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初めての嘘
初めて大きな嘘をついたのは、10歳の誕生日。
家族が離れた時だ。
家族と言っても、父と母の離婚が決まり母と離れる日のこと。
この日は僕の誕生日だった。
最後の晩餐。
なんて言うとあれだが、僕の誕生日を祝うためカジュアルフレンチレストランで夕飯だった。
僕以外は、みんな葬式かと思うほど号泣。
いやいや、こっちは誕生日なんですが?
祝われてるのか、離れる家族を悲しんでるのか。
おい、父よ。
お前が働かずに借金こさえたせいだろう。
おい、母よ。
お前が若くしてこのろくでなしに捕まったせいだろう。
おい、妹よ。
…まあ、君は仕方ない。明日から母がいなくなるのは寂しいもんな。
でもこの日は、一生で一度の10歳の僕の誕生日だ。
泣くなよ、悲しむなよ。
僕だって、両親の勝手でこんな形になったのが憎いし、
母と離れるのは悲しい。
そして初めて大きな嘘をついた。
「泣いてても暗くなるから、みんなで笑って過ごそうよ!」
本当はすべて憎くて、悲しいと思ってたのに
笑顔で嘘を吐いた。
混乱しつつも、みんな笑顔でご飯を食べた。
この嘘は正義だ。
本音は隠して生きるものなのだ。
その思いが心に強く根付いた。