序章「六」ナハトVSミロク
ブチギレ勇者様蛮行に及ぶ。
「抜け、モヤシ野郎」
冷たい圧が俺の足を止めていた。
まずいよな、ステータスもあちらが圧倒的に上……最悪正体を晒して戦うにしてもリキャストは──860sec……まだ13分弱ある。
──警告、あちらの我慢が限界の様です足元に身体強化の魔力反応あり、推定2秒後に近接攻撃が来ます。
は!?
「死ね、醜男」
──緊急回避、神経系の操作権限代行、一時的に身体を操作します、全力でバックステップ──および反撃に移行。
焦り、何もできないでいる俺をよそにラダーが俺の体を動かしたらしく突然全力の後ろへの跳躍、さらには魔銃を抜きはなち──
ズガァン!!
「……は、はは」
乾いた笑いしか出ねえ、後数瞬遅ければ俺の体は左右に泣き別れしていただろう、地面に深々と斬痕が刻み込まれているのが解る。
「……貴様避けたな、しかもこの俺の顔、顔にっ傷、き、キズきずをぉ!?」
見れば勇者の頬にはペネトレイトの弾丸が掠ったのか、浅くはない裂傷ができていた。
怒りに震える表情は勇者と言うよりもはや悪党だが。
「ナハト、そこまでにしなよみっともない……今ので彼が少なくともそこいらの魔物が化けたミミック系じゃないのはわかっただろ、あんなアーティファクトの類は知能や自意識の薄い迷宮の雑魚モンスターには使えやしない」
冷たいかと思ってたけど、ヤヨイが助け舟を出してくれた。しかしそうなのか、アーティファクトってそう言うものなのか?俺使えてるけど。
──是、あなたの場合はネームド進化時の自意識の取得及びどういうわけかヒトの魂の構造設計図が記憶野に保持されていたことから現状のヒューマナイズ形態をとることやアーティファクトの使用が可能になっています。
なるほど納得だ、まあアーティファクトなんてものをなんで持ってたのかもわからんが。
──ソレは本来ならあなたが倒された際にドロップする可能性があったレアドロップアイテムになります、魔物は迷宮やその周辺遺跡などに散乱しているアイテムをソウルケージ内にエネルギー資源として溜め込む為です、倒された際にそれがごく稀に実体化してドロップするわけですね。
「……ち、迷子だとか言ってやがったなそれが信じ難いが本当なら勇者として貴様を街まで保護して送り届ける義務がある……業腹だがそうしてやる、助かりたくば黙ってついてこい……どのみち今から地上へ戻るところだからな」
「……はは、よろしくどうぞ……できたら睨むのやめて欲しいなあ、ちょっとちびりそう」
「……こんな腰抜けに、傷を──貴様も探索者なら覚えておけ、いつか必ずこの借りは返してやる」
やめるどころかさらに睨まれました、いやまじやめて、すげえ居心地悪い。
──最初に無意識な発言で煽ったのはマスターでしょう。
そうだっけ?
「ナハト、帰るなら早く行こう」
呆れた顔でミアが言えば、勇者様はしどろもどろに弁解を始める。
「ミア、違うんだコレは、君たちを守らねばと思ってつい力が入ってしまっただけだ、他意はないよ本当だ」
なれなれしくミアの肩に手を触れて猫撫で声……うわぁ、典型的な勘違い野郎だよなぁ。
「どうみても〜〜逆恨みで〜〜やつあたり〜〜にしか見えませんでしたよぉ?」
エルゥがわりと容赦ない。
「そっ、そんなわけないだろうちょっと警戒が過ぎてしまっただけさ、なあミロク、私たちは仲良くやれる。そうだろう!?」
ガシィ、っと肩まで組んできた。
勘弁しろ、ちょっと虫が良すぎないか?
「バカやってないでいくよ、結界石は回収、道具も次元収納鞄に納めたら出発、火の後始末忘れないでね」
「あ、ああもちろんだ、ほら君も手伝いたまえよ!」
ナチュラルに俺を顎で使おうとし始めた、いやまあ片づけくらいは手伝うけどさ。
「ナハト、ミロク……喧嘩はこれきりにしてね?」
ミアがニッコリと笑いながら言う。
「ああ、もちろんだとも!!」
この勇者、気づいてねえな……あの笑顔は次はねえぞ、って顔だ……マジギレ寸前の碧の表情にそっくりだ怖い。
「……ミアには逆らわない様にしようそうしよう……」
「ん?何か言った、ミロク?」
「なんでもありません!!」
思わず背筋がのび伸びた。
助けてドラ◯もん!?
──マスター、やはり貴方は女性の扱いがお上手とは言えませんね?
……ほっとけや!!
作者:ヒロインはミアなのかなー(と言う顔)
次回、行きは良い良い帰りは怖い。




