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メタルマグマ【第一章完結】  作者: ろんちょ
サン・マウン編
7/8

暗い世界、黒い岩

「はああ〜〜!ここの海鮮は最高ね!」


カナエは海鮮丼を食い終わり、ふう、と息を

吐く。


「じょーちゃん、いい食いっぷりだねえ!」


クラパラ族の店員が、所々抜けている歯を見せつけるように、ニコッと笑いかける。


「ホワイトシティとは景観違いすぎてビビるぜ…」


メタルがつぶやいた。


「そりゃ、ジャングルに囲まれてるからねえ。

はい、これデザート。」


褐色肌の手で、カナエの前に一切れのスイカを

置いた。


「ありがとう!ところで、塩はないのかしら?」


「しお?なんだそれ。」


「あー…」


カナエは困ったな、と言った表情をすると、

やっぱりいらないと断りを入れる。


「お前よく食えるよな…もう4軒ぐらい飯屋渡り歩いて、全部の店でスイーツまで食い尽くしてる

けど…」


「まあね!祭りでも食うわよ〜〜!」


誇らしげにそう宣言して、スイカにかぶりつく。


「あんたら、夜明かしの祭りも行くのか。

なら、儀式も見逃さないようにしないとな。」


「そういや、祭りのメインは儀式なんだっけ?」


「ああ、1日がおわり、夜の0時あたりになると始まる儀式さ。街中央の闘技場で行われるんだ。

クラパラ族はもちろん、旅行客もたくさん集まるんだよ。」


「へえ、人気なんだな。どんなことするんだ?」


「それは行ってからのお楽しみだな。

それと、君たちは運がいいよ。

今日は輸入品が一気に届いてるから、祭りの屋台もいつも以上に出てくるからな!」


「ほんと!?メタル!まだまだ楽しむわよ!」


カナエが目をキラキラさせて言った。


「お、おう…」


メタルは内心疲れていたが、口に出すと面倒なことになるのをわかっていたので、今回はばかりは黙っていたのだった────






────石造りでできた円形闘技場の周りを囲むように、屋台が立ち並ぶ。

カナエはイカの姿焼きとフランクフルトを両手に持ち、るんるんと屋台巡りをしていた。


「やっぱり祭りは楽しいわねえ〜〜!」


「…」


メタルはと言うと、カナエに無理やりお面をくくりつけられ、楕円を完全に塞がれてしまっていた。

体が岩、お面がクラパラ族のものということもあり、これでは完全に偶像だ。

周りのクラパラ族からの視線が集まっている。

そんなふうに二人で屋台を巡っていると、何やら闘技場に人が集まっていくではないか。


「おいおい、もしかして儀式じゃねえか?」


メタルはバリバリとお面を噛み砕きながらそう言った。


「せっかくだし行ってみよっか!」


「あおまえちょ!」


小柄なカナエは人混みの中を上手く駆け抜けて、闘技場の中へ。

対してメタルは無駄に図体がデカく、少々入るのに手間取ってしまった。


「ふぅ〜やっと座れたぜ…」


「遅かったわね!」


メタルが着く頃すでに、カナエは座っていた。


「にしてもなんでわざわざ3階の席なんだよ?

1階でいいじゃんか!」


「それが、1階と2階はクラパラ族の人限定席らしいのよねえ…」


メタルはそう言われて1階と2階を確認してみるが、確かにクラパラ族の人々しか座っていなかった。

そんなふうに周りを見てると、ドン、という太鼓の音が響き渡った。

そろそろ始まるようだ。闘技場内が騒がしくなり始める。

そして、闘技場のステージに、一人の男が現れた。


「ねえちょっと!あれって!」


「あああっー!ツノ野郎じゃねえか!?!?」


そう、二人を助けたあのツノの騎士、

ジュウトだ。


「おーい!今日も頑張れよお!!」


「この夜を明かしてくれえええ!」


クラパラ族の人々が、ジュウトに向けて声援を送る。


「あいつなにすんだ…?」


ガガガ、とステージにつながる檻が開く。


「グァァァァァァ!!!」


現れたのは、4メートルほどの大きさをした黒い

狼だ。

ジュウトは狼を見ると、兜を被り、大剣を

構えた。


「はあああああ!!!!」


そして狼に斬りかかり始めた!


「おいおい急に闘い始めたぞあいつら!?」


メタルが驚愕して楕円を広げると、1階観客席に配置された台座に族長が立ち、観客に向けて演説を始めた。


「皆の者よ…今日も夜は明けない!

このサン・マウンの夜を明かす方法は、ひとつ

しかない!

神の怒りの具現化!“サン”と、我らクラパラ族の味方となる“勇者”が闘い、傷つきあい、勝利することだ!!!」


会場が盛り上がり、歓声が上がる。


「では、闘いを存分に繰り広げられることを願おう!」


カナエはこの演説を聞いて眉を顰めた。


「儀式の内容ってこれなの…?悪趣味ね…」


「まあ仕方ねえだろ夜明けないんだからよ。

俺はこの闘いを楽しむぜ!!!」


「あんた…」


カナエはメタルに呆れて顔を手で伏せる。



「グルガァ…!」



サンが唸ると、突如として飛びかかり、ジュウトの腕に噛みついた。


ミシミシと鎧に歯が食い込んでいく。

それを見たクラパラ族の観客達からは、歓喜の声が広がった。

カナエはこの光景が奇妙に見え、眉を顰める。

人が勇気を出して闘い、傷ついていることを喜ぶ。


「な、なんだかなあ…」


ポツリとつぶやいた。


「うおおおお!!!やれええ!!ころせええ!」


メタルは存分に楽しんでいるようだ。

カナエはため息を吐いた────





───しばらく闘いは続き、サンもジュウトもかなり疲労している。


「そろそろ決める。」


そう言ってジュウトは大剣の柄頭に小さな円柱状のものをセットした。

すると、大剣の刃がびしゃびしゃと水に纏われていき、青い輝きを放ち始めた。

それに誘き寄せられるかのように、サンは

ジュウトに牙を剥いて走り出した。


「グァァァァァァ!!」


「来るがいい、この世の悪よ…!」


サンに慄きもせず、剣を大きく振り上げ…



「“ストライダー・イルネス”!!!!!」



叫んで振り下ろした。

すると水の斬撃がサンに飛んでいき、真っ二つに切り裂かれ消滅した。

剣の刃の輝きが消え、元の鉄の色に。

ガタン、という音が町全体に響き、空の雲が高速で流れ始める。


「終わったぁ…!」


観客達は疲れ果てたかのように、闘技場を去っていった。

これで儀式は終わりのようだ。


「これで夜が明けるっ…てことなのかな。

ちょっと?メタル?」


カナエはメタルに顔を向ける。

メタルは楕円を広げたまま、ぴくりとも動かない。


「おーい?」


ボコっとメタルの顔を殴るカナエ。

するとメタルは意識を取り戻したかのように、楕円をピクピク動かし始めた。


「おお…!?なんだか変な気分だったぜ。

心臓を掴まれたみたいな…。」


「あんた心臓あったの?」


「しらねえよ!」


カナエはため息を吐き、立ち上がった。


「とりあえず儀式も終わったし、ジュウトさんのところに行くわよ。」


「は?なんていった?」


メタルは困惑し聞き返した。


「だからジュウトさんと話すの!

こんな儀式妙でしょ!?彼無理やりやらされてるかも!」


「お前何言ってんだ!?俺たちに得ない

だろ!?」


両手を広げて訴えかける。


「私が気になってるの!早くいく!」


「えぇ〜!?」


カナエは一度やると決めたらもうダメだ。

この岩が一番それをわかっていた。

メタルは理解に苦しみながらも立ち上がり、カナエの背後をついていく。


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