プロローグ
見渡す限り人工物のない平原、ロツア連邦を構成するロツア王国東ンベリア平原。
その中央部に少女は立ちすくんでいた。
彼女の名は、月城ルナ。
その出生は本人も知らず、全ての真実を知っているのは、現代日本の秘密結社の幹部を構成する山神家・川神家・海神家・空神家の四家の当主のみである。
彼女の出生の真実とは、150年前に遡る。
明治維新の裏側で、秘密結社にも大きな動きがあった。
当時の四家の当主達が持てる全ての体内の魔力を出し合い、守護者であった龍神の助けのもとで1人の幼い少女を生み出した。
そして、その子は後に月城ルナと名付けられるのだ。
ルナを創り出した理由は、当時守護者であった龍神に敵対していた黒雷龍に対抗する戦力のためであった。
平安時代以前、日本では白聖龍と黒雷龍が争っていた。
2匹の特性上黒雷龍は自然に対して破壊をもたらし、白聖龍は癒しをもたらした。
その結果、白聖龍は人々から神の龍と崇められ、龍神となった。
白聖龍の魂の格が神となったものの、黒雷龍も何者かの手によってパワーアップし、2匹の決着がつくことはなかった。
戦う術を持つ人々は秘密結社を結成し、龍神と共に戦った。
しかし、黒雷龍はそれに対抗して自らの力で異形の集団を創り出し、人々と戦わせたのだ。
戦力は拮抗し、数百年間決着がつくことはなかった。
時の流れとともに、龍神と黒雷龍の戦いを直接知る者は居なくなり、伝承も消滅した。
秘密結社の人間だけが事実を伝え続け、遂には戦いを終結させるべく四家の当主達が集まりルナを創りあげたのだ。
しかし、ルナを目覚めさせようとした時、自らを龍将と名乗るもう一体の龍の介入があり、黒雷龍が敗れた。
それにより、ルナを目覚めさせることは無くなってしまった。
時が流れること150年。
最近になってやっと龍神がルナを見つけ、放置していた幹部達の身勝手さに怒り、異世界の神に掛け合ったのだ。
「新しい世界に生まれ変わらせてやってくれないか。」
と。
そんなこんなで、ルナは今、平原の真ん中にいるのだ。