第11話『風俗の何が悪い!?流星、吠える』
「──というわけで、明日の夜明けにはコボルト本隊が攻めてくる可能性が高い」
リリアが地面に描いた簡易地図を前に、冷静な口調で語る。
コボルトの進行ルート、村の防衛線、物資の配置。
村の大人たちは緊張した顔で耳を傾けていた。
その輪の中で、ただ一人、ピリついている空気をぶち壊していたのが──
「……でもさぁ、風俗の話をしてる時のほうが、俺、命かけられるんだよね」
「今その話する必要ある!?」
「精神的モチベって大事じゃん? なんで皆、俺の“風俗哲学”にもっと敬意を払わないんだ?」
「お黙りなさい、変態剣士」
──その言葉が、導火線だった。
「変態って言うなよ! 俺は真剣に癒しを求めてるだけだって言ってんだろ!?」
「癒し? ふざけないで。貴方がやっているのは、“自分の欲望を肯定する言い訳”でしかないわ」
「言い訳って……!」
流星が椅子をガタンと鳴らして立ち上がる。
テーブルの向かい、アリシアも眉を吊り上げ、真っ向から彼を睨み返す。
「私の兄もそうだったわ。家を出て、自由と癒しを求めた結果、女に狂って家名を潰したの。家の信用は地に落ち、私の母は倒れ、今も私は償うように働いている。……癒し? いいえ、それは堕落の温床」
「……っ」
その言葉に、流星は一瞬だけ押し黙る。
が──
次の瞬間には、拳をぎゅっと握りしめ、強い声を返した。
「──なら、俺が証明してやるよ」
「証明?」
「風俗に通うってのは、堕落でも逃避でもない。
人生で一番疲れた時に、自分を保つための“芯”になるんだ。
心が擦り切れたままじゃ、誰も守れない。剣も振れない。笑えない──だから俺は、“癒されること”に誇りを持ってるんだよ!」
「……」
「それに、風俗ってのは“合意”の世界だ。
俺が好きなのは、嫌がる子を無理やりとか、そういうのじゃない。
女の子がプロとして笑って、俺を迎えてくれる。俺も敬意を持って接する。
そういう“安心と尊厳の共有空間”なんだよ!」
「……なんか言葉だけ聞くと、ちょっと感動的に聞こえてくるのが悔しいわね」
「でしょ?」
「……でもやっぱり最低」
「ひどっ!?」
リリアがククッと笑いをこらえながら口を挟む。
「まぁまぁ、二人とも。流星の剣の腕が本物なのは、さっきの戦闘で分かったでしょう?
私も一緒に戦ってきたけど、彼の剣は“誰かを守るため”に振るわれてる。……たとえそれが、風俗のためでも」
「リリア、それ褒めてんの?」
「正直微妙。でも……アリシア、貴女だって分かってるでしょ? 彼の戦力が必要だって」
「……」
アリシアはしばし黙り、深いため息をついたあと、ようやく言った。
「わかったわ。“条件付き”でなら、認める」
「条件?」
「戦闘中、風俗ネタ禁止。
あと、女の身体にうっかり触れたら──“全身麻痺魔法”で即時無力化するから」
「それもうバトルより怖ぇよ!!」
「それでよければ……私は協力してあげる。私も、村を見捨てる気はないから」
その表情には、まだ警戒が残っていた。
だが、その奥にあるものは──不器用な信頼の予感でもあった。
「じゃあ、よろしくな。アリシア」
「……しょうがないわね、変態剣士」
「“癒しの戦士”って呼んで?」
「もう一度言ったら魔法撃つわよ」
「はいっ!!」
──こうして、“歪ながらも最強の三人組”が、ついに誕生した。




