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077 魔術の軍への潜入

 ライアスさんたちの元に戻った私は、ロンメル君の作るご飯を貪りながら事のあらましを伝えた。

 無茶のし過ぎだと怒られ、次からはもっとちゃんと吟味して全員で行動する事を厳命された。

 

 結果としては上々だったので、それくらいで解放してもらった。


 謁見自体ほぼ不可能な王に会えたのが信じられないとエメリッヒさんは驚いてたな。

 そのせいで、またあれが偽物なんじゃないかと不安に掻き立てられたけど、クラウンが大丈夫だろうと言うのでそれ以上は考えないことにした。


 戻ったその日は1日今後について話し合い、ヴォルドールを説得するにせよなんにせよ情報が足りないという事で向かう事に。

 エメリッヒさんには、私たちの行動を伝えてもらう役目をお願いしてお別れした。

 本当に戦争をやめる方向に動いてるかの確認までしたいけど、そんな時間は無い。

 そこはとりあえず信じるしかないかな。


 そして今、私たち3人と1羽は草むらに隠れているわけだけど……。


「ライアスさん、あれってなんですか……」


「ありゃあ――」


 ズシンズシンと、大きな足音がいくつも鳴り響く。

 少し距離はあるが、目の前に広がる光景はファンタジー全開のそれだった。


「――ゴーレムだな。随分と不格好だが大きさは十分。中隊規模で言うなら数もかなり揃ってる。どうやらヴォルドールの連中も仕掛けるつもりだったみたいだな嬢ちゃん」


 全く、こっちもこっちで戦力の大規模投入って。

 こんな上手くタイミングがかち合うもんなのかな……。


 妙な違和感をただの偶然だと切り捨てて、ひとまずはゴーレムの行進を見守る。

 ヴォルドール近郊の森に囲まれたここで、目算10程度の石の巨人が整然と歩き続けている。

 大きさは5メートルほどで、全体的に太目。

 体を構成する石は粗悪品なのか、大きなひび割れが遠目に分かるほど目立つ。


 制御のためか3人ほどの魔術師っぽい人たちがそれぞれに追従して歩いている。

 更には魔術兵。いや、魔装兵って言うんだっけか。

 魔術が付与された武具を装備した兵たちが、その更に後ろを付いていくように歩いている。


 ゴーレム10、魔術師100、魔装兵200な感じ。

 でもそれは今見えている部分だけでの話、間を開けて後続が来ているが見える。

 それも同じような編成のものがいくつも。


「さて、ローズ。ひとまず手筈通りに行くぞ。準備は良いか?」


「……うん」




 

「た、助けてくれえええ!」


「わあああああ!」


 哀れな冒険者がふたり、ヴォルドールの軍勢に助けを求めている。

 それもそのはず。

 後ろにはなんと、それはそれは凶悪で有名なあの傭兵団。


「こ、黒寂だ! 黒寂が出たアアア!」


「わあああああ!」


 そう、黒寂の一員と思われる殺戮者がいたからだ。

 助けを求め泣き叫ぶ男の声に、魔装兵や魔術師たちに動揺が広がっていく。

 皆一様にどうする? どうしたらいい? と慌てふためくばかり。


 ほどなくして姿を現したのは、大量の武器を携えた仮面の女。

 オーラのような黒い影を纏い、不気味な殺気を放っている。


 女が手を翳した瞬間、放たれた矢が石の巨人たちを穿ち穴だらけにしていった。

 その攻撃力に恐れをなしたのか、黒寂の名に臆したのか。

 兵たちは皆一目散に逃げていくではないか。


 ああ、なんとも無様な姿である。

 これが国の平和を守る兵の姿なのだろうか。

 嘆かわしい。ああ、なんとも嘆かわしい。


 逃げ惑う姿は後続の軍にも影響を及ぼし、次々と後退していく。

 大群が逃げていると自分も逃げなくてはならないという心理が働くのだというが、それにしたって情けない。



 というシナリオは概ね順調に進み、助けを求める役のライアスさんはそのまま軍の中へ潜入、ロンメル君は置いて行かれる。

 潜入したライアスさんは情報と信用を手に入れて内部から。

 私は外部からの圧力で牽制する。

 ロンメル君は野宿時の私のご飯当番。


 そういう予定のはずだった。

 

 終始「わあああああ!」しか言ってなかったロンメル君の姿が見当たらない。

 その場に残った人間と言えば、ある部分を強打した様子で悶絶しながら倒れていたライアスさんと私だけ。


 ライアスさんって、ギルドで1番偉い上にそれなりに高名な冒険者って自分で言ってなかったっけ。

 残るべき人がいなくて、潜入すべき人がいるんだけど……。


「あるぇー……?」


 




 ◆◆




  


「わあああああ!」


「あ、暴れるな少年! 一緒にいた彼は残念だが、君だけでも助けるから安心しろ!」


「わ、わあああああ!?」


「大丈夫だ! 既にかなり距離を離してある! 追ってきている様子も無い! おい! お前はこの事をラピド様に伝えてこい!」

  

 し、しまったああああ!

 逃げ遅れるはずが救出されてしまったあああ!

 おどどどどどうしようううう!


「まずいぞ! 少年の顔が青ざめていく!」


「ああ怖かった! 怖かったなぁ! おじさんも正直怖かった! だか大丈夫だ! 恐怖からは脱したんだ!」


 この人たち魔術師じゃないの!?

 熱い漢(おとこ)って感じがする上に良い人たちに見えるんだけど!

 いやそれどころじゃない!

 逃げ出さなきゃな!


「暴れるな少年! 大丈夫だ! もう大丈夫だから!」


 ち、力が強いぃ……。

 無駄にムッキムキなんだけどこの人ォォ……。


 ああ、どうしよう逃げられない……。

 このまま正体がバレれば殺されちゃうのかなぁ僕……。


 ああああ、助けてライアスさん……!

 ローズさああああん!!

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■ 本小説の世界の中で、別の時代の冒険を短編小説にしました。
『最果ての辺獄』

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