表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/3

嘘で生きる

あれから感情を抑えるために、小さな嘘はずっとついていた。


母をのぞく家族一同は、父方の祖父母の家に居候することとなった。

祖父は事業をしていて、大きな持ち家に潤沢な資産があった。

僕たち子供には選択肢はなかった。

子供が育つには、お金がいる。

そしてお金はあればあるほど、不自由なく生活できる。

だからここに来たのだ。


祖父は厳しい人だった。

ろくでなしの息子が、結婚に失敗し、借金をこさえ帰ってきたのだ。

もちろん怒りは常に満タンだった。

父だけでも、追い出してやろうと思っていたようだ。

しかし、祖母にとっては腐ってもかわいい息子。

穀潰しでも、家に置くことにした。

いつか、変わるはずと信じて。


祖父の怒りは、その子供である僕に向かった。

母と離れ悲しくて泣いていたら、投げ飛ばされた。


「ここが嫌なら、あの女のとこへ行け」


行けるなら行きたかった。

でも連絡先も、どこに行ったのかもわからない。

行きようがないのだ。


それに母は精神疾患があり、僕たちに手を上げたり、目の前で手首を切っていたりと、いい思い出だけではなかった。

本当は僕の家族でついていきたい人なんて誰もいない。


でもここにいれば、衣食住だけでなくおもちゃも買ってもらえる。

いい子でいなきゃ、じいちゃんに嫌われないようにしなきゃ。

僕は泣きながら、叫んだ。


「もうママに会いたいっていいませんから、いい子でいますからここに居させてください!」


これも記憶の中にある、大きな嘘の一つ。


僕が行きたい場所は、どこにもなかった。

でも逃げるすべも知らないから、嘘をついた。

嘘は僕の生きるすべになった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ