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50話:若者の新しいネット画像配信の試行

 テレビ放送をインターネットで、そのまま流す、という大胆な行為を真っ先に行ったのは、広島県に住む、当時中学2年、14 歳の少年だった。最初の揺れから17分後の15時3分、「この画面をネットに流したら、助かる人がいるんじゃないか」と考えた。


 そして、自分のアイフォンで、テレビ画面を写して、ユーストリームに流し始めた。NHKから訴えられたらどうしようという事も考えたが、「東北には自分よりも不安を抱えた人がものすごい数いる」という思いに背中を押されて放送を行った。


 配信の話題は、ツイッターを通して、あっというまに広がっていった。配信に気づいたユーストリーム・アジアの担当者は迷った。少年が行ったのは、NHKの著作権を侵害した「違法配信」であり、普段は直ちに停止する内容だ。


 しかし、停電などでテレビを見られない人には貴重な情報源ではないかと考えた。出張中のユーストリーム・アジアの社長、中川具隆さんは、16 時頃「我々の判断で停止するのはやめておこう」と指示。NHKから要請があった場合のみ停止することにした。


 事態が変わったのは17時20分頃である。NHK広報部の公式ツイッター・アカウントが、他のツイッター・ユーザーからユーストリームでNHKが見られることを知らされたのだ。


 NHKツイッター「@NHK_PR」 は「情報感謝!」というメッセージを添えて、教えられたURLを自ら広げた。これは言ってみれば、事前許可なしで行われた配信にNHKの広報職員が同意を与えたようなもので、ここから情報拡散に一気に火がついた。


 18分後、他のユーザーからそんなことをして大丈夫かと問われた「@NHK_PR」は「私の独断なので、あとで責任は取ります」とも返している。彼も、テレビを見たくても見られない人がいるかもしれない、というニーズをわかっていたのだ。


 このNHK広報職員は、阪神大震災の被災者であり、地震の第一波が東京に届く前、2:47 頃の緊急地震速報以後、大津波警報など重要情報をつぶやきつづけていた。


 その後、18時になると、NHKは、少年によるNHK番組の配信をユーストリームに許諾、21時頃からは、NHK自身によるユーストリーム公式配信をスタートさせた。


 これと前後して、TBS、テレビ朝日、日本テレビ、フジテレビなどの民放も同様の配信を開始している。テレビ局による公式ライブ配信を最初に始めたのは、TBSだった。17:42 には、ユーストリームでCSのニュース番組「ニュースバード」を配信している。


 東日本大震災において、テレビ放送をインターネットで配信したのは、ユーストリームだけではなかった。ニコニコ生放送も、NHKとフジテレビの放送を始めた。そしてグーグルの運営するユーチューブでもTBSのニュースバードが流れた。


 ユーチューブ・ライブというライブストリーミングの仕組みを使い、TBSが番組の配信を開始したのだ。TBSとの折衝を担当したのはプロダクトマーケティングマネージャーだ。彼が、米国のグーグルに連絡しようと考えたが現地は深夜でできない。


そのためヨーロッパなどにもグーグルのオフィスがあり、優秀なエンジニアが点在している。

「ヨーロッパのエンジニアを当たり、イギリスのオフィスにいるライブ配信に詳しいエンジニアを捕まえることができた」


「しばらくは、どのフリーソフトが使えるとか、設定をどうしたら良いかといった事をチャットでこのエンジニアに質問した」

「それを電話でTBSの担当者に伝えた」


 こうして電話をつなぎっぱなしで作業をした結果、震災発生から9時間弱後、3月11日の 23時半頃に、ユーチューブ・ライブを使ったTBSニュース番組の配信が国内で初めて開始された。


「つながったと思ったら切れたりといったアクシデントもありましたが、TBSさんはとても協力的だった」

「非常にお忙しい中、ご担当の方に最初からご対応いただけた」

「毎回電話を掛け合うのではなく、1 時間以上電話をつなぎっぱなしで作業を進めました」と長谷川は振り返る。


「23時50分には、TBSニュース番組の配信についての告知が、グーグル公式ブログ日本版にも掲載された」

 日本国内からユーチューブを利用している場合、画面上部には 1行広告のティッカーが現れる様になっているが、ここでもTBSのニュースが視聴できる旨、案内が流れるようにした。


  ちなみに、Sさんが、技術的問題でエンジニアと連絡を取っている一方、Yさんもロンドンの社員と連絡を取っていた。相手は、グググル社内における法務関係のナンバー2のヨーロッパの法務部責任者だ。

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