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055 新たな武器

 イヴァンお爺ちゃんの家で休ませてもらって1日。


 予想していなかった来客が来た。


「お初に御目にかかります」

「どうも初めまして~」


「あ、どうも……」


 まず最初に礼儀正しそうな好青年。

 まるで絵本から飛び出してきたかのような、いかにもな恰好のこの人。


 弓のブロックマスター、ロウル・ビスケットさん。


 見た目でロ○ン・フッドかよって思った。


 次に、控え目な露出の割に色気が凄い女性。

 そういった趣向のお店にいそうなこの人。


 鞭のブロックマスター、エナ・ファムルダットさん。


 お姉ちゃんがなりたいのはこういう人なのでは、と一瞬脳裏をよぎる。


 何故このふたりがここにいるのかを説明しよう。

 まず、消滅したはずのふたりが生きている理由だけど、これは単純だった。

 破壊された(した)ブロックコアはあくまでも区画とマスターを繋ぎ止めるものらしく、実体が無事ならマスター再利用が可能なんだとか。

 ジャガーノートに丸々捕食された槍のブロックマスターはダメだったみたいだけど……。


 そして、新たな区画の管理を与えようにもあれが徘徊している以上は同じことになるという事で、私の元へ行けと言われたそう。


 何のためにって?


 勿論! 私への指南のためだよ!


 アル君気が利くー!

 フゥー!

 

 本当は、フィオさんを追いかけようかとも思ったんだけど、無事なら無事で会った時どうすればいいかが分かんなかった。


 私がここに到達するまで、時間にして10時間程度だったと思う。

 そんな短時間で中層に上がっているのだとすれば、今の私じゃ到底追いつけない。

 体中を寄生されていたけど、あれは大丈夫なんだろうか……。

 虫下しでなんとかなるレべルなんだろうか……。


 心配すればいくらでも要素は出てくるけど、追いつけないし……。

 会わないための理由を探してるみたいだな……。


 まぁそんなこんなで、とりあえずはふたりのブロックマスターさんに指南を受ける事にしました。


「ん~。鞭はもう少し体が動くようになってからがいいかしらね?」

「弓だって同じですよ。イヴァンさんはどうでしょう」

「あーダメダメ。ジャガーノートが怖くてあそこから動けないのよあの爺さん」


 ブロックコアを自分で壊したのってお姉さんですよね?


「あらやだ~。アタシが怖気づいて自分でコアを壊したんでしょって顔してる~。その通りよ! 怖すぎよあれ! 気持ち悪いし! 無理よあんなの!」

「私は自分で砕いてませんよ……」


 まぁ、戦いたくないのは分かる。

 1度だけすれ違ったあれ。


 あの時の嫌悪感と威圧感は、今思い出そうとしても寒気がする。


「まぁとりあえず、体が動くようになるまで知識だけでも上達させましょうか」


「は、はい! よろしくお願いします!」

「ピピィ!」



 それから3日間。

 私は座学に勤しんだ。


 弓はおおまかに短弓と長弓に分けられるそうだ。

 厳密に言えば合成弓がどうの複合弓がどうのと言われたがよく分からなかった。


 なので覚えたのは大まかな2種。


 ――短弓。


 その名の通り小さく短い弓の事を主に言う。

 最大の特徴はその連射性能。

 次いで大きな腕力を必要とせず、予備動作の少なさで隙が少ない。


 短所としては射程距離の短さが挙げられるが、自身の機動力で補えば中距離での戦闘で大きな火力となる。


 ――長弓。


 基本的に大きく長い弓の事だと思えばいいらしい。

 引くのに大きな力が必要だが、物によっては引き方次第で腕力はそこまで必要ないとか。


 最大の特徴は射程距離の長さ。

 かと思ったらその威力にあった。


 木製の盾であれば3枚だろうが易々と貫ける上、生身に直撃すれば粉みじんに吹き飛ぶという。

 短弓ほど連射できるものではないが、一矢でふたり以上を射抜く技量があれば問題ないとロウルさんは語る。


 出来るわけない……。


 そして歴史。


 ロウルさんの話では、どれだけ強くてもひとりで1000人2000人を相手に戦い続けるなど不可能。

 本当の意味での一騎当千は、弓でのみ実現した。


 との事。


 なんとなく、私のいた世界なら分かる話だったけど、魔術とかが存在するこの世界ではどうなんだろう……。

 まぁでも語ってるロウルさんは気分が良さそうなので黙っておきます。


 次の座学は鞭。


 ひと言に鞭と言っても、その形状は様々。

 柄に9つ以上の革紐が取りついた拷問用の物や、木や金属などいろいろな材質、長さで出来た鉄鞭、そして硬鞭。


 基本、棒状の物が多く、先端に革紐を付けたりしているものを指すらしい。


 でも今回、エナさんが教えてくれる鞭には、棒の部分などなかった。


 鞭としての形状を取っていなければ使えない?

 それはただの未熟者。 

 手に取った紐類を全て鞭とする。

 それが出来なくて何が鞭使いか。


 との事。


 聞きながら、それってもはや鞭ではないのでは? 

 ロープ使いなのでは?

 と思ったけど、口に出すのはやめた。


 私が腰に巻き付けて鞭のように使っている事を伝えると、


「なにそれ! 斬新すぎ! お姉さんちょっと考えちゃう!」


 と、言いながら腰での使い方を考えてくれるそう。

 

 鞭の長所とか、短所とか、戦闘での使い勝手とか。

 まだそういうの聞けてないけど、後でいいか。


 その後は弓について色々と聞いた。


 体に取りつけておいてワンアクションで使えるようにしておくとか。

 矢ではなく、弓そのものを武器にする場合とか。


 話を聞いていると、上機嫌なロウルさんがポロっと零した。


「早いとこウェポンマスターになって、あのバケモノを倒してください!」


 こんな小さな少女に何を期待しているんでしょう。

 仔細を聞けば、ダンジョンマスターの案なんだって。


 あの野郎……!


 あんなバケモノと戦えるわけないでしょ!

 素直に英雄呼んでなんとかしてもらうよ!


 とまぁ、少し至れり尽くせりな感の理由も分かり、漸くまともに動けるようになった頃。


「では、始めましょうか」

 

 まずは弓の打ち方を習う。

 難しそうだなぁと思ってたけど、割とポンポコ打てた。

 武器適性のおかげかな?


 短弓も長弓もそれほど苦労しなかった。

 まぁ、長弓の方は引くのにすごい力がいるから、そうそう何度も引けなかったけど。


 それから2日間、弓を引き続けたおかげか、かなり上達したと思う。

 狙った的に寸分違わず当てられた時の爽快感が正直やばいです。


 なにこれ超たのしい。


「では、次は動きながらやってみましょうか」


 よしこい。

 こんな楽しいならいくらでもやれちゃう気がする。


 

 ――10分後。



 はいダメでした。

 全然当たりません。


 動きながらだと弓自体が上手く引けない……。


「はは、上半身がブレないように動く必要がありますからね。しばらく走り込みでもしましょうか」


「え!?」


 まじか……。

 目的もなく走るって行為は嫌いなんですけど。

 マラソンとか大嫌いでした。


「ただ走るだけじゃないですよ。とりあえず、頭の高さを変えないよう意識して走りましょう」


「は、はい……」


 頭の高さを?

 そんなの簡単なんじゃ。



 ――10分後。


    

 はいダメでした。

 なにこれ超疲れる……。


 変に意識しちゃっておかしな動きになってた気がする……。


「まぁ、これもそのうち体が慣れてきますよ」

 

 そんなもんだろうか。

 これはなんかダメなような……。



 ――それから2日。



 出来たぜ! (ドヤ顔)


「随分と様になりましたね……。重心もブレなくなってきている。では試してみましょうか」


「はい!」


 走り回りながら弓を引き、矢を射る。

 

 スパァンっと綺麗な音が響き、木に描いた的へと見事に命中。

 そのまま走りながら5矢。


 的の中央とまではいかなかったけど、全て的に当たった!

 

 なにこれ超うれしい。


「すごいですね……こんな短期間で全て命中させるなんて……。どうです? 走りやすかったんじゃないですか?」


「あ、はい……なんかこう、黙って立ってるのと変わらないような感じで出来た気がします」


「走る際に緩急を付けたり重心を移動させる事で距離の錯覚を作ったりと、それはそれで技術のひとつではありますが、重心を一点から動かさない事による安定性も重要ですからね」


 ほぁー。

 なんか色々と応用が利きそう。

 重心ね。

 ちょっと今度から意識してみよう。


「エナさんがまだ試行錯誤してるようなので、模擬戦でもしましょうか。短弓で」


「え?」


 模擬戦……?

 弓で……?


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■ 本小説の世界の中で、別の時代の冒険を短編小説にしました。
最果ての辺獄

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