表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界でヤクザやってるので、聖女を押し付けられても困るんですが  作者: 双星天魚
第二幕 勇ましき兵達の凱歌

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

43/51

プロローグ 勇ましき兵(つわもの)はどこへむかう

 とある日、ドラバルト王は執務室に居ながらとある悩みを抱えていた。


「はぁ……」

「王よ、何をそこまでため息をつくことがございますか」


 宰相はもはや何度かわからない王のため息に苛々していた。別に王が悩むことそれ事態に文句はない。いくら賢王と名高いドラバルト王とはいえ一人の人間、時に悩むこともあれば宰相の自分なんかよりも深い思考をしなくてはならないこともある。そういう意味では王が悩むことそれ事態に悪いことなどあるはずがない。

 とはいえ、王がこうして悩むというとき、宰相は過去の経験談からとんでもない面倒なことを、それでいて早急に考えなければならないことであるというパターンが多いことを身をもって知っていた。


「いや、な、ようやく魔族との戦争が一区切りというか、終わっただろう?」

「えぇ、結果としてはそうですね。ですから勇者パーティは解散され、今現在聖女さまが我が国でアラエル商会の方々に保護されているわけですが」

「そこはいい、そこは至って問題はないんだが……問題なのは勇者軍のほうだ」


 王のその言葉の意味が最初、宰相には分からなかった。


「勇者軍……ですか?彼らは国の軍部から選抜されて構成された連合軍ですから、それが一応終わったのですから、それぞれもとの国に戻るのでは?」

「そうだな。俺も最初はそう思ってたんだが、ふと気になることがあってな」

「気になること?」


 はて、そんなことがあるのか、という顔をしたが次の一言でその表情が凍りついた。


「村や街……ひいては国そのものが滅ぼされてなし崩し的に勇者軍に合流した連中はどこに戻るんだ?」


 そう、その事を王が言うまで宰相は失念していた。

 さっきも言ったが、勇者軍というのは各国が魔族との戦争に際して一丸となって戦うための連合軍だ。勇者パーティのような一芸や特殊な能力に秀でてるために在野から引き抜いたり一員になったりする例もあるが、基本的には各国の軍部の人間が多数だ。

 が、魔族との戦争の途中で故郷が滅ぼされたり、はたまた国そのものが滅ぼされてしまった構成員も同時に多く存在している。中には国そのものが滅ぼされた結果、保護と敵討ちの場を求めて勇者軍に合流した面々も少なくない。


「故郷に戻って復興するのならまだ問題ない……いや、滅ぼされて無政府状態の国を改めて開発するのはそれはそれとして別の問題だろうが、問題なのは中にはそれができない者も居るであろう?」

「そうですね、戦争の結果不毛の大地となって住むことができなくなってしまったり、そもそも入ることすら危険となりすぎて不可能になってしまった場所もありますからね」


 確認されているだけでも中位龍種のワイバーンやドラゴンの住み処になってしまった場所や、火山性ガスや毒ガスのようなものが充満して死の大地になってしまった場所、異常な豪雷雨が降り続ける場所や逆に常に日照りになって雨が全く降らない場所など、戦争の爪痕によってできた無惨な場所がいくつも存在している。


「それが村単位や街単位……下手すれば小国そのものがいくつも存在するだろ、さてそういった連中はどうするものかとふと気になったものよ」

「たしかに、その通りですね」


 さてどうなるか、そう思って思案し出てきたのは二つの可能性だった。


「一つはどこかの国に仕官したり、引き抜かれたりすることでしょう。それならば問題は……まぁ無いとは言いませんがこれも別問題なので関係ないでしょう」


 まぁ兵士を養う為の金や食料が必要になるが、それは色々とやれることはあるので比較的問題にはしていない。問題なのは


「問題はどこの国にも所属しなかったり、野盗団や海賊のようになってしまう事ですね」


 従軍経験がある存在の人間が盗賊に身を窶すことになれば、それだけ非常に危険な存在になる。

 特に勇者軍の人間は最低でも魔法も簡単な低級程度なら使える人間ばかりだ。簡単なものとはいえその威力は下手すれば村一つを焼くことだってやりようによってはできてしまう。


「結果的に裏に属するにしても、多少の首輪をかける必要はある、か」

「では?」

「我が国の冒険者組合、並びに王家認可の表と裏組織のトップ、その全員に召集をかける。今後の方針を決めるためにも一同に介する必要がある」


 これは王命だ、そういうドラバルト王に宰相はすぐに動き出す。


「……問題は、マーガレットを狙う何者かがどう動くか、か……」


 先日のテロ未遂の際、騒ぎに乗じてマーガレットの暗殺未遂が起こり、行動が起こる前に鎮圧したとは聞いたが、結局今の今に至ってなお、それを命じた存在の情報は掴めていない。


「……そもそもなぜ敵はマーガレットを狙う?」


 皇太子が狙われるのなら理解はできる。国の次のトップが潰えれば、それだけで国内の混乱は必死だから。

 だが、こういってはなんだがマーガレットは第三皇女、現在の王位継承権は事実上の第二位とはいえ、わざわざ暗殺したところで今現在のメリットが全く無いと言って過言じゃない。

 そもそも本人は王からすれば業腹ではあるがアルゼイと婚約しようと躍起になっている。ドラバルトもアルゼイの手腕事態はそれなりに認めてはいるし、その頭脳や閃きに政で助けられたこともあることは認めざるを得ない。

 とはいえ、大事な娘を裏組織の何時誰に狙われると分かったものじゃない存在に預けるということ、そしてそもそもマーガレット付きの筆頭守護騎士である少女の恋慕を横紙破りさせるのは、一人の親としてどうなのかと考えるのは不自然ではない。


「はぁ、聖女さまの帰還の方法といい、片付ける問題が多すぎる……」


 今現在、国の魔法研究部門で解読作業を行っている魔王城の書物のそれは全くと言っていいほど進んでおらず、本当にその方法があるのかという疑問すら沸いてくるレベルだ。


「はぁ、せめて古代魔族言語の解読ができる人間が居れば、その限りではないんだろうな……」


 そんな存在が居るわけもない、そう思いながらも愚痴ったその言葉は誰に聞かれるまでもなく静かに消えて、仕方なく溜まりに溜まった書類仕事を王は一人再び始めるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ