作戦
長いことお休みしていました。今日からまた少しずつ投稿します。
拙いところだらけですが、完結まで頑張りたいと思います。
キディの屋敷の前で、馬車を降りるや否やキディは駆けてきた。
「それでウェンディは?」
「気落ちしてはいましたが、キディ様とのことをお話したら元気になりました。」
「キディ様が心配なさっていることも伝えましたら嬉しそうにされていましたよ。」
2人は順番に質問に答える。
「そう。……そうなの。………よかった。」
心の底から気持ちを吐き出しているのがわかる。
「それでウェンディ様がぜひキディ様とお会いしたいと。」
「ウェンディが。」
「会っていただけますか。」
2人は固唾をのんでキディの次の言葉を待つ。
数秒後。
「…ええ。ぜひ会いたいわ。」
拳を胸の前で押さえながらキディは意を決したように言う。その姿に、どれほどの覚悟を持って言葉を発したのかを2人は見た。
ならばこちらも本気で応えなければ。
それを受け、フローラたちはキディとウェンディ2人の予定を合わせる。
「うまくいくといいね。」
「きっとうまくいくよ。」
フローラとアリーはそんな思いを込めて、手紙を送ったのだった。
そして遂に2人の会う日が来た。手紙を送ってから1週間がたった日の午後のことだった。
場所はウェンディの家である。フローラたちもウェンディに見守ってほしいと招待されたが、同席ではなく遠くで見守ることにさせてもらった。せっかくの再会に水を差すようなことはしたくなかったのだ。
「キディ様。」
フローラたちは庭のガゼボで待っているウェンディの所へ行くようキディを後押しする。
「ふぅー」
長い息を吐くと、行ってくるわといいキディはウェンディの待つガゼボへと向かっていった。
「頑張れ。」
「うまくいきますように。」
そう小さく呟き、フローラたちはキディが歩いてくのを見守った。
2人の間でどんな話がされたのかはわからない。
しかししばらくたつと遠くからでも笑顔が確認できた。フローラたちはそれを見てこの2人はもう大丈夫だろうと確信した。
それから1時間ほどたっただろうか。彼女たちがこちらに向かって歩いてくる。フローラとアリーは立ち上がり、2人を迎える。キディとウェンディは穏やかな顔をしてお互いを見ていた。
「あの、2人にお礼を言いたいの。いいかしら。」
ウェンディがそう切り出す。
「そんな。お礼を言われるほどのことは。」
アリーが首を振り言う。
「いいえ。お礼を言わせて。」
キディが、アリーが首を振るのをとめる。キディとウェンディは互いに顔を見合わせ頷き感謝を述べる。
「「ありがとう。」」
フローラとアリーも顔を見合わせて頷くとその言葉に返す。
「「こちらこそ。」」
4人とも思わず笑いだす。
「なんだか不思議な縁ね。その縁のお陰でこうしてウェンディと仲直りできたのだけど。」
キディはジークに悪態をつきつつ破顔する。
「本当に。でもやっぱりむかつくわ。」
フローラも笑いながら語気を強める。
「そのためにも。だね。」
アリーが横から挟む。
「ええ。そうね。」
フローラはアリーの言葉に賛同する。
「お2人もいいですか?」
再度確認する。
「ええ。」
「はい。」
2人も頷き、席へとつき直す。
そして作戦会議をする。どうやってジークを罰してやろうかと。
4人で考えた作戦はジークからウェンディに宛てられた手紙を利用するものだった。
「よろしいですか?」
フローラとアリーは、ウェンディに尋ねる。
「はい。ジーク様を罰するにはそれが1番だと思います。」
「それで2人で少し話したのだけど。」
キディはそう前置きして話す。
それはウェンディが実際に学園に顔を出すというものだ。2週間後、学園では高等部の3年生が両親や友人を招待し、パネル展を開催する。そのため高等部の1年生や2年生も、3年生のパネル展を見に行くなど自由に1日を過ごせる自由時間となる。そこを狙うのだ。久しぶりにウェンディが顔を出せば興味を惹かれる人もいるだろう。そこでウェンディが涙を流しキディとともに語るのだ。ジークの所業を。手紙を交えて今まであった出来事を話し、同情を引く。そこからはもう聞いていたものたちに任せるというものだった。
「なるほど。それはインパクトがありますね。」
フローラは、うんうんとその提案を支持する。
「私たちもジークに一泡吹かせてやりたくて考えたのよ。ね。」
キディはウェンディを見て言う。
「ええ。ここは私の頑張りどころです。」
息荒く言うウェンディはもうジークのことは吹っ切れたようだった。
「ウェンディ様、本当に、本当に良いのですか?」
アリーは何度も確認を取る。
「これが広まればウェンディ様の立場は悪くなります。」
フローラも自分の発言の意味に気づき言う。しかしウェンディはやるという。
「私たちが言うのもおかしいですが、何故そこまでしてくださるのですか?」
アリーは心配そうに尋ねる
「以前の状況より悪いことなどないからです。」
ウェンディはきっぱりと答える。
「それに今はこうしてキディも。みんなもいますから。怖いものなどありません。」
晴れ晴れとした顔で答えるウェンディはとても眩しかった。
「ということで、あなたにも協力して欲しいの。」
「久しぶりに来ましたね。」
次の日の午後、アリーの家の庭で開かれたお茶会に呼ばれたキャメルは突っ込みを入れつつ答える。
「あなたがもたらしてくれた情報が、私たちをここまで導いてくれたわ。」
アリーが感謝しながらキャメルの頭を撫でる。
「まったく。学園での調査後は何も僕に話してくれなかったじゃないですか。」
キャメルは頬を膨らませながら、姉のアリーに反抗的な物言いをする。
「まあまあ、今話したしいいじゃない。」
フローラも宥めながらご機嫌をとる。
「まあ、もういいですけど。」
しょうがないという様に息を吐くキャメル。その様子を見て、良かったーと心で思う2人。
「それで僕は何をすればよいのですか?」
キャメルは2人を見て尋ねる。
「噂よ!」
フローラは待っていましたとばかりに言う。
「噂ですか?」
不思議そうな顔をするキャメルに2人は作戦の内容を話す。
「ふーん。わかりました。」
キャメルは話を聞き、納得した様子で承認する。キャメルにはお茶会に招かれた際にそこの噂好きのご婦人たちに噂を流してもらう。そしてオギー先生にも先生同士のコミュニティに噂を真実として流してもらうようにお願いすることを頼んだ。
「キャメルには大変なことを任せるわね。」
フローラは申し訳ないとキャメルに言う。しかしキャメルは楽しそうである。
「いえ、良い役をくれました。」
「楽しそうね。」
アリーはそんな弟をつつく。
「だって大役ですよ。僕だってアベリアお姉さまやフロミス様のことを傷つけた奴に一泡吹かせてやりたいと思っていたんですから。」
キャメルは笑いながら言う。
「さすが私の弟ね。」
キャメルを褒める姉アリー。
「さすが私の親友の弟。」
遠回しに褒めるフローラ。さすがこの2人の相手をしているキャメルである。
「そしてまだ大事な大役を任せる1人がいるわ。」
フローラは汗をぬぐうポーズをとり、これから会う人物を想像したのだった。
「そうして来たのですか。」
部屋の掃除をしつつ聞くキャサはフーンと答える。
「キャサ、話ちゃんと聞いている?」
掃除を続けるキャサにフローラは不安を感じ疑いの目で見る。
「ええ。聞いていますよ。」
いまだ掃除を続けるキャサ。
「掃除をいったん止めてほしいなー。」
「お嬢様、邪魔ですよ。掃除できないでしょうが。」
キャサお得意の辛辣な物言いをする。
「じゃなくて大切な話をするから!」
「噂ですよね。」
キャサは掃除を続けながらも核心に迫った物言いをする。
「ええ。」
「わかりますよ。優秀ですから。」
「キャサ………。」
フローラは思わず感動する。
「今度はお嬢様に抱き着いてもらいましょうかね。」
「また!ってそんなことでいいの?」
フローラは怒ろうとした気を削がれる。
「あら貴族にそんなことをしてもらえるメイドなんていると思いますか?」
「それは………。いないかも………。」
少し考え答えるフローラ。
「優秀な私にふさわしい褒美だと思いませんか?」
したり顔で答えるキャサにフローラは思わず笑ってしまう。
「私キャサが大好きよ。」
そんなフローラに掃除をしながらキャサは答えた。
「あらそんなわかりきったことを言わなくてもいいのに。お嬢様ったらしょうがない方ですね。」




