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064 護衛依頼再び

 ――エメロード王国、王城にある宰相執務室。


「首尾はどうか」


 身なりの整った知的な顔の男性が、傍らで跪く男に言い放つ。

 跪いている男はそれに対して、


「レグレス制圧の5千。イシュバル制圧の2万。いつでも進軍可能です」


 と俯いたまま答えた。


「……誰が軍を編成しろと言った。我々はあくまでも救援という形で他国に介入するのだ。戦争は最終手段であり、最終段階だと言ったはずだぞ」


「その最終手段も、準備だけはしておかねば意味が無いかと……」


「今は必要ない、すぐに解散させろ。それよりも使者だ。送った使者はどうなっている」


「イシュバルからの回答は、『不要』のひと言です。レグレスには既に国としての機能はなく、使者の意味はありませんでした」


「そうか……。ではレグレスへ向かう。すぐにでもエメロードに帰属させられそうだな。支度をさせろディートハルト」


 窓から入り込む日差しが、ディートハルトと呼ばれた男を照らしている。

 他の光源が無いのか、部屋の中は異様に暗い。


「仰せのままに……」


 了承の言葉を口にしながら、下を向いたままニタリと嗤う。

 その顔は逆光で陰り見えないが、瞳と口だけが妖しく光っていた。

 

 




 ◆






「くあぁ……ぁ……」


 カーテンの隙間から覗いてくる日差しが眩しい。

 日当たりがいい部屋というのは寝坊しなくて済む。

 なんたって眩しいから。


 まぁ、寝坊しても誰にも怒られないんだけど。


 起き抜けに頭の中でひとり会話を繰り広げ、下着だけの姿でダリアの中から這い出る。


「う……ねむ……ちょっと早かったかな……」


 まぁでも、今後の進退を考えなきゃいけないしね。

 時間に余裕があると思うのもまずい。


 今日中に何かしらの方針は決めなくては。



 身支度を整えて宿を出る。

 外には何やら人だかりが出来ていた。


「腕に覚えのある奴は募集中だよー! 大規模商隊の護衛依頼だー! ひとり銀貨3枚! 大物を討ち取った奴には大銀貨1枚だー!」


 大声で人を募る商人らしき人。

 どうやら人だかりの原因はあれだな。


「護衛かぁ……」


 正直、護衛にはいい思い出がない。

 初のパーティクエストの失敗談しかないしね……。


「よお、また会ったな! スラ坊もな!」


「あ、おはようございますライアスさん」

「ピピ!」


 昨日とは違い、軽装ながらに鎧を着こんでいる。

 腰に携えた剣は拵えが立派だ。


「お前さんもあれに参加するつもりか?」


「え、あー。今見掛けたばかりなので、何から何を守るのか詳細を知りません」


「じゃあ俺が教えてやろう」


 うっ……!

 情報料取られる……!


「はは! 安心しろ! タダだタダ!」


「そ、そういう事なら……」


 歩きつつライアスさんは説明してくれた。

 途中、何かを食べながら。


「あれはエメロードに移動しようとする商人たちの合同依頼だ。商人皆で金を出し合って護衛を雇おうとしてんのさ。途中に出てくる大型の虫とやらに遭遇する可能性は上がるだろうが、護衛でもなんでも、盾になってる奴がやられてるうちに抜けちまおうって事だろうな。遭遇するかしないかの大博打を打たないってのは商人らしいがなぁ」


「自分の住んでる国からそんなに出ていきたいものなんですかね……」


 私なら、生まれ故郷から出ていくなんて嫌だな。

 こういう旅とか冒険は別。


「ほとんどは残ってるさ。それでも、出ていきたい奴はいる。今はまだいいだろうが、そのうちにどんどん治安は悪くなってくだろうしな。そうなった時真っ先に狙われるのが商人だ。養うべき家族だっている。先の事を考えたら不安なんだろうよ……」


 その気持ちも分からなくはない。

 でもなんか、複雑だ。


「で、護衛依頼の詳細だがな。依頼主にあたる商人が23人。護衛対象の荷馬車が36台。それと人が乗る用の馬車が4台。募集する護衛の最低人数が50人。俺が聞いた時には既に30人以上が名乗りを上げてたぞ。ちなみにほとんどがダンダルシアの冒険者で、チラホラ赤プレートが混ざってる。大半は青だがな。生憎と知り合いはいなかった」


 私と同じ国の冒険者。

 でも私も知った顔を見ていない。

 きっと別の街とかの冒険者なのだろう。


 そしてプレートから分かる通り、私よりもランクの高い冒険者がいる。

 心強いのと同時に、隣で喋る男性のランクが気になった。


 冒険者だと言う割にプレートらしきものを持っていない。

 それに、今こうして青プレートの私と喋っているよりも赤プレートの冒険者と仲良くなっておいた方がいいんじゃない?


「あの、ライアスさんは……」


「んあー、俺の冒険者ランクの事だろ。はは、長旅の間にプレートは無くしちまってねぇ。一応これでも赤プレート冒険者だ。腕っぷしは保障するぜぇ?」


 赤なんだ。

 てっきり黒プレートだと思ってた。

 まぁ戦闘力とランクは必ずしも一致するものでもないか。


「他の赤プレートの方々と交流しなくていいんですか? 私青プレートですよ?」


「大丈夫大丈夫。もう大体の奴とは会話したよ。んで、そんなかで1番強そうな奴を今ナンパしてるわけよ」


「あはは、またまた~。そんな事ないですよ~」


 この人、そういうのを見抜く事が出来るの?

 本当にそうなのかは分からないけど、1番強いと言われて悪い気はしない。


「いいや、間違いなくお前さんが1番強い。とぼけた面してるが俺の目は誤魔化せないぜ。スラ坊」


「えへへ~……。へ?」


「こうしている間にも伝わってくる鋭利な闘気。間近に立って初めて感じる膨大な魔力。昨日見た時から思ってたが、ただのスライムじゃねーんだろ?」


 わ、私じゃなかったー!

 危ない!

 勘違い発言で赤っ恥かくとこだった!


「ピピ~」


 クッ……!

 肩越しにダリアから勝ち誇った感情が伝わってくる……!

 初々しく照れたフリしながら……!


 お、おのれ……まん丸可愛いマスコットめ!


「で、どうする? あの依頼受けねーのか? エメロードに行くなら絶好の機会だと思うぜ。俺も行ってみてーしな」


「あ、あ~……えーと。なんでエメロードなんだろうって思ってまして……。イシュバルに行かないのはなんでなのかなーって」


「そりゃあ行けねぇからだよ。イシュバルから出る分にはこっちに来れるが、レグレスからの入国は認められてねぇんだ。一応敵対関係だからな」


 レグレス側は受け入れてくれるけど、イシュバル側は受け入れてくれないって?

 なんか変な温度差を感じる。

 まぁ、戦争してる相手国からの入国者とか普通に受け入れないよね。


「なんかおかしな話ですね。敵対してる状態でも入国を認めるなんて」


「そこはまぁ、レグレスは慢性的に人不足だからな。物資はダンダルシアから賄えても、人材まではそうはいかんのだろうよ。詳しくは知らねぇけどな」


 現状この国から移動できるのはダンダルシア、イシュバル、エメロードのどれか。

 ダンダルシアへの道が閉ざされた今、ここから移動しようと思ったらエメロードに行くしかないのか。

 

 ライアスさんは、口ぶりからするにイシュバルから来たんだろう。

 エメロードには行った事がなさそうな発言があったし、今はダンダルシアへの帰路だって昨日言ってた。


「エメロードまではどれくらいかかるんですか?」


「んー。普通なら10日もあれば着くだろうが、大所帯だからなぁ。半月か、20日程度みておいた方がいいだろうな」


 けっこうかかるんだなぁ。

 その間にダンダルシアに行けるようになるんじゃないかなぁ。

 それに大陸中央じゃダンジョンの入口も無いし……。


「ピピ!」


 え、うーん。

 まぁ他にやる事もないし……。

 早めにここを出ないといけないし……。


 じゃあそうしよっか。

 ピ~!


「分かりました。私も護衛に参加したいと思います」


「おう! じゃあ俺の分と一緒に登録してくるぜ! 待ってな!」


 嬉しそうに駆けだしていくライアスさんの背中は、とても無邪気に見えた。

 大きな体で、なんとも言えない子供っぽさを端々に感じる。


「ま、観光しに行くと思えばいいよね」

「ピ~」


 この時、私は何故か失念していた。

 この国を占領しに他国が来るという話。

 状況的に考えて、占領しに来る国というのが、エメロードしかないという事を。

編集時に間違えて先の話で改稿してしまったため、再度本来の話に修正しました。

ご迷惑をおかけして申し訳ありません。

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■ 本小説の世界の中で、別の時代の冒険を短編小説にしました。
最果ての辺獄

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