手紙
「もう。本当にジークにはむかつかせられるわ。」
様もつけずに呼び捨てするフローラにアリーも注意などせず同意する。
「1日でも早く何とかしましょう。」
アリーはそうフローラに言い、気合を起こさせる。
「さて。」
フローラとアリーはクランに呼ばれていた。
「で、ジークに何か動きがあったの?」
そう尋ねるフローラにクランはあるものを差し出した。
「これは………。手紙ですか。」
アリーは大量の手紙を見ながら言う。
「ああ。処分場に置かれていた。」
クランは仕分けしながら、その問いに答える。
いくつかの種類の手紙があった。友人と思われる人との手紙。フロミスへのお礼状の書き損じ。フロミスからの手紙。親戚からの手紙。そして何人かの女性とやりとりしている手紙。
「お姉さまの手紙を捨てるなんて………。」
フローラは怒りながらも、仕訳けられた手紙を見ていく。
その中にはやはり気になるものがあった。女生徒とのやり取りをしている手紙だ。
「これはキウーダン家の家紋だな。」
2通の手紙に印字されているマークを見てクランは答える。
「あいつ!もしかして、学園の女生徒にも手を出していたの?」
あきれを通り越した顔でフローラは言う。
「ああ。あいつはやはり馬鹿だったらしい。」
実の兄に向かい辛辣な物言いをする。しかし手紙を見るとそう言いたくなる気持ちがわかってしまう。本当に学園の女生徒に手を出していたからだ。彼女は貴族の中でも身分の低い令嬢だった。だからこそ自分の不利には動くまいとくくり手を出したのだろうと予測された。
「よくもまあバレませんね。このご令嬢も相手に婚約者がいると知らなかったのでしょうか……?」
アリーもあきれながら言う。
「俺はこのご令嬢のことまでは知らない。ただ1度も家で彼女の話が出たことはないのは確かだ。」
3人は、互いの顔を見合わせて肩をすくめるしかなかった。
「とりあえずありがとう。」
フローラはクランに礼を言う。
「ああ。役立ててくれ。あとこれ。」
そう言ってクランはフロミスがジークにあてた手紙の束をフローラに渡す。
「自分でつけたいけりってものもあるだろ。」
クランの真剣なまなざしにこくんとフローラもうなずきで返し、手紙を受け取る。
「しかし情報としては物足りないよな。」
クランは申し訳なさそうに言う。
「いいえ。この情報があれば家の凄腕のメイドが何とかしてくれるわ。」
フローラはにこにこと笑う。ジークは不思議そうな顔をするが、フローラの言うことだと納得した。そして残りの手紙をまとめるとクランは先に部屋を出ていった。
「あの方ね。」
アリーもニコニコしてクランを見送った。
そして現在。
「ねえ、お願いよキャサ。」
「休み明けにこれはちょっと重くて……。」
またしてもこの二人の攻防が繰り広げられることとなる。
「キャサ。私は約束通り休みを十二分にとれるように配慮したわよ。」
「ええ。それはありがとうございました。」
そう言って、故郷の土産ですとお菓子を差し出す。フローラは、これはどうもと言っておとなしく受け取る。が、気づく。
「じゃなくて。任務を新たに命じているのよ。私は。」
「土産ではごまかせませんか。」
キャサは真顔で言ってのける。
「今回も我が家にとって重要すぎる任務よ。」
「だからなぜまた私何ですか。」
キャサは、私は休んでいた分、忙しいのですよ。と言い断りたがる。しかしそうはさせない。
「あなたしかいないからよ。」
フローラは強く言い切る。
「私からもお願いいたします。どうか今回の頼まれごと任されてくれませんか。キャサしかいないのです。」
間にアリーも割り込んで、フローラをサポートする。
「うーん。もう一声。」
そんな2人を遊ぶキャサ。フローラは少し悔しそうにしながらもきっぱりという。
「あなたが一番信頼できる人だからよ。あなたにしかこんなこと頼めないわ。」
「優秀な人材!引き抜きたい。」
キャサは成程という風にうなずく。
そしてうんうんと悩むそぶりを見せる。その様子を二人は固唾をのんで見守る。
「合格です。」
キャサは小さく丸を作り2人の依頼を受けた。
「ありがとうキャサ。」
「今回も長かったわ。」
ふーとため息をつくフローラと喜ぶアリー。
「時間はどれほどいただけますか?」
キャサは畏まって聞く。
「そうね。2週間でお願いしたいわ。」
フローラは答える。
「畏まりました。」
そう言うと恭しい挨拶をし、キャサはその場から去っていった。
「キャサならきっとやってくれるわ。」
「そうね。」
2人はそんなキャサの背中を頼もしく思いながら見送ったのだった。




