パートナー
「えー。みなさん。掲載物を見て知っている方もいるかもしれませんが、正式に報告します。」
先生はそう言って、生徒たちが注目するよう促す。皆の視線が集まったことを確認すると先生は話しだした。
「えー。ダンスパーティーについてのお知らせです。」
そこで生徒がざわめく。
「ダンスパーティー?」
「はい。静かに。」
先生はパンパンと手を叩き皆の注意を再度自分に向ける。
「知っている人もいるようにこの学園恒例の高等部ダンスパーティーに関しての伝達です。」
先生はようやくダンスパーティーの詳細な情報を生徒に話し出した。
学園のダンスパーティーとはどのようなものか。
パーティーと言ってもダンスの技術などを競い合うものではない。1年生から3年生まで学年全員が参加するためそう呼ばれている。
このダンスパーティーのポイントはダンスのパートナーを自力で見つけるというところである。ある人にとっては地獄、ある人にとっては天国のようなこの方式。1部には毎年人気があるため、なかなかなくならないのだ。
婚約者がいるものは当然婚約者と組むことが多い。
だがこの国ではまだ学生の内で婚約者がいるものは少ないのだ。
そのため婚約者がいないものは以下のようになる。
ペアが当日までに見つからない場合は、当日に余ったもの同士で組む、壁の花となる、何曲か踊った後パートナーを変えたい、休みたいと望んでいるものと交代するなどして楽しむのだ。
まあ、この方式のため、なかなか自分からいけないものも多くかなりの人数が当日までにパートナーを見つけていないため、そこまで悪目立ちすることもない。
1部の相手を見つけられること(相手に申し込まれる、または申し込みが成功する)が名誉と思っている人はやっきになって相手を探そうとしたりする。
そしてパートナーを組みたい人がいるものはこのダンスパーティーにかけている。
このようにいろいろな生徒の思いが入り混じるパーティー。全体行事というのは誰かにとっては楽しいものになり、誰かにとっては苦痛そのものとなるのは避けられない運命なのかもしれない。
「パーティーまで時間はあるとはいえ、あと少しです。パートナーを組みたいなら早めに相手に承諾を取っておくようにしてください。」
毎年、壁にぞろぞろと集まる生徒を見ている先生。消極的な言い方で連絡する。
「後ほどわからないことがあれば掲示物を見て確認するか、先生に聞きに来るように。以上で連絡事項を終わります。」
先生のその言葉とともに終了のチャイムが鳴り放課後となった。生徒たちはがやがやと騒ぎ出し、教室を後にする。そしてアリーとフローラも同様に教室を出る。
「ダンスパーティー楽しみだな~。」
フローラはただダンスパーティーで用意される豪華な食事が楽しみなだけだ。
「もうフローラったら。」
アリーはしょうがないというようにフローラを見る。
「だってダンスにはそこまで興味ないし。」
フローラはペロリと舌を出しアリーに言う。2人とも貴族の令嬢なだけあり、幼いころからダンスなどの基本的なことは仕込まれている。そのため、踊りに関しては何の問題もない。ただの好みの問題だ。
「でももしかしたらダンス申し込まれるかもよ?」
アリーがにやりと笑う。
「え。パートナーのこと?」
フローラはきょとんとした顔をする。
「そうよ。なくはないでしょ。」
アリーは「ね。」と首を動かす。
「うーん。」
フローラは少し悩む。アリーはルンルンと足を動かしながら、隣のフローラの次の言葉を待つ。するとフローラは元気に言う。
「ないわね。」
アリーはガクッと足を止める。
「誰か一緒に踊りたいな~とかって思う人は?」
「別に。しいて言えばアリー。」
「え。」
ちょっと嬉しがるアリー。だがそこではないと思い、また聞く。
「でも仲の良い男子とかが誘ってくるかもよ。」
「まあ、別にパートナーになる必要なくない?」
この子はパートナーになることの重要性をわかっていない。アリーは頭を抱える。
「まあ、私そういうフローラも好きよ。」
トホホと思いつつ、アリーは何が何だかわからないという顔をしているフローラの頭を撫でるのだった。
「ダンスパーティー?」
「ええ。昨日先生から聞きませんでしたか?」
フロミス、フローラ、アベリア、アリーの4人でのお茶会にもダンスパーティーの話は出てくる。
「そうねえ。」
フロミスはのんびりとした声で考える。
「去年はどうでしたか?食事とか!」
フローラが明らかに食事目当てで聞く。
「去年…。」
アベリアが急に落ち込む。
「え。アベリア様?私聞いてはいけないことを?」
フローラは慌てる。
「いいえ。違うわ。ただ。ただね。…パートナーではないにせよ、1度だけ頼まれてジークと踊ってしまったのよ。」
アベリアは一生の不覚というように言い、激しく落ち込む。
「ああ。」
皆、納得し、よしよしとアベリアのことを慰める。
「いいの。もう忘れたから。」
そんなわけないがアベリアはがばっと起き上がる。
「そうです!忘れました!」
フローラも元気よく同調する。2人はうんと固く手を掴みあい頷く。
「仲良しですね…。」
アリーはそんな2人に少しあきれ顔をしながら言う。フロミスはふふっと笑い優雅に紅茶を飲む。
「フロミスお姉さまは美味しいもの食べましたか?」
フローラが今度はフロミスに直接聞く。
「去年でしょ。うーん。そうねえ。確かローストチキンとか?があった気はするわ。」
フロミスは 妹のために必死に思い出し何とか答える。
「ええええ。あの美味しい?」
フローラはテンションをあげる。何故この子はこんなに食に貪欲なのか。
「フローラ!大事なのはダンスでしょ!」
アリーはこらっとフローラに言う。
「えーだってその日アリーとは踊れないし。」
フローラはすねたように口をとがらせ言う。
「あ。そうだ!」
フローラは急に思いつく。そしてアリーの手を取り駆けだす。
「ちょっ。どうしたのフローラ。」
アリーは驚くが何とかもつれずについていく。
「今一緒に踊りましょ。ポジションはどっちがいい?」
フローラは嬉しそうに言う。
「もう。急に何かと思ったわ。」
アリーは怒り口調で言うが、口元には笑みが浮かんでいる。
「せっかくだし交代交代でやりましょ。」
アリーはフローラの手を取り言う。乗り気になったアリーの様子を見てフローラはキャーとうれしい悲鳴を上げる。
「ちょっとここだと狭いかしら。」
アリーはきょろきょろとあたりを見回して、確認する。
「じゃあ、ダンスホールに行きましょ。」
フローラはうきうきしながらアリーに提案する。アリーもうんと素直にうなずき返す。
「「お姉さまたち私たちちょっとダンスに行ってきますね。」」
にこやかに様子を見守る姉2人に、妹2人は去り際に言い手を取り合ってお茶会をしていた部屋から飛び出すのだった。




