知らないッ! 予定より風が強くなっただけよッ!!」


「あとパンツ、意外とかわ──」


「死にたいの!? いや、死なせるわよッ!!」


 


リリアは腕を包帯で巻きながら、遠巻きに二人を見て微笑む。


(まったく、油断するとすぐコントが始まるんだから……でも)


──流星の剣、アリシアの魔法。

確かに、二人の連携は想像以上に強い。


(いいチームになるかもしれないわね、ほんとに)


 


夜の村には静寂が戻りつつあった。

そして翌朝──また一波乱が巻き起こることを、誰もまだ知らなかった。

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