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022 2度目の地震

「ハッ……!」


 気づいた時、私はハンマーを持って立ち尽くしていた。

 

「あれ……私……」


 目の前にはダリアがいる。

 何してたんだっけ。


 ああそうだ。

 無我夢中で虫を潰してたんだった。


 潰した記憶はほとんどないけど、そこら中が緑色だ。

 ハンマーの頭部も緑色になっていて汚い。


「うえ……」


 ハンマーを霊装化し、服に飛んだ虫の体液を拭きとっていく。


「ピッピッピ!」


 ひと仕事終えたダリアが、褒めてほしそうにぴこぴこしている。

 巨大ワームがいた場所を見ると、そのほとんどが潰れ中央に道ができていた。


「おー! すごいぞダリア! よくやった!」

「ピッピ~!」


 でもワームの切れ端を飛ばしてきたのは忘れてないからね。

 一瞬だけ睨みつけ、すぐにいつもの顔に戻る。

 

「よし、じゃあ進もっか!」

「ピ~!」


 脚を踏み出した瞬間だった。

 立っていられないほどの突然の地震。

 あの時の恐怖が蘇り、体が強張って動かない。


 青空の下でも怖かったのに、今はダンジョン内。

 天井が崩れてくるんじゃないか。

 また下に落ちるんじゃないか。


 嫌な想像ばかりが脳裏を巡り、声を出すこともできない。


 ダリアに必死にしがみつき、ただただ、その揺れが収まるまでジッとしていた。




 ◆




「だ、大丈夫か……」

「んああ……平気だ……」


 転げた冒険者の横を、別の冒険者が駆け抜ける。

 少し先のほうにある瓦礫の山に到着すると、その冒険者は必死で瓦礫をよせ始めた。


「おい! 誰か手伝ってくれ! まだ、まだ中にあいつらがいるんだよ!」


 地震は発生から1分ほどで治まったが、その影響が地上の至るところに現れていた。

 それはここ、ダンジョンの入口も例外ではない。


 ぽっかりと口を開けていた入口はどこにもなく、あるのは瓦礫の山だけ。

 ダンジョンへはもう、入ることも出ることもできなくなっていた。 


「お、俺はクライムさんに報告してくる……!」


「その必要はない」


 慌てて振り返ると、そこにはクライムの姿があった。


「く、クライムさん! 良かった、まだ中に――」

「分かってる。騒ぐな」


 瓦礫の山まで行くと、クライムは手を押し当てて何かを探っている。


 ……。


 崩落にしては、位置が高い。

 空洞だらけのダンジョンならばもっと低くなるはずだ……。


「お前ら、手を貸せ。1階層までの様子を見るぞ」

「は、はい!」


 その場にいた全員で瓦礫をよせ、2時間ほどで階段の下まで到達する。

 だが、その先も土砂で埋まっていた。


「妙だな……」


 1階層はほとんど埋まっており、進むことができない。

 少し掘り進んでも、奥の空間などは出てこない。


 天井に亀裂が入ってはいるものの、崩れてくるほどのものではない。

 崩落だとしても、この土砂はどこから来た?

 これだけの量なら、岩盤が数階層分落ちていないとおかしい。


「戻るぞ、撤収だ」

「え、でもまだ……」

「もう1度揺れが来ればここは危険すぎる。撤収だ、分かったな?」

「…………はい」


 地上に出たクライムは、周囲に異変がないか観察し始めた。

 すると視界の端に、妙に盛り上がった箇所を見つける。

 それは途中ジグザグと蛇行しながらも、どこまでも長く続く土のラインだった。


「これは……」


 土を払い除け、その接合部分を確認すると地割れのような跡が見える。

 しかし単純に割れたというものではない。


 まるで、片方がもう片方の大地の下へと潜り込んだかのような印象だ。


「そういうことか……」 


 この状況からクライムが立てた推測は、大陸が小さくなったというもの。

 亀裂が入った大地は割れ、縮小するようにぶつかり合った後。

 ダンジョンという空洞部分に、片側の大地が滑り込んだのだろう。


 それなら、空洞のはずのダンジョンを埋め立てた土の量にも納得がいく。


 そして同時に、見張りとして残っていた冒険者の救出が絶望的であることも想像する。


「次から次へと、何が起こってる……。あいつらになんて説明すりゃいい……」


 当然、ローズが出てくるための出口も無くなったことを意味する。

 懸命に地上を目指すローズには、もうゴールが存在しない。


 それどころか、地震の影響で生きているのかさえ分からない。


 解決しない問題に頭を抱え、クライムは街へと戻っていった。

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■ 本小説の世界の中で、別の時代の冒険を短編小説にしました。
最果ての辺獄

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