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「そうフロミス様…。そんな風におっしゃっていたのですか……。」

フローラの話を聞いたアリーはそう漏らした。

重苦しい空気がガゼボの中を包む。


それを打ち破るようにフローラは明るい声で話をする。

「アリーの方は、アベリア様どんな様子だった?」

「ああ。私の方は……。」

そう言ってアリーは語り出した。


「おねえさま。」

コンコンとノックをして姉の部屋に入ると、姉のアベリアは机に向っていた。

「あらアリー。」

妹の声に気づき、後ろを振り向く。

「お邪魔でしたか?」

「いいえ、勉強していただけだから。」

そう言い、アリーに隣へくるように言う。


アリーはちらりと机の上を見る。しかしそこに広がっているノートには書き込んだ形跡などなく、ただの白紙が広がっていた。

「あまりはかどらなかったのですか?」

アリーは片付ける姉を見ながら尋ねる。

「ええ、ちょっと考え事をしていたらね…。」

さっと見られたくないかのように冊子を隠しアベリアは妹に弁明する。


「で、どうしたの?」

話を変えようと明るい声でアベリアはアリーに聞く。

「いえ、最近私たち(アリー、アベリア、フローラ、フロミス)4人で会うことがないのでお姉さまたち忙しいのかなと思いまして。」

その問いにアベリアはピクリと反応する。

「そ、うね、ちょっと高等部になってからお互い忙しいから。」

「2人でお会いしていたりは…。」」

「していないわ。」

食い気味に答える姉にアリーは少々驚く。

「お姉さま。」

「それだけ?」

アベリアはこれ以上話したくないようなそぶりを見せる。

しかしアリーもこれだけでは引けない。

「いえ、あとジーク様のことです。」

「ジーク様?」

「はい、最近ジーク様とフロミス様の仲が良くないらしいという噂を耳にしまして。お姉さま何か知りませんか?」

アベリアはそれを聞いてから、目をきょろきょろさせ黙る。アリーは自身の姉を試すようなことをしているのを反省しながら、アベリアが何というか待つ。


「ジーク様にも考えがあるのよ。」

(お姉さまがジークの肩を持った!)

アリーはショックだった。

「お姉さまジーク様とも仲が良いのですね。」

「仲が良いとは誤解されたくないわ。仮にも婚約者がいるのに。でも、そうね悪い人ではないと思うわよ。」

アリーは感情が追い付かない。しっかりと線引きはしているが、フロミス様よりもジークの肩を持つ姉にアリーは悲しみを覚えた。


「そうして一度もフロミス様のお名前を出さなかったわ。姉がごめんなさい。」

アリーはフローラに謝罪しながら話し終える。

「良いのよ。ちょっと悲しいけど、うん。」

フローラも事情を鑑み、アリーの謝罪を受け入れる。


その時、かさっとフローラのスカートから音がする。フローラはそこに入っているものを取り出す。それはフロミスお姉さまから預かった祭りの紙だった。

「ああ。お祭りの。」

アリーもその紙を見て納得する。そして紙に書かれている言葉を2人とも見る。

「切実だわ。」

「ええ。」

2人とも事情を知っているだけ余計に感じた。


「そうだ。この後、お茶菓子を食べ終わったら街に出かけましょうよ。」

「そうね。それがいいわ。」

アリーの提案にフローラは賛成する。そして2人とも同時にお茶菓子に手を伸ばしたのだった。


「お待たせー。」

その後2人は、一度お互いの家に戻り町に出る許可を得た。そして町民の格好へと着替え、門の前で待ち合わせをし、落ち合ったところだった。

「ううん、私も今来たところ。」

そんなことを言って2人は町へと繰り出す。


町は今キラキラと輝いている。月へ願いを送るというコンセプトのため、月や星をモチーフにした装飾具がいたるところに見受けられた。

「「かわいい~。」」

店ごとに特色のある装飾を見るとそう言わずにはいられなかった。


舗装された道路を歩き、店に寄るのを我慢しながら2人はまず目的の場所へと向かった。

「やっぱり大きいね。」

圧巻の大きさの木を見てアリーは、思わずそう声を漏らす。木はもう何百人、何千人と書いたであろう紙でいっぱいになり、木の緑はまだらになっている。その様子をぽーっと見つめた後、フローラは紙を取り出す。


「じゃあ書こうか。」

そう言って用意されているテーブルの上で2人はうんうん言い、悩みながら願い事を書く。

「なんて書いた?」

フローラはアリーに聞く。

「いっせいのせで見せよ。」

そう言いアリーは紙を胸の前で大切そうに持つ。そしていっせいのでという掛け声で2人はお互いに紙の書いた面を見せる。

そこにはこう書かれていた。


「絶対に仲直りできますように。」

「平穏に戻りますように。」


2人はお互いの文を読むとふふっと笑った。


「よいお願い事だね。」

「本当、これ以外の願いはないね。」

そんなことを言い、木に近づく。


手近でなくあえて用意されている椅子の上に登る。

「高いところ。高いところ。」

そんなことを言い合い、届くぎりぎりまで手を伸ばし、紙を括り付ける。フローラは特に姉の願い事を一番高いところに置いた。


そして今一度、お互いの手をつないで一緒になって木を見上げる。

「きっと叶うよね。」

強くアリーの手を強く握りフローラは言う。

「叶うよ絶対。」

アリーもフローラの手を握りしめる。


風が強く吹き、木を揺さぶる。それはまるで木が返事したかのように2人には思えた。


「じゃあ、せっかくだし何か食べにいこうか?」

フローラがアリーに提案する。

「うん。行こうか。」

2人は来た道を戻る。いろいろとある。お土産屋に飲食店。きょろきょろと興味深げに見ていくとふと2人とも足を止めた店があった。


そこは「トロピカルムーン」という店名の店だった。

店先には看板がありそこにはこう書かれている。


~トロピカルムーン限定メニュー~

あのアクスム地方のメロンをふんだんに使ったトロピカルメロンジュース

この季節だけ限定販売。なくなり次第販売終了。お求めはお早めに。


その文章に惹かれ私たちは足を止めた。アクスム地方は月が最も綺麗に見える丘で有名だ。そこの地方では、その丘でメロンを栽培している。そのためメロンはよく月の光に当たっている。つまり月の願い事を反映してくれる。ということでこの時期アクスム地方のメロンはとても人気となるのだった。しかもそのメロンの美味しいこと。みなこぞってアクスム産メロンを求めるため、毎年この季節は品薄なのだ。そのメロンをふんだんに使ったジュース。飲みたくなるのも必然だった。

「頼んじゃおっか。」

笑みを薄く浮かべフローラは言う。

「ジュースなら今の時間飲んでもいいでしょうし。」

アリーも暗に賛成する。


「すみません。このトロピカルメロンジュースを2つ。」

頼んだ。

「はい。どうぞ。」

透明のカップにいっぱい入ったトロピカルジュースはおいしそうなメロン色をしている。そして中には星形の氷が入ってキラキラとしている。堪らず2人はストローに口をつける。

その美味しいこと。いつまでも飲んでいたくなる。なくなるのが本当に惜しいのだ。少しずつ、でも味わいながらジュースを飲んでいく。美味しくてあっという間に飲んでしまったフローラ。ちびちびと少しずつ飲んでいくアリー。2人ともそれぞれ楽しんで飲む。そして2人とも飲み終わるとカップには星形の氷のみが残る。


その星を2人は空へと掲げる。薄っすらと浮かんでいる月に2人は星形の氷が届くように手を伸ばし、溶けるまで見守っていた。

願い事が叶うと信じて笑顔で。


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