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036 犠牲になった英雄達

 お昼ごろには、話し合いも終わり解散の運びとなった。

 ゲイルさんとミランダさんは用事があるとかですぐ行ってしまった。

 用事があるのに呑んでたのか……。


 そして私は。


「ローズさん、ちょっといいですか?」

「え、はい」


 付いてきて欲しい場所がある。

 そう言われ、私は黙ってザトラスさんの後を付いて行く。

 

 どこに行くんだろう。

 まさか何かヤラシイ事でもする気では……!

 まだ12歳の幼女ですよ!

 犯罪ですよ!




「着きましたよ」

「ここって……」


 歩いて10数分。

 街を出て、到着したのは見晴らしいのいい丘の上。

 そこには沢山の墓石らしいものが並んでいる。


「ここから、ここまで。今回の騒動で亡くなった冒険者たちの墓石です。もっとも、体は埋まっていませんがね」


 今回の……騒動で……。


「も、もしかして……。これって私のせいで……!」

「いいえ、違いますよ。あなたを助けるために死んだわけではありません。ダンジョンの異変が、地上に影響を及ぼすのを食い止めるため戦った末のものです」


 地上へと向かった魔物を食い止めるために……?


「この墓石は、別次元の魔物に挑んだ友人のもの。この墓石は、2度目の地震で崩落に巻き込まれた友人のもの。ふたりとも、良き友人でした」


 そう言いながら石に手を置くザトラスさんの顔は、少し悲し気に見えた。


「誰のせい、というものではありませんよ。だからあなたが気に病む必要もありません。ですが、この街を救った英雄はあなただけでは無かったという事を、同じ冒険者であるあなたも知っておくべきだと、知っておいて欲しいと。そう思いまして」


「……はい」


 もし、あの時私がブロックマスターになっていれば。

 この人たちは死なずに済んだのかもしれない。


 そんな事が頭の中を駆け巡る。


 私は、墓石の前で手を合わせた。


「それはなにを?」

「あ、これは、死者を弔う作法のようなもので……」

「そんな作法が……。では私にも真似させてください」


 ザトラスさんは目を瞑り、両手を合わせ亡骸の無い墓石に弔いを向ける。

 数多く立ち並ぶ墓石を前に、私たちはしばらくの間、黙とうを捧げ続けた。





「ザトラスさん、連れてきてくれてありがとうございました」

「いえ、そう言っていただけると私も嬉しいです。案内してよかったですよ。それでは戻りましょうか」





 ◆ 




「では、私はこれで。明後日にまたお会いしましょうローズさん」

「はい! ありがとうございました!」


 ザトラスさんと別れ、戻って来たギルドでクライムさんを探す。

 

「すみません、クライムさんに会いたいんですけど……」

「あのハゲに用事? ローズちゃんならそのまま部屋まで行っちゃって大丈夫よー」

「わ、分かりました。ありがとうございます」


 なんか公然とハゲ呼ばわりしてる。

 バレたら怒られるのでは……!


 ギルド長の部屋の前に立ち、扉をノックする。

 中からクライムさんの不愛想な声で入室の許可が出る。


「失礼します」

「あ? なんだローズか。どうした? 鑑定なら少し待て。ちょっと忙しくて手が回らん」

「いえ、そうではなくて。ダンジョンで何があったかを話しに来ました」


 手に持っていた書類を机の上に置いたクライムさんの顔付きが変わる。

 

「もういいのか? 話せるのなら話してもらえるとこっちも助かるが……」

「大丈夫です」


 やっぱり、皆気を使ってくれてたんだ。

 お姉ちゃんを除いて、誰もこの事を聞いてこないから変だとは思ってた。

 


 そこから、私は体験した事をかいつまんで説明した。

 

 下層の状況。

 セーフポイントの存在。

 ダンジョンマスター、ブロックマスターの事。

 勧誘された事も。


「そんなもんがいたとはな……。ローズ、この事は口外するな。この情報を公開するにも、色んな可能性を考慮する必要がある。勿論、公表する際にはお前の功績である事は隠さないから安心しろ」


 功績とかは別にどうでもいい。


「お母さんとかにも言わないほうがいいですか?」


「いや、ハワードとルシアなら大丈夫だ。その辺の分別は付いてるだろう。既に別の奴に話したりしたか?」

「いえ、クライムさんだけです」


「ならいい」


 難しそうな顔で考え込むクライムさん。

 それを黙って見ていると、扉をノックする音が響く。


「失礼しまーす。ローズちゃんいますかー?」


 ザミさんだ。

 手には多くの書類を持っている。


「なんの用だ、ザミ」

「私の手が空いたので、ローズちゃんの鑑定をしようかなって思いまして!」

「ああ、そうか。ローズ、時間があるならこのまま今の状態を確認してこい。こっちも今のお前がどれくらい成長したのか知りたい」


「分かりました」


「じゃ、いこっかローズちゃん!」


 朝よりは元気になった様子のザミさんに手を引かれ、やれやれといった感じのクライムさんを残して部屋を去っていく。

 なんかこの感じ、懐かしいなぁ。


 

 ◆



「じゃあはい! この水晶と、その後はこっちの水晶ね! ダリアちゃんは鑑定できないからここで待っててね~」


 う、ちょっと緊張する。

 けっこう強くなったと思うんだけど、どうなんだろう。 

 これで全然成長してなかったら……。

 

 いや! そんなことはないはず!


 まずは適正判定用の水晶に触れる。



『ローズ・クレアノット


 【武器適正】


   刀剣武器類 :A

   鈍器武器類 :A

   竿状武器類 :A

   投擲武器類 :A

   射出武器類 :B

   格闘武器類 :B

   魔術武器類 :B   

   その他武器類:A

   

 【防具適正】   


   鎧系統   :A

   盾系統   :A

   兜系統   :B

   靴系統   :A

   衣類系統  :A

   魔布系統  :B

   

 【装飾適正】

 

   全適正   :B


 【魔術適正】

 

   無し


 【技能適正】


   物理系技能 :A  』



 お、おお!

 何個か適性がAに!

 まぁこれはダンジョンに落ちる前からか。

 吐しゃ物は表示されてない。

 その他武器類に入ってるのかな。


 次に能力値鑑定用の水晶に触れる。


 

『ローズ・クレアノット

 ステータス

  平均膂力値:112

  平均防御値:83

  平均魔力値:0

  平均敏捷値:124

  平均闘気値:96

  平均聖気値:72

 スキル【戦技】

  無し

 スキル【魔術】

  無し

 スキル【その他】

  『適正武具霊装化』

  『霊装武具操作』

 恩恵

  無し


 総合評価  C+ 』



 総合評価C+……。

 え、どうなの?

 前よりも全然上がってると思うんだけど、Cって言われるとそうでもなさそうな感じ。


 そして相変わらずの魔力無し。

 悲しい。


「わぁお……まじかぁ……。すっごいねローズちゃん……」

「え……? でもこの評価って……」


 すごいの?

 Cだよ?


「この総合評価ってね、英雄を最高値のAとして考えられてるの。だからこれでも十分過ぎるほど強いんだよ。うちの階級で言えば黒プレートと遜色ないステータスって事」

「そうなんですか?」


「うん、そんで値が100を超えた場合の評価クラスはB。つまり少なくとも腕力と速度は、間違いなく黒プレート冒険者のそれだね! もっと言えば、あのハゲ支部長よりも強いよ。ニシシシ、なんか笑える」


 うおー!

 なんか知らぬ間に黒プレートの仲間入りに!

 まだプレートは白だけど!


 まぁもうちょっとゆっくり駆け上がりたいという願望はあったけど。


 そしてクライムさんよりも強いぞー!

 あの強面よりも強いって考えたら私も笑いがこみあげてくる。


「ぶふっ……。アハハハハ! あのハゲがこんな可愛い12歳の女の子より弱いて! アハハハハハ! ざまみっ!」

 

 あー。

 私も笑い出しそうだったけど、ここまで盛大に笑ってるのを見ると冷静になってしまう。


「ふぅー……。ごめんね、12歳の女の子ってのは、ローズちゃんを馬鹿にしてるわけじゃないからね? ちょっといい方が悪くなっちゃったかも。ごめんね!」

「だ、大丈夫です!」


 全然気にしてなかったのに言葉の使い方を謝罪してきた!

 クライムさん以外にはすごい気を使ってくれるんだなぁ。

 嬉しい事は嬉しいんだけど、だんだんクライムさんが気の毒になってきた。 


「で、この霊装武具操作ってどんなスキルなの?」

「あ、それはあの、こうして出した武器とかを直接手に持たなくても扱えるっていうやつで」


 手の甲にナイフを1本発現させ、その状態で軽く振って見せた。


「へー! 超便利じゃん! 羨ましい! なんかどんどん物理系に特化していくね!」

「あははは……」


 別に物理が嫌いなわけじゃないんだけど、私も魔術とか使ってみたい……。

 お父さんの血が本当に恨めしい。

 いやお父さんの事は大好きだけど。


「じゃあこれ記録しちゃうからちょっと待ってね~!」

「あの、ダリアのステータスは見れないんですか?」


「あーごめんねぇ。脅威度とか種族とか、そういうのしか鑑定出来ないの。もっといい鑑定石があれば出来るんだろうけど、ここには無くて……」

「そうですか……」


 一生懸命データを紙に記録していくザミさんを待ちながら、もう1度自分の能力値を眺めていく。

 C+という評価はちょっと肩透かしだったけど、この世界の平均としてはかなりの部類に入ったと思ってもいいらしい数値。

 素直に嬉しい。


 いつか、ダリアのも見てみたいな。

 きっとすごい数値が出るんだろうなぁ。


 そういや、最高値の英雄ってどんなもんなんだろ……。

 聞こうかとも思ったけど、ペンを走らせるザミさんの邪魔をしないほうがいいと思って口を開くのをやめた。

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■ 本小説の世界の中で、別の時代の冒険を短編小説にしました。
最果ての辺獄

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