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第一曲 Part.7 休息

 ラグナは颯爽と黒いトレンチコートを脱ぐと、近くにあった浅い窪みに座り込んだ。レースのついた、だが女物には見えないブラウスにカーキ色の長ズボン。そんな姿で尻込みしている亜里沙に笑いかける。

「今日はここで野宿することにしましょう」

亜里沙は恐る恐ると言った感じで、ラグナから数歩離れたところに座った。ラグナの優しげな瞳が見辛くて、前だけを必死で見据えた。

 だって、夜だ。良い年した健全な男女が、人っ子一人いない荒涼とした山道のど真ん中で野宿だ。健全な女子高生としては、警戒しない方がおかしいだろう。ラグナは今の所とても穏やかで、ともすると紳士的な少年だが、やはり腐っても男。まちがいが起こらないという確証は持てない。

 そんな風に心配しながら肩を縮こまらせ、ちんまりと座っていると、ふと肩に温かみを感じた。目をやると、さっきまでラグナが羽織っていたコートだった。

怨霊(ベンジフール)対策です。保護色でよく見えなくなるでしょう?」

真っ白な、月明かりの下でも目立つブラウスを着ているラグナが笑う。亜里沙を少しでも安心させようと、精一杯の気遣いで。それは嬉しかったが、亜里沙は今度はラグナが心配になった。

「でも、これ私が着てたらラグナが・・・。私制服紺色だし、大丈夫だよ」

「どうぞお気遣い無く。僕は数時間ほど起きて見張りをしていますから。いざ怨霊(ベンジフール)が現れた時、目を僕の方に向けさせるためにも、そのコートは亜里沙さんが着ていて下さい」

笑顔の裏に隠された何かを感じて、亜里沙は小さく息を呑んだ。

「寝ないの?」

「そんなことはありません。数時間経ったら、交代して頂く予定です。それまでは亜里沙さんが休んでください」

そう言うと、ラグナは空を見上げた。小さな星が一つと、月しか掛かっていない寂しい空を。

今度は彼の右側に座っていたから、亜里沙はラグナの表情をまじまじと見ることが出来た。この空のようにどこか寂しげな、孤高の横顔。なぜか急に壁を感じ、亜里沙は慌ててコートを被って身を倒し、ラグナに背を向ける形で横になった。途端に眠気が襲い掛かる。気だるいその流れに身を任せ、亜里沙は瞼を閉じた。

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