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メタルマグマ【第一章完結】  作者: ろんちょ
サン・マウン編
8/8

ツノの騎士、ブレザーの女

メタルとカナエは、闘技場の地下室出口で

ジュウトを待っていた。

月はかなり沈み、もう夜は明けそうだ。


「遅いわね……」


カナエは組んだ腕の上で指をコツコツと打っている。苛立ちの中に、紛れているのは睡魔。

苛立ちと睡魔の対立により、カナエの美形顔はぐちゃぐちゃになってしまっている。


「…ねえメタル…メタル?」


メタルに目を向ける。

なんとこの岩は、すでに楕円を閉じて動きを

止めていた。つまり、寝ている。


「ふんっ!」


「あいてえ!?」


カナエは思いっきりメタルの顔面を殴った。

思惑通り、メタルは目覚め、ピクピクと楕円を開け閉じしている。

周りをぐるっと確認し、目を背けるカナエを発見し、気づいた。

自分を起こした元凶に。


「くそっこの女マジで…!」


「お目覚めみたいね?」


カナエの満足げな顔と、メタルの歪んだ楕円が対面する。


「…なんか…俺、お前の旅に付き合い始めてから尊厳ない気がするよ。」


カナエはそう言われて、顔を背けた。


「別に、反抗してもいいわよ。

正直、今は従順すぎてキモいくらい。」


メタルは楕円をひきつった。


「まあだってよ…俺暇だし…お前に従うぐらい

しかやることねんだよな…。

それに、俺も自分のことよくわかってねえから、とりあえずお前にセーフティまでの

“地獄の歩き方”を教えて欲しいだけだ。」


「便利な案内人ってわけ?」


「いや、生意気な案内人だな。」


カナエはチラッと、メタルの顔を見た。

楕円を閉じ、半分寝ている。


「ねえ、私に何かあったら、あんた一人で行動

できるわけ?」


「あぁ?まあ、なんとかなるだろ…」


「自分で考えて動くってことができる?」


「…園児じゃねえんだから…」


そんな話をしていると、コツコツと音がして、

地下室から一人の男がやってきた。


「君達は…」


ジュウトだ。

二人は目を最大限開き、ジュウトに詰め寄る。


「あなた何してたの!?ずっと待ってたんだけど!?」


「そうだぜ!こっちは寝てないぞ!!」


二人は興奮状態でジュウトを責めた。

ジュウトは訳もわからず岩と女の頭を近づけられ困惑し、とりあえず二人を連れて朝食を食べに行くのだった───────







──────窓から入る日光が飯を照らす、古風な木造料理店。

客や店員が歩くたび、床はギシギシと軋んだ。


「…で、なんの用だっけ。」


目の前に出されたデカ盛り海鮮丼をバクバクと口へと運び続けるカナエに向けて、ジュウトは訊いた。


「うるさいわね!今食べてるでしょ!」


「いや話してやれよ…」


すぐ横で半分楕円を閉じながらうとうとする

メタル。この岩の眠気は限界だ。


「はぁ〜仕方ないわね…」


カナエはため息をつき、嫌々箸を置くと、言った。


「あなた、なんであの儀式に参加してるの?」


その問いを聞いたジュウトは、眉をぽりぽりとかくと語り始めた。


「まあ成り行き、というかさ。

俺は目覚めたらこの街にいたんだ。この鎧や剣と共にね。記憶に残っていたのは、名前と、剣の使い方ぐらい。

そんな俺に街の人たちは俺に色々なことを教えてくれたり、親切にしてくれたりした。優しい人達だよ。」


「…その時から儀式はあったの?」


カナエが質問を飛ばした。


「まだ儀式はなかったさ。この時から“サン”と誰かが戦わないと夜が明けないのは同じだったけど、自分から傷つきたい人なんて滅多にいなかったからね。狩人が別目的で森に出て偶然野生の

“サン”と戦うことがあって、それでやっと夜が明けるみたいなことが多かったよ。」


ジュウトはそう言うと、机に置いた兜を見つめた。


「だから俺は志願したんだ…」


ポツリと、呟くように言うと、カナエに目線を合わせる。


「俺はこの島の“夜”を明かし、正しい昼夜を作る

ため、儀式の“勇者”に志願したんだ!」


「俺は…この街の“新時代”を作ったんだ!」


鋭い眼光が、カナエの目を貫く。

ジュウトの熱意に、カナエは意見がひっくり返されそうになりながらも、自分を強く保ち、口を開いた。


「ま、まって。つまりあなたは、自分が犠牲になってこの街に正しい昼夜を作っているんでしょ?

それって…あなたがやる必要あるの?」


そう言われ、ジュウトは首を傾げた。


「あんなに吹き飛ばされたり、噛まれたりして、痛いでしょ!?苦しいでしょ!?儀式なんてやるべきじゃないわよ!」


勢いよく立ち上がり、そう言い放つ。


「あっ…」


やってしまった、とカナエは自分の行動に後悔する。つい熱くなりすぎ、自分の考えをそのまま

押し付けてしまった。

冷静に周りを見てみると、店員や他の客がカナエに視線を向けていた。

目線を下ろし、震える体で座ろうとしたカナエに、ジュウトはいった。


「苦しいよ。」


その言葉にカナエは止まる。


「でも俺は…誰かを助けたい。」


ジュウトは立ち上がり、席を離れ、店を出た。

その背中をカナエはただじっと見つめ、店の扉が閉まると共に、力が抜けるかのように座り込んだ。


「またやっちゃったか…」


ため息を吐く。

目の前には海鮮丼、横には楕円を閉じた岩、

海鮮丼の先には、ジュウトが置いたであろう食事代。


「…お前ってそういうところあるよな。」


「えっ!?」


寝てると思われていたメタルが、唐突に喋り出した。


「あんた起きてたの!?」


「フッ。話に混ざろうかと思ってたけど、タイミングを見失っててな、寝たふりしてたぜ。」


得意気にそう言うメタル。


「…で、私の“そういうところ”って、何よ。」


しばらく間を置き、メタルは答えた。


「キルノの時もそうだったが、お前は無駄に首を突っ込むよな。何がしたいんだ?」


「私は…ただ自分のために、自分の意思を貫いてるだけよ。」


「その結果死にそうになってんだろ?

お前のやってること、ジュウトと変わらねえよ。自分の得にもならねえのにキルノを生かしたり、ジュウトと話してみたりさ。

お前も…“誰かを救いたい”とか、そんなこと思ってんじゃねえの?」



「いや、お前…もしかして…ほんとは

悪党なん─」


カナエが勢いよく立ち上がる。


「ち、違う…!私は…私は…!」


何か言葉を紡ごうとするもの、言葉が出てくることはなく、プイっと顔を背けそのまま店の出口へ向かうカナエ。


「おいどこ行くんだよ!?」


「ちょっと散歩!」


勢いよく扉を閉めて出て行ってしまった。


「えぇ…」


メタルは困惑したまま、カナエの残した海鮮丼を見つめた───────






───────はあ、とため息を吐いて、サン・マウンの街を歩くカナエ。


「私、何やってんだろうな。」


つい感情に任せて店を飛び出してしまったことに、少し恥ずかしくなってきた。

かなり歩き、闘技場までやってきてしまった。


「おい、サンの調達はどうなっている?」


地下室から知っている声が聞こえた。


「今日もジャングルにいないようです。

マウン様に祈りましょう。」


「そうだな…。」


どうやら、儀式の時に演説していたクラパラの

族長のようだ。

族長とその使用人は、周りを確認して地下室の奥深くへ入っていく。


「マウン様…?サンの調達…?一体なんなの

かしら…。」


カナエは2人にバレぬよう、地下室へと潜入するのだった───────





───────焦ったようにサン・マウンの街を走るメタル。


「あ!」


「えっ!?」


バタン、と目の前に出てきたジュウトとぶつかってしまった。


「おっとっと…すまんすまん…」


「なんだ…君か。」


メタルは何かを閃いたかのように、楕円を大きくした。


「なあおまえ!カナエの居場所しらねえか?」


「カナエ…ああ、はぐれたのかい?」


「散歩しにいくって言ったっきり帰ってこねえんだよあいつ。」


「うーん…わからないな…」


メタルは肩をガクッと落とした。


「あいつ頭おかしいよ…無駄に首突っ込むし、

急にどっかいくし…」


「無駄に、か…」


ジュウトは考え込む。


「もしかして…!」


何かを思いついたようだ。


「お!?なんかわかったのか!?」


「ああ、きっと彼女は…」


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