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045 解散

「そういえば、戦争が長引いてる原因って話でしたけど、どういう意味なんですか?」

「ああ、それは扱いきれないからですね」


 扱いきれないからって、それがどう関係してくるの?


「雇う側にも損害が出る可能性が高い傭兵団ですからね、次第に誰も雇わなくなって今では仕事が無くて盗賊まがいの事ばっかりしてるらしいんですよ」


 んー?

 いやだからそれがどうして……。


「極力雇いたくはないけれど、エメロードの王女みたいに崖っぷちならどうすると思います?」

「あ……」


「そう、追い詰められた側が雇い出す可能性があるんです。だから短時間で完全に滅ぼせる場合以外は、様子見が常になってるってわけですね」


 味方に付けた方が勝つ。

 しかし、誰も扱いきれず味方に付けようと積極的に動かない。


 でも自国が滅ぼされる寸前なら?


 国をひとつ滅ぼそうと思ったらどうしても時間がかかる。

 その間に、なりふり構わず黒寂を呼ばれたらどうなるか。


 滅ぶ寸前の国に協力するなど通常ありえないだろうけど、エメロードの件のせいで黒寂だけは例外。

 もしも黒寂に来られたら甚大な被害は回避できない。


 そのために、中途半端な小競り合いが続くだけになっているって事。

 それが戦争の縮小化、長期化を引き起こしている。


 そこに住む人々にとって、いい事なのかどうかはさておき。



「なるほど……」


 ザトラスさんの説明は分かりやすいなぁ。

 それに淡々と説明するだけじゃなくて、こっちが考えるように仕向けてくる。

 いい先生になりそう。


 そういや教育機関とかないのかな。

 

「一応依頼は完了という事になりますが、皆さんはこの後どうされますか?」

「明日以降の話ですな?」


「そうですね」


 明日以降かぁ。

 のんびり冒険者稼業に精を出すつもりでいたけど……。


「拙僧らは、ヘイルヘイムに戻って別の依頼を探しますぞ。待ち人が来るかもしれませんからな……」


「……そうですか。私はこのままカルカスに残ります。例の調査にも多少協力したいですし。ローズさんはどうされますか?」


「私は……」





 ◆





「……」


 賑やかな喧噪などどこにも存在しない、くたびれた夜の城下町。

 ここはダンダルシアの横に位置するレグレス共和国。


 戦争行為を否としながらも、攻めてくる周辺各国への対応に追われ、国は疲弊し続けていた。

 そんな国を支えていたのは、国交が根深いダンダルシアからの支援。


 その支援があるからこそ、今日までなんとか存続していると言ってもいいだろう。

 勿論、この国が防波堤になっているからこそ、ダンダルシアが平和だというのも忘れてはいけない。


 ふたつの国は共生関係にあった。



「すみません、水をいただけますか」

「あー? エールかなんか頼んでくれや。ここは酒場だぜ兄ちゃん」


「ではエールと何か、適当に摘まめるものを」


「おお、話が分かるねぇ! 旅人さんかい?」

「ええ、そんなところです」


「なんだってこんな国に来たんだ? 寂れた国だろう? 見るものなんざ何もないぞ?」

「そんな事はありませんよ。どれも目には新鮮な物ばかりでした。それに、あれもありますしね」


「ああ、もしかして冒険者ってやつかい」

「……そう見えますか?」


「……まぁなんだ。入るのはいいが、出るときは気を付けな。ダンジョンで得たものはただでさえ3割が国に持ってかれるってのに、更には追剥が出るって話だ」

「気を付けます……」


「ほらよ、先にエールだ」

「どうも……」


 青い髪の青年は、目の前の酒をゆっくりと飲み始める。

 

「よければダンジョンについて教えていただけませんか?」

「あー教えてやってもいいんだがなぁ。おっとすまねぇ。紙が落ちちまった」


 紙には、『当店オススメ! ファンゴの骨付き肉!』と書かれてある。


「じゃあ、これもください……」

「毎度ぉ! で、何が聞きたいよ?」


「……。分かっているだけで構いませんので、ダンジョンに出現する魔物の種類や、その戦闘方法。それと……――」


 客のいない酒場で、上機嫌で話す店主の声が響く。

 青年は、ことあるごとに注文を促され、食べきれないであろう量の料理に囲まれたまま、店主の話に耳を傾け続けた。


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■ 本小説の世界の中で、別の時代の冒険を短編小説にしました。
最果ての辺獄

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