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告白

「さて。いいたいことはわかりますよね。」

クランはそんな言葉で詰め寄られていた。

「いえ…わかりません。」

壁に追い詰められ逃げ場のないクランはたじたじになりながら言う。

その言葉に大げさにため息をつくのはアリーだ。

「まったく。」

そんなアリーにクランは恐る恐る言う。

「そんな大げさに。」

その言葉はアリーに火をつける。

「これが大げさにせずにいられますか。あの子本当にあなたの気持ちに気づいている様子がないのよ。これっぽちもよ。」

怒りながらとげのある言葉を吐くアリーにクランは2重で驚く。

「え、俺の気持ちって。え。気づいて。」

しどろもどろになるクランをじろりと見つめアリーは答える。

「そりゃわかるわよ。3人でいることよくあったじゃない。」

アリーにそう言われ、クランは言い返せない。自分はそんなにわかりやすかったのかと内心落ち込む。そんなクランにアリーは詰める。

「あなたが頑張るしかないのよ。もう。」

アリーはクランに迫る。クランは怒涛の攻めに追い付いていない。

「えっと。そもそも俺でいいのか?」

まずそんな質問をアリーにしてしまう。

「ええ。あなたは信用できるわ。」

アリーは表情を変えずに言い切る。

「お、おう。」

喜んでいいのかクランはわからない。

「そうは言っても。フロミス様のこともあったし…。」

「確かにフロミス様の件とあなたの家は離して考えることは無理でしょう。ただしそれはあなたの活躍を知らない人からしたらの話よ。」

アリーはクランが活躍したことは、フローラはちゃんと知っていること。そしてクランのことを褒めていたことを話す。

「それは当然のことをしたまでだ。」

クランは弟としての責任を取っただけのことだという。

「馬鹿野郎よ!あなたは。」

アリーは怒る。何をかっこつけて言うのか。好きなくせに。あんなにもフローラのために頑張っていたのに。

「かっこつけてって…。」

「気づいて欲しい気持ちもある癖に。かっこつけて逃れようとしないで。好きなの?好きじゃないの?はっきり言いなさい。私はフローラの親友として知る権利があるわ。」

「好きに決まっているだろ。」

はっきりとアリーを見据えて言う。

「そういうところきっとフローラも好きよ。」

アリーはにやっと笑い「まあ、今回はそれを聞けただけでも良しとするわ。」とクランを解放する。

「パートナーとは言わないであげるから、せめてダンスパーティー当日にダンスを踊るくらいはしなさいよ。」

クランに行っていいわよと言いながら、釘をさす。クランはああ、頑張るよ。と苦笑いをしてアリーと別れるのだった。


そしてクランは放課後の静かな廊下を一人歩く。

「フローラの親友なだけあってパワフルだったな。」

思い出し笑いをしながら小さく呟く。


「告白か…。」

クランは考える。クランの気持ちにこれっぽちも気づいていない彼女に告白するのは難しい。どう転んでも今までの関係ではいられなくなるからだ。きっと今までのような気軽な関係は維持できない。しかも彼女の家との確執が我が家にはある。それもクリアできるのか。

「はは。俺は気が早いな。もう家のことも考えている。告白もしていないのに。」

そう、告白とはすなわちプロポーズと同義だ。彼女も考えなくてはいけなくなる。あの天真爛漫さがこの告白で消えてしまったら。

「それも嫌だな。」

クランは外を見る。夕焼けが窓を通し入ってきて、クランの顔を染める。クランもできればフローラに告白したい。でも。でも。と考えできないでいる。

「本当に馬鹿野郎かもしれないな。」

「何が?」

後ろから急に声を掛けられる。

「おわっ。と。フローラ!?」

クランは驚き慌てる。

「何が馬鹿野郎なの?」

フローラはそんなクランに質問する。

「いや別に。独り言だ。」

クランは気を取り直しはぐらかす。

「ふーん。ま、いいや、アリーどこにいるか知っている?どっか行って帰ってこないのよ。」

きょろきょろとあたりを見回しながらクランに聞く。

「いや。知らないな。」

アリーと会ってから時間がたっていた。もうあの場所にいないだろうと思いクランはそう答える。フローラは「そっかー。どこいったのかな。」といい、窓の下の手すりに腰を預ける。

「ねえ、クランはダンスパーティーのパートナー?いるの?」

そういえばというように特大の話を振るフローラに内心ドキドキしながらクランは答える。

「いや。そういうフローラはいるのか?」

上手く返事で来たか、自身の言葉を振り返りながら返答を待つ。

「ううん。私もいない。」

そうかと返しつつ内心安心する。が。

「でも。何人かには当日踊ろうって誘われているわよ。」

爆弾発言が来た。

「へー。そうなのか。」

気にしていないように答えながらも内心焦っていた。

「なんか反応弱くない?」

さっきからそうばかり言うクランにじとっとフローラがにらむ。

「いや。あ、ダンスの方はどうだ?」

クランはその目から逃れるため、話題を提供する。

「それは完璧よ!」

機嫌を直したフローラはピースサインをクランの前に出す。

「うまいのか?」

クランは腕を組みながらふっと笑い尋ねる。

「ええ。あ、そうだ。」

フローラは手すりから体を話しクランに近づく。

「え。」

クランは組んでいた腕を思わず離す。フローラはそのクランの手を取ると近くの教室に入る。

「今踊りましょうよ。」

笑顔で提案するフローラ。そのフローラの強引さに引っ張られクランも教室に足を踏み入れる。夕日に照らされた教室でくるくると回りながら「早く!」というフローラが眩しい。

「本当に踊るのか?」

クランは確認する。

「ええ。早く早く。」

フローラは腰に手を当ててよと、促す。

「あ、ああ。」

そんなフローラにせかされクランはフローラの体に手を回す。

(細い。)

それがクランの精一杯の感想だった。2人の足音だけがかすかに響く教室で2人はステップを踏み踊る。

「ね。うまいでしょ?」

フローラはクランに笑いかけながら言う。

「ああ。うまいな。」

クランもフローラに微笑み返す。ダンスは終盤を迎え、2人の綺麗なターンが決まりダンスは終わる。


「ああ。楽しかった!クランも上手いわね。」

くるくると回りダンスを楽しんだフローラはクランに元気よく言う。

「これならクランもダンスパーティー大丈夫そうね。」

「なんだそれ。先生みたいだな。」

「あら。そう?」

フローラはとぼけ、2人の笑い声が響く。ひとしきり笑った声が夕日に吸い取られ消える。


「もう帰らなくちゃね。」

フローラは暗くなった窓を見て呟く。夕日が今にも消えそうになっている。教室はもうすぐ暗闇に包まれそうだ。

「クラン。私あなたにお礼言ってなかったわね。フロミスお姉さまの件ではあなたに本当にお世話になったわ。ありがとう。」

フローラは頭を下げ、礼をする。

「いや。当然のことをしたまでだ。」

アリーに言ったことと同じことを言う。

「そんなことないわよ。あなたかっこよかったわよ。」

フローラはクランのまじめな物言いに口角をあげながらそんなことを言う。クランにはその笑顔は今まで見た中で一等綺麗に見えた。

「じゃあ、お礼も言えたしそろそろ行くわね。」

固まっているクランに手を振りフローラは教室を後にしようとする。クランは思わずその手を取る。

「クラン?」

フローラは不思議そうな顔でクランを見る。

「フローラ、俺は…。」

その声はフローラにしか聞こえなかった。


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