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味方

ウェンディは思い出す。彼女にも信用できる友達がいたことに。彼女の友達キディのことを。学園に通っていた頃。ジークが2人の関係はみんなには秘密にしようと言っていたため、ジークと付き合っていることは誰にも言っていなかった。が、キディには「付き合っている人がいる」ということを伝えていた。その際、彼女はずいぶんとウェンディに忠告していた。

「あなたと2人だけの秘密にしようなんて言う人を信じて本当に大丈夫?」と。しかしその当時ウェンディはジークを信じきっていた。そんな忠告を軽く流してしまうほどに。


「今からでも遅くないでしょうか。」

フローラ、アリー、クランに話しながら、ウェンディは3人を伺い見る。キディには何も言わずに学園を出てきてしまった。それだけウェンディの心はすさんでいたのだ。


「「大丈夫に決まっています。」」


フローラとアリーは元気よく答える。根拠があった。ウェンディを訪ねる日の前日。フローラとアリーはキャサに調べてもらいキディの存在を知り、キディに会いに行っていたのだ。

「キディ様は今でもウェンディ様のことを心配しておられましたよ。」


「何か御用ですか?」

そう言い、キディ様は現れた。

「あの、お話したいことがあるのです。ウェンディ様のことで。」

声を潜めて言うとキディは、はっとした顔をし、昼食を一緒にしましょうとフローラたちを屋敷に招き入れた。


「それであなたたちは?」

2人を前にし、キディは、あなたたちは何者なのかと尋ねる。フローラとアリーは正直に今までのことを話す。自分たちが今高等部の間で噂になっているフロミスとアベリアの妹であること、その噂のこと、ジークとウェンディのこともキャサの調査結果を共に見せすべて話した。静かに聞いていたキディは、ウェンディの話になると顔色を変えた。そしてじっくりとキャサの調査結果を見る。


「なるほど。大方のことは納得しました。」

そう冷静に言ったかと思うと、顔をゆがませ泣きそうになりながら声を吐き出した。

「そうだったのね。ウェンディ……。私、全く気付いてやれなかったわ。」


「「キディ様……。」」


2人は黙って彼女の気持ちを受け止めた。もしも友達がそんな目に合い、1人何も言わず姿を消してしまったら。そしてその事実を後に知ることになる気持ちを想像し、2人はテーブルの下で手を握り合った。


数分後、彼女は涙を拭きながら喋る。

「ありがとう。このことを話してくれて。」

感謝の言葉とともに彼女は首を垂れる。

「いえ。お話しするのが遅くなり申し訳ありませんでした。」

2人も同じように首を垂れて謝罪の意を示す。

「それでどうしてこの事を話してくれたのかしら。」

冷静さを取り戻そうと、飲み物を口にしながらキディはフローラたちを見つめる。


「許可を取りに来ました。」

「許可?」

そして先ほどの姉たちの噂とジークの関係に再び言及し、ジークの噂を作り流したいことを話す。その時に、ウェンディ様、キディ様に協力して欲しいことを強調して。

「そうね。私もジークのことはぶっ飛ばしたいし協力はいいわよ。」

キディもジークに対し怒りをあらわにして言う。

「本当ですか?」

フローラたちは喜ぶ。


「けど。」

そこでフローラたちの声を切る。

「ウェンディが了承しなければ、ウェンディのことを利用するみたいなことは嫌よ。」

それに対しフローラたちはまじめな顔をして言う。そこはわかっていること。休日ウェンディに会いに行き、了承を取ることを。


「そういうことなら、わかったわ。」

キディはやっと頷いた。


「あ、ちょっと待って。」

屋敷を後にしようとするフローラたちにキディは声を掛ける。

「ウェンディに会いに行くとのことだけど……。」

「はい。」

「彼女のこと追い詰めないであげてね。もしも彼女が気落ちしていたら…。」

「わかっています。」

そこはと頷き返す。

「そう。彼女少し気弱なところあるから、お願いね。」

「あの、キディ様は会いに行かれますか?もしよろしければ…。」

恐る恐る提案してみる。


「いえ、私は…。彼女に会いに行く資格はないわ。」


そう言って、彼女は話す。キディはウェンディが何も言わず去った後、初めて学園から自主退学したことを聞いた。そのため、何も言わず去ったウェンディのことを少し憎んだのだと。何も知らずに彼女のことを薄情な人だと思い、その後何も連絡していなかったと。


「知らなかったとはいえ、私は彼女をさらに追い込んでいました。今更心配しても…。」

悲しそうに言うキディに、フローラとアリーは姉たちの様子を重ねてしまう。

「遅すぎるということはないのではないでしょうか。」

アリーは1歩踏み出し言う。

「ウェンディ様のことを心配していたのは嘘ではないのですよね?」

「それは、まあ、……。」

アリーはそれを聞き、さらに言う。

「でしたらこれからは変わるではないですか。キディ様がウェンディ様の一番の理解者になるのですから。」

「ウェンディの……。」

そう言い少し考えこむキディにフローラは言う。

「もしもウェンディ様が了承してくださった場合には、ウェンディ様と会っていただけますか?」

キディは、唇をかみしめながら何かを言わんとしている。私たちは言葉を待つ。

「……ウェンディに伝えて。私はあなたのことが……大好きだって。」

絞り出し言葉を紡ぐキディの手を握りしめ深くうなずき約束した。必ず伝えることを。



そして今に至る。

「ウェンディ様のこと、キディ様は本当に大切に思われていましたよ。そのせいで、かえってこじれてしまっただけなのです。」

キディとの話をウェンディに話しながら、彼女が本当にウェンディのことを思っていることを伝える。

「そう、キディが。そう。」

涙ながらに言うウェンディをフローラたちは見守る。


「よろしければ、お会いしませんか?キディ様に。」

そう言ったのはクランだった。

「キディに…。」

ウェンディは少し眉間にしわを寄せ考えるそぶりを見せる。そして口を動かす。

「ええ。会いたいわ。キディに。」


フローラとアリーは「わっ」とウェンディ様に抱き着く。

「会いましょう。」

「私たちにお任せください。」

「そこまでしてもらって申し訳ないわ。」

2人に首を振るが、2人はそんなことはないと話す。

「何を言っているんですか。これくらい当たり前ですよ。」

「そうです。むしろこれくらいはしないと申し訳が立ちません。」

「…優しいのね。」

微笑むウェンディに2人は忠告する。

「お優しいのはウェンディ様です。そんなに優しくてどうするんですか。またつけ込まれてしまいますよ。」

「そうです。もっと貪欲になりましょう。ウェンディ様。」

ウェンディは2人に叱られたじろぐ。


「こら。お前らあんまりウェンディ様に詰め寄るな。」

クランはそんな2人をウェンディから引き離し、窘める。

「ちょ。クラン。大事な事なのよ。」

3人のそんな会話を聞き、ウェンディは更に笑う。

「私、幸せ者ね。」

その言葉にフローラとアリーは反応する。


「「それは、これからもですよ。」」


そして4人は話し合い、ウェンディがキディに会える日を聞く。

「じゃあ、お願いします。」

帰りの時間となり、ウェンディは3人を見送る。

「また会いに行きます。」

「ではお会いできる日程が決まり次第、お手紙を出しますね。」

「本当に今日はありがとうございました。家からも必ず正式に謝罪をいたしますので、もう少しだけお待ちください。」

3人3用に言葉を掛け、ウェンディに挨拶するとその場を後にするのだった。


「ウェンディ様、最後は笑ってくれたわね。」

フローラは嬉しそうにつぶやく。

「ええ。」

「しかしお前らはすごいな。まさかキディ様とも会っていたなんて。」

クランは頭を掻き、お見それしましたと言う。

「何言っているの。今回の功労者は間違いなくクランでしょ。」

フローラは怒りながら言う。

「え?」

「あなたがウェンディ様の気持ちに寄り添って怒ってくれなければ、ウェンディ様は決心できなかったはずよ。ありがとね。」

「ああ。まあな。」

顔を赤くし照れるクラン。そんな2人のやり取りをまたしてもアリーは眺めることとなったのだった。


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