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ごめんね

アルスター家は、カーウィッチ家、キウーダン家に正式に謝罪に赴く。両家はジークが廃嫡となることを条件に、謝罪を受け入れた。


その結果、ジークはしっかりと廃嫡となった。

「なぜだ!この俺が、この俺が…。」

最後まで喚いていたが、彼は学園を退学させられ遠い地へと飛ばされた。


「やれやれ。やっとここまで来たわね。」

2人は屋敷の庭でお茶を飲みながら語らう。

「そういえばアルスター家の当主様自ら謝罪に来たのよね?」

アリーは驚きを声に含みながらフローラに言う。

「ええ。夫人とクランも一緒に来たわ。」

フローラはその当時のことを振り返る。


謝罪に来るとの連絡があったのが、1週間前。さすがに父にもそのころには話が伝わっていた。まあ、母から聞いて知ったのだが。本当に情報戦に疎い父にフローラたち家族はいつも不安を抱いている。しかし知ってからの父は早い。今回の謝罪も父がアルスター家に手紙を送り、謝罪が早まったのだった。

「私の娘にそんな行いをして、まだ謝罪に来ないなんて。」

ぷりぷりと怒る父を、母とフローラは知らなかったくせにという目で見ていたが少し見直していた。そして肝心なのはフロミスだった。

「お姉さま。」

フロミスの部屋をノックしてから部屋に足を踏み入れる。すると彼女は布団をかぶり号泣していた。

「おねえさま……。」

「フローラ……。」

涙ながらに彼女が口にしたのはアベリアのことだった。泣きながら彼女のことを話す姉にフローラは何も言わずただ強く抱きしめ姉の涙が枯れることを待った。


そして謝罪の日。アルスター家の3人は正装をし、厳かな雰囲気で来た。しかし父の怒涛の口攻撃に、当主であるアルスター伯爵はその顔を崩しただただひたすらに謝る。その様子には威厳などなく、ただの息子の不始末に謝る一父親の様であった。そして夫人、クランと2人も謝る。フローラはクランも今回のことに協力してくれた功労者だと父にこっそり言う。父もそれを聞き、顔をあげるよう言うが、クランは頭を下げ続けた。こちらが参ってしまうほどそれは長い時間彼は床の一点を見つめ続けたのだった。そして泣き続け出てくることのない姉の部屋の前にも立ち、同じく長い時間、アルスター家は頭を下げ続けたのだった。


「クランは立派ね。」

アリーはそう感想を漏らした。

「立派すぎるわよ。」

フローラは思い出し、ため息をつく。

「本当に馬鹿なんだから。真面目馬鹿よ。」

「言っていることが相反しているわよ。」

アリーの突っ込みが入る。


「そう。じゃあ、誤解は解けたのね。」

アリーは穏やかに言う。

「アベリア様の方も誤解だとわかってくださった?」

フローラが今度は質問する。

「ええ。」

そう言ってアリーも家での姉の様子を話しだす。


アベリア家にはアルスター家のジークに仕えていた従者が来た。彼はアルスター家当主に話を聞かれすべてを洗いざらい吐いた。当主であるアルスター伯爵は、従者にアベリアへの謝罪を正式に言い渡したのだ。そしてジークに命令されたとはいえ、自分がアベリア様の私物や近辺に害をなしたものだと名乗り出た。本当に申し訳ありませんでしたと。

そうして、従者とともに伯爵たちも後に正式に謝罪した。


これによりアベリアはジークの噂が本当だと知ることになる。今まで良い人だと思っていたジークが自分とフロミスが仲違いするように故意に事件を起こしていたのだと。アベリアは驚愕する。そして詳しく従者にジークが命令した行いを聞き、納得する。今までのジークの行動に合点がいったのだ。


「お姉さま。」

同じく、アリーも姉の部屋を訪ねた。

「ああ。アリー。」

アベリアは、ひどく狼狽していた。

「私フロミスにひどいことを。」

「お姉さま………。」

「今、取り急ぎ古代呪術の本を借りてきてジークに呪いをかけているのだけど。これ効くかしら。というか私フロミスにひどいことを。」

2言目にはフロミス。と言いながらもアベリアお姉さまは呪術を続けていた。完成するまで何度も繰り返しながら。


「アベリア様……。」

フローラはアベリア様のそんな様子を想像し何も言えなくなる。

「やりそうでしょ。」

アリーは苦笑しながら返す。

「ま、まあ誤解が解けてよかったわ。」

フローラはそれには触れません。というように話を切る。


「と、すると次はこれよね。」

「ええ。これよね。」

2人は互いに頷きあい、笑顔を見せるのだった。


「フローラ。」

泣き続ける姉の部屋に入ると、姉はフローラの姿を見て声を出す。

「お姉さま、今日は私強くいきますよ。」

「え。」

フロミスが何か言う前にフローラはフロミスが閉じこもっている布団の毛布を剥がしとる。

「え。」

急になくなった毛布をきょろきょろと探す姉を見て、毛布をたたみながら声を掛ける。

「外に行きますよ。お姉さま。」

窓のカーテンを「しゃっ」と引くと、腰に手を当てそう言い放った。


「お姉さま。」

アリーは恐る恐る姉の部屋に入る。

「ああ。アリー、今ちょうど新しい呪術を……」

「ああ。カーテン開けますね。」

暗くおどろおどろしい空気を放つ部屋にさっと入り日の光を入れる。その光で見たものをアリーは口にはしまいと思った。そしてアリーは提案する。

「お姉さま、今日は私についてきて欲しいところがあるのです。」


2人が考えた場所は、郊外にある花園だった。春とはまた違った花たちが彩る花園でゆっくりと2人今までの時間を埋めて欲しいと思ったのだ。


「フロミスお姉さま。見てください、きれいに咲き誇っていますよ。」

フローラは明るい声を出し、姉を誘導する。

「フローラ。ちょっと早いわよ。」

引きこもりがちだったフロミスには少しつらいようで息を切らしているが、花を時折眺め楽しんでいる様子である。気弱になっている姉を連れ出すのは、心痛んだが連れてきてよかったとフローラは思う。

「綺麗ね。」

そう言い、花をめでるお姉さまもとても綺麗だった。


「アベリアお姉さま。綺麗なものを見て心を穏やかにしましょう。」

アリーはアベリアを連れ出すのに苦労した。

「でも私まだ呪い足りないわ。」

そんなことを言ってのける姉をアリーは必死に言いくるめた。

「お姉さまこちらにもきれいなお花がありますよ。」

そんなことを言い、アリーも姉を誘導する。

「ちょっと、アリー?」

アベリアは急に花の陰に隠れる妹を追いかける。すると、そこは開けた空間があった。花園の一角にある隠れたガゼボ。そしてその前に佇み固まっている女性3人。アリー。フローラ。そして……

「フロミス……。」

アベリアはずっと会いたくても会えなかった人と会うことになる。

「アベリア………。」

か細く消え入りそうな声で名を呼ぶその子にアベリアはずっと会いたかった。

「ごめんね。」

赤く泣きはらした顔で彼女は何度目かわからない涙を流しアベリアに謝った。

「フロミス…。」

アベリアは思わず駆け出し彼女を腕に抱きよせた。

「ごめんなさい。ごめんね。アベリア。」

名を呼び何度も謝るフロミスをアベリアは力強く抱き寄せ言う。

「私の方こそごめんね。フロミス。」

彼女の名を呼び、赤ん坊のように泣く彼女の涙を拭きながらアベリアも涙を流すのだった。


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