第一曲 Part.2 銀髪の死神
「・・・死神?」
少女―佐伯亜里沙は思わず聞き返した。聞いたことが無いわけではなかったが、そういう非現実的なものは本や漫画の中でしか存在しないだろう。現実にいるはずがない。
だが、少年はこくりと頷いた。つまり、死神だと肯定した。
「あなたも幽霊でしょう?死神がいてもおかしくないじゃありませんか」
「あ・・・そっか」
確かに、と亜里沙は頷いた。生きている間は幽霊がいるなんて思えなかったが、現に自分が幽霊となってしまった今は、死神がいると言われても分かる気がする。
だが、もし本当に少年が死神だとしたら、自分はどうなるんだろう。昔読んだ漫画では、死神は魂を狩って食べて命を繋いでいるのではなかったか。となると、自分も食べられてしまうのではないだろうか。そこまで考えて、亜里沙は震え上がった。大人しそうな顔で微笑んでいる目の前の少年が、急に恐ろしい化け物に見えてくる。
「じゃあ、私を食べるの?」
少年は右目だけで亜里沙を見据えた。その動作すらも、亜里沙には肉食獣が草食動物を見るようにしか思えない。
少年は、全身全霊で恐怖を訴える亜里沙から一歩離れた。そして両手を少しだけ上げて、安心させるような素振りを見せた。
「死神とは、魂を狩るものではありません」
少年の落ち着いた声音に、亜里沙の瞳は恐怖から次第に疑問へと変わっていく。それは少年にとってはいつものことだった。
「死神の仕事をご説明しましょう。この世界の仕組みと共に」
これも全て、マニュアル通り。