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018 コアさんから得た情報

 あれから丸1日。

 極度の神経摩耗を癒すために眠り続けた私は、空腹で目を覚ました。


「んう……」

「ピィ! ピ! ピ!」

「ダリアおはよ」


 上半身を起こした私の上で、ダリアはプルプルと震えている。


「おはようございますイズミ様。ちょうどお食事をご用意致しました」

「あ、ありがとうございます……」


 ダリアを横によせてから、私はお盆を受け取り膝の上に置く。

 そこにはサンドイッチが並べられていた。


「パ、パン……!?」

「お休みの間にこちらで作成致しました。お口に合いませんようでしたらお申し付けください」


 ええいやいや。

 作成ってなに!?

 そんなことできるの!?


「い、いえ! いただきます!」


 齧り付いて咀嚼するが、うまく噛めない。

 口の中に水分がほとんどなかった。


 横に置いてあるコップを掴み、液体を口の中へと注ぎ込む。


 え? 

 これ牛乳?


 コップの中を覗くと、白い液体が見える。

 しかもこれ美味しい。

 調整牛乳だ……!

 いやちょっと薄いから微調整牛乳……!


 十分に咀嚼し、ゆっくりと飲み込んでいく。

 喉を通り、冷たい牛乳が流れ込むのが分かる。

 パンと肉の旨味が、体中に染み込んでくる感じが心地いい。


「お、美味しいです!」

「それでしたら重畳でございます。他にも入用の物がありましたらお申し付けください」

「あ、なら聞きたいことがいっぱいあるんですけど……いいですか?」

「開示許可が出ている事柄でしたら問題ありません」


 女性は淡泊に、機械的に回答を零す。

 改めて見てみるとすごい格好だ。


 女給姿で少し長めの黒髪にメイドカチューシャを付けている。

 スカートは非常に短く、白いニーソックスの間に絶対領域ができている。


 これは趣味の範囲なんだろうなぁ。


「えっと、色々お世話になってからで申し訳ないんですけど、あなたはどちら様でしょうか……」


「ダンジョンマスターであるアル君より、イズミ様の助力をするよう仰せつかっております。種族をオーダーゴーレム。個体識別名称をコア1123と言います。セーフフロアとなるこのエリア内でのみの活動を許可されています」


「アル君って、アルトゥーン・なんとかトシュとかいう……?」


「はい。正式名称はアルトゥーン・プレトシュとなります。呼称する際は『アル君』と呼ぶよう厳命されております」


「そ、そうですか……」


 呼び方を厳命って。

 

「別途、イズミ様にはブロックマスターになっていただけるよう、説明を行うようにも仰せつかっております。説明を開始してもよろしいですか?」


「そ、その前に……イズミじゃなくて、ローズって呼んでもらえませんか?」


「何故でしょうか。イズミの名の方が、あなたとの結びつきが強いと思われますが」


「い、今の私はローズ・クレアノットなので……」


「……了解しました。以降、イズミ様の呼称をローズへと変更、確定します。それでは説明を開始してもよろしいですか?」


「あ、はい……」



 終始勢いに押されっぱなしだったけど、説明してもらったおかげで色々と知ることができた。


 まずひとつめは、ミルドダンジョンについて。


 このダンジョンには、8人のブロックマスターというのが存在するそうだ。

 夢の中ではダンジョンマスターって言ってたけど、その方が話が通じやすいということで彼はそう言ってるらしい。

 なので厳密にはダンジョンマスターは彼ひとりだけ。 


 で、そのブロックマスターに関してだけど、持てる権限はダンジョンマスターとほとんど変わらないんだとか。

 勿論制約もほとんど同じ。

 違うのはその範囲。


 ダンジョンマスターはダンジョンから出られない。

 ブロックマスターは、担当のブロックから出ることができない。

 外に出られないどころか、ダンジョン内ですら全部に回れないとは思わなかった。


 本当に断っておいてよかったと思う。


 そしてここはやっぱり、ブロックマスターの居住エリアだったみたい。

 魔物も入ることはできるけど、基本的には見つけることができないようになってるんだって。


 それと現在起こっている異変。

 これもやっぱり、ブロックマスターが不在のせい。

 死骸は、人も魔物も等しくダンジョンに吸収されるけれども、吸収する元がいなければそれは行われない。

 そしてダンジョンを守護する魔物も、守る対象がいなければ、命じる者もいない。

 そのため、帰巣本能から地上を目指す。

 ここで生まれておいて帰巣本能? と思ったけど、地上で生活する魔物がその素体になっているためだそう。


  

 次に、ダンジョンマスターについて。

 

 最下層にいるというアル君。

 彼の目的はダンジョンの維持。

 そして、面倒だから他の人に任せよう。という考えから8つの区画に分け、それぞれを別の人に管理させている。

 その結果、最下層以外のブロックに対する権限が何一つないのだと言う。


 あるのはブロックマスターを選任する権利だけ。 

 なので早く見つけないとヤバイって言ってた。


 あわよくば地上まで送ってもらおうかとも思ったんだけど、コアさんもここまで10日ほどかけて歩いてきたらしい。

 なんて不便なんだ。



 まぁここまでは正直どうでもよかった。

 一番有益だったのはこれだ。


 『嘔吐物武器類適性』の仕様説明。



「この適性に対応する物は、『生理的現象を無視し、物理的に口から出せるもの全て』となります。そのため、ローズ様の体内に入ったものは全てその対象となります。サバスの腕の霊装化の際、誤っていくつかの臓器を霊装化してしまえば、それだけで死に至る可能性がありましたが、そうはならずに済んで良かったですね」


 サラっととんでもないこと言ったな。

 良かったですね、ではない。


「同じくその適性と霊装化のスキルを所持している方が過去におりました。その方が言うには、体内に入った毒、ウィルス、呪いなども対象になるため使用を誤りさえしなければ非常に有用とのことです」


「霊装化も……。どんな人だったんですか?」


「約700年前にいた、大陸の英雄です。武具の支配者(ウェポン・マスター)という異名で親しまれておりました」


 親しまれておられたの?

 逆によく分からないんだけど……。


「ローズ様も、武具の支配者(ウェポン・マスター)になる素質があるということですね。もしそうなれば、支配者の再来ということになるでしょうか」


 ……!

 私が、ウェポンマスターに!


 やばい、響きだけでも超かっこいい。

 なれるかな?

 なってみたいな?

 かっこいいもんね?


 よし、なろ。



「もし、それを目指すというのであれば、霊装化にかまけず、ひとつひとつの武器を極められることをお勧め致します」


「武器を……極める……?」


「はい。武具の支配者(ウェポン・マスター)ですから、それくらいは当然です。それに、もしも剣1本のみでの勝負を挑まれたらどうしますか? そしてそれに負けてしまったら? ハチャメチャが押し寄せてくる勢いでかっこ悪いです」


 た、確かに!!

 武具の支配者とか言われてるのにそれで負けたらかっこ悪すぎる!

 無様とはこういうことかって思い知らされる!

 ハチャメ、え、なに?


「ですので、しばらくは霊装化を控え、武器を常に手で持っておくくらいはするべきかと」


「は、はい!」


 ウェポンマスターかぁ。

 武具の支配者かぁ。

 かっこいいなぁいいなぁ。


 あーなんかすごいやる気出てきた!

 目指しちゃうぞ!


 目標ができるって素晴らしいね!

 生き甲斐ってこうやってできるんだね!


 ん? 目標?


「ハッ……!」


 そ、そうだった。

 まだダンジョンから出るという目標を達成していなかった……。

 久々に誰かと会話したから忘れてた……。


「他にご質問が無ければ、食器類をお下げ致しますが」


「あ、はい。お願いします」


 あれ、そういえばここって。


「あの、このベッドって」

「はい、以前のブロックマスターが使っていたものです。綺麗に洗浄してありますので使用上の問題点は見当たりません」


「掃除してくれたんですか……。すみません色々と……」

「問題ありません」


 コアさんは食器類をお盆のまま持って部屋を出ていく。

 説明を受けながらだったので、いつの間にか食べきっていた。


 もう1回食べたいなぁパン……。

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■ 本小説の世界の中で、別の時代の冒険を短編小説にしました。
『最果ての辺獄』

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