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006 特訓開始!

「おい、もう一回やってみろ」

「は、はい!」


 クライムに命じられるまま、ナイフを振りながら途中で剣に変える。


「……」

「あ、あの……」

「少し待て、考えてる……」


 依頼の達成報告の際に、このスキルについてザミさんに話したらギルド長のクライムさんに呼び出されてしまった。

 そんで目の前で実演しろって怖い顔で迫ってくる……。

 宿代とかその他諸々の工面をしてくれてる人だし、断るつもりはないんだけどもう少し優しくてもいいんじゃない?


「ローズ、これも霊装化できるか試してみろ」


 剣を数本渡された。

 訓練用の剣にお試し用の剣、それと普通のアイアンソードっぽいものが数本。


 どれも問題なく霊装化することができた。


「どれでもいい。1本俺に渡せ」

「あ、はい……」


 アイアンソードを具象化し、クライムに渡す。

 すると剣を持って離れていく。


「その場でこれを霊装化できるか?」

「え……? やってみます」


 霊装化しろ霊装化しろ霊装化しろ。 

 どれだけ念じても剣は消えない。


「ここならどうだ?」


 すぐ傍まで戻ってきたクライムが、私の手がギリギリ届かない位置に剣を掲げる。


 霊装化しろ!


 剣は粒子を放ちながら消えていく。


「じゃあ同じ位置でこれだ」


 別の剣を同じ位置に掲げる。

 だが今度は霊装化できなかった。


「ふむ……」


 クライムはこの事象を目の当たりにし、その有用性について考え始めた。


 一度目の霊装化自体は触れていなければできないようだが、一度でもしてしまえば触れていなくても霊装化が可能。

 見たところ個数上限はそれなりに大きく設定されているか、もしくは上限がないか。

 現状、刀剣類以外はできないようだが、装備の適性はワンランク程度なら鍛錬次第で変動する。

 そう考えれば、全てがB適性のこいつは、いずれ全種の武器を霊装化可能になるのか……。


 戦闘面でも優秀だな。いや優秀過ぎる。

 突然目の前でリーチが変わる。

 斬撃を防ぐはずが突如鈍器系統に切り替わる。

 それだけでも攻撃面においては凄まじい汎用性がある……。


 極めつけは触れていれば霊装化できることだな。

 近接戦闘時に相手の武器に触れてさえしまえば、即座に武器を奪える……。

 これが防具にも適用されるのだとすれば、どれだけ頑丈な装備もこいつの前では意味が無い。


 考えれば考えるほど凶悪なスキルだな。

 まともにやり合えるのは地力の強い奴か、格闘主体もしくは杖無しで魔術を行使できる奴くらい。


 やべーのはスライムの方だと思ってたが、ひょっとするとこいつの方がやばいのかもしれねぇな……。


 あいつら、なんちゅうガキを作りやがるんだ……。


 まぁでも、それを俺が育てられるんなら、これも僥倖か。

 どうなっちまうのか、正直見てみたくてしょうがねぇなぁ……!


「おいローズ」

「は、はい!」


 クライムさんが笑……嗤ってる……!

 こんなに邪悪な嗤い方なの!?

 

「お前のプレートは今ザミの奴が預かってたな? 名前を彫るんだろう?」

「あ、はい。依頼をふたつ達成したので、これで正式にギルドの冒険者になれます!」


「それなんだがな、彫金師の都合で1週間くらいかかる。その間プレートが無いお前は依頼を受けることができん」

「え!?」


「だが心配しなくていい。その間はここで俺と特訓だ。嬉しいだろう?」


 普通に嬉しくない!

 1週間もこの人と一緒にいろってこと!?

 怖いんだけど!


「なんだ、乗り気じゃないのか? じゃあそうだな。ベッドが硬いとかボヤいてたらしいな? 1週間特訓を受けるなら、特別にスプリング製のベッドに取り換えてやる」


 なんですって!?

 スプリング製のベッド……!

 毛布を重ねただけでは得られない安定した柔らかさ、この世界ではかなりの高級品。

 いずれ手に入れる予定だったけど、ここで貰えるならぜひ欲しい……!

 でも、特訓って何するの!?


「うぐ……!」


「……足りないか、ならバジリスクの羽毛で作られた布団に、魔術付与の施された毛布もやろう」

「ま、枕は……」

「スライムの柔らかさを再現したというゼリークッションを付けよう」


「私! 特訓します!」

「よぉおし! じゃあ30分後から特訓だぁ! 今言った物はすぐ手配しておくから部屋を片付けてこい!」


「いえっさー!」


 つい物欲に負けて受けてしまった。

 だけど特訓なんだから損はないよね?

 

 それに寝具類が充実するなら安いものよ!

 

 早速部屋を片付けに……ハっ!

 下着が脱ぎっぱなしだったかも!


 急げ……!

 急げ私……!



「支部長、随分と目を掛けますね」

「ああ? なんだザミ、いたのか。ありゃあ金の卵どころじゃねぇかもしれねぇぞ」

「そんなこと言って、無茶したらルシアさんが飛んできますよ? 最近ギルドの周りを飛んでる鳥、あれ絶対ルシアさんのですよね」

「……だろうな。だから地下のここにいるんだよ俺は。それよりも、さっき言った寝具類、手配頼むぞ。しっかり休める環境がないと体がもたねぇからなぁ」

「承知しました……」





 ◆






「よーし、準備はいいなぁローズぅ……」


 口から邪悪な気が漏れ出ている気がする。


「は、はい……」

「まず、お前のスキルに関する俺の考察内容を説明する」


 クライムは、先刻至った『適性武具霊装化』に関する使用例を簡潔に説明してくれた。


「え……、そんなにすごいの……」

「ああ、すごい。お前のスキルは適性も相まってかなりの多様性を秘めている。だがそれもちゃんと考えて使わねぇと宝の持ち腐れだ。そこで俺がピッカピカに磨いてやろうって話だ……。どうだ? 感謝したくなってきただろう」


 寝具類に関しては超感謝してます。


「で、特訓の内容だがな。とりあえず他の装備適性を上げることに専念する。そしてとにかく霊装化を繰り返して限界を探る」

「は、はぁ……」


「そのための特訓の内容は実にシンプルだ。良かったな、頭は何も使わない」


 クライムの顔がどんどん妖しくなっていく。


「各種武器を毎日1000本素振りだ! 刀剣類は既にクリアしているので除く! その他武器類も詳細が分からんから省く! 残るは5種類だ!」

 

 え……?

 じゃあ1日5000回も武器を振れってこと?

 思ったよりもハードなんですけど。

 12歳の女の子なんですけど私。


「安心しろぉ……武器は全部こっちで用意しておいたぁアハハハハハハ」


 え、マジなの?


「それと防具に関しては適性の上げ方は分かってねぇ。だが、装備していればそのうち上がるだろう。ということで素振りの間は鎧を着てもらうぞぉ! 終わった時には体も仕上がってるはずだぁ……。ああ、なんて完璧な特訓内容なんだろうなぁアアハハハハハハハハハハ!!」


 く、狂っていらっしゃる!

 これは逃げないと死んじゃうやつでは!?

 仮にやり遂げたとしても、その時には筋肉ムキムキのマッチョマンもといマッチョウーマンになってしまうのでは!?


「す、すみません。やっぱり用事があったのでこの話は無かったということに……」


「では始めるぅう!!」



 あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!

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■ 本小説の世界の中で、別の時代の冒険を短編小説にしました。
最果ての辺獄

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