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序曲 少年と少女
薄汚い部屋の中、小さな窓から差し込む一筋の光を頬に受けながら、少年がベッドに腰掛けていた。黒いトレンチコートに身を包む少年の銀色の癖の無い髪は、流れるように彼の左目を隠している。残った右目で、少年はベッドで死んだように眠っている少女を眺めていた。
温かな布団に包まっている少女の寝顔は可愛げがあって、見ていると癒された。だが、少年はもう行かなければならない。
「行ってくるね、スノウ」
声変わり前だが普通よりは数段低いいつものトーンで、少年は眠り姫に挨拶を告げた。名残惜しげにそっと少女の頬を手の甲で撫でてから、少年は重い腰を起こした。こつこつと落ち着いた足音を革靴で立てながら、彼はドアに向かい、そのまま部屋を出て行った。
この銀髪の少年が、この物語の主役です。少年の心情描写は最初の頃はあまり無いのですが・・・(汗)