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013 成長と成果

 戻ってきたセーフティエリア。 

 ローズは装備もそのままに泉へと飛び込む。

 

 水面に映る自分の顔を見ながら、表情を変えてみる。

 笑った顔、怒った顔。

 だがどれもうまくいかない。


 どうしても引きつってしまう。


「…………ふぅ」


 先日から続く命を失う危険性を孕んだ戦闘。

 二度と地上に戻れないのではないかという不安。

 それを払拭した直後の、恐怖の刷り込み。


 なんとか奮い立たせてきたローズの精神は弱っていた。

 12歳の少女、前世分も合わせれば30年分の精神力はあるが、それでも短い期間に立て続けに襲ってくるストレスが、確実に彼女の精神に影響を与えている。


 怖い。

 本当は最初から怖かった。

 もう二度とお父さんにもお母さんにも、お姉ちゃんにも会えないかもしれない。

 一度悪い方向に考え始めると、それは連鎖していく。


 最低の結末しか思いつかない。


 だが同時に、沸々と怒りが燃え上がる。


「人がこんなに頑張ってるのに……12歳よ? まだ12歳の少女がこんなに頑張ってるのに……! 何回心をへし折りにくんのよ!」


 ついに吠える。

 積み上げた石を、その度に崩されるようなイライラ感。


 行き過ぎたストレスが恐怖や絶望を通り越し、一周回って大きな怒りとなって表れた。


「ダリアアアアアア!!」

「ピ!? ピピィ!」


 大声で呼ばれ、慌ててローズの元へと走るダリア。


「やるよダリア。まずはあいつをケチョンケチョンにできるようになるよ……!」





 ここから、日常が一変する。


 上層へ上がるためのフロアを避け、毎日違う道を探索する。

 現れる魔物を、鬼気迫る形相で倒し続け、傷つきながらもその経験を確かなものへと変えていく。


 疲れて戻ってきても、あの異形をどう倒してやろうかを考えながら不気味な笑みをこぼし続けた。



 ――4日目。


 この階層の奥の奥の奥。

 そこには大きな縦穴があった。

 どうやらその穴からトカゲや狼、その他諸々が落ちてきてるらしい。


 そのおかげで食料に困らない。


 へへへへ。



 ――7日目。


 シルバーウルフの群れに遭遇した。

 20匹の大所帯だったけど、ダリアと一緒になって全部倒した。

 全然楽勝だった。

 ワタシツヨイ。


 

 ――9日目。


 なんか液状のスライムみたいなのがいた。

 前に立つとそいつは、まるで竜のような姿に変わる。

 善戦したと思うけど、ダメージを与えられてなかった気がする。

 結局倒せなかった。 

 悔しい。

 後でリベンジする。

  


 ――12日目。

 

 この階層は広い。

 広すぎる。

 どこまで進んでも終わりが見えない。

 これ以上奥に進むと、戻れなくなりそうなのでやめた。

 帰りに牛のような二足歩行の魔物がいたので倒した。

 ダリアにやらせると食べる部分が無くなるのでひとりで倒した。

 今日は牛肉だ!



 ――16日目。

 

 また別のフロアで骸骨騎士って名前がしっくりくる奴と戦った。

 戦い方が人のそれに近いから、多少やりやすい。

 でも倒せなかった。

 あの液状の竜と同じで、物理的な攻撃は効果が薄いみたい。

 腕を飛ばしても数秒ほどで元に戻っちゃう。

 お前も後で倒すからな!



 ――18日目。


 ちょっと調子に乗ってたかも。

 シルバーウルフのでっかい奴が出てきて、手も足も出なかった。

 ダリアがいなかったら多分死んでた。

 覚えてろよぉ……!



 ――20日目。


 そういえば、なんだか傷の治りが早い気がする。

 でっかい狼にやられた背中の傷が、もう痛まない。

 それに違和感も感じない。

 強くなったってことかな?

 だと嬉しいんだけど、傷の治りが早いのはそういうのに関係ある?

 無さそう……。



 ――22日目。


 なんだか体が軽い。

 なんだろうすごく調子がいい。

 今ならあいつらにリベンジできるのでは!?

 そう思って行ったけど、結局ダメだった。

 ダメージをもらうこともなかったけど、ダメージを与えられることもなかった。

 あのスライムなんなの?

 スライムじゃないの? ドラゴンなの?



 ――25日目。


 霊装化もだいぶ使いこなせるようになってきた。

 武装選択に思考を巡らせることもなく、反射で対応できる。

 更には新しいスキルまで覚えることができた。

 そのおかげもあってか、もうほとんどの魔物には苦戦することがない。

 まだ倒せない難敵は存在するけど、このままいけばきっとすぐ倒せる!



 ――28日目。


 久しぶりに上層への階段があるフロアに行ってみた。

 中央にはあの黒い奴が丸まってる。

 きっと近づくと反応するんだと思う。

 今の自分が通用するのか試したかったけど、お前は最後だ。


 先にあいつらにリベンジしてからだよ……グフフフ。

 



 31日目――。


 あれから約一か月。

 ここでの生活には随分慣れたと思う。


 セーフティエリアのおかげで、寝床にも水にも困らない。

 食料も野菜があるし、肉類は魔物から取得できる。


 だいぶ逞しくなった気がする!

 

 そして戦闘面だが、爆発的に伸びたと思う。

 特に途中から獲得したスキル『霊装武具操作』の使い勝手がやばい。


 直接触れていればそれだけで威力は飛躍的に上がる。

 更に、触れていなくても腕と脚からほんの少しだけ離れた位置ならば空中に固定できる。

 腕の動作に合わせてそれを動かすことも可能。

 これのおかげで、同時に3本の剣を出して爪のように攻撃したりもできるし、盾の代わりに剣の塊を出すこともできる。

 実際の盾と違って隙間があるから、用途は差別化されててこれも良い。


 残念ながら意思ひとつで動いてくれはしなかったけど、それでも十分すぎる。


 ということで、今日はあいつをぶったおします。

 今日は隠し玉もあるからね!


 今のところ一番安全で且つ、倒せる可能性があるやつ。

 今向かっているのは他でもないその相手がいる場所。


 そう、骸骨騎士くんのフロアだ!



 俯いて沈黙する骸骨騎士の前に、堂々と出ていく。


「この間の続きだよ骸骨騎士くん! 今日こそやっつけます!」

「…………」


 言葉を発することなく、ゆっくりと立ち上がる骸骨騎士。

 その手には、ボロボロの剣と盾が握られ、体は穴だらけの鎧に包まれている。


 ボロボロではあるが、どれも装飾が豪華だった面影がある。

 この魔物が高位な存在だからなのか、装備が豪華なだけなのかは分からない。


「……ッ!」


 骸骨騎士目掛けて走り出す。

 途中、左の手のひらを横に掲げ、その先に剣を3本発現させる。

 右手には父から渡された愛剣を握る。


「ピピィ!」


 ダリアは後ろの方で応援するかのように体を上下させていた。

 1対1で倒したいがために、ダリアには下がってもらっている。


「ハァ!」


 3本の剣が形作る大き目の爪で思いきり叩きつける。

 骸骨騎士はそれを剣で弾き返し、ローズの体勢が左に流れた。


 流れた体のまま、右の愛剣で骸骨騎士の首を狙うが盾で受け流される。


 攻撃後の隙を付くように前に出てくる骸骨騎士。

 ローズは足場を作るように鎧を発現させ、それを蹴って距離を作る。


 跳躍のまま空中で脚を蹴り上げると、小型のナイフが飛んでいく。


 体勢を低く取り、飛びナイフを躱しながら追いついた骸骨騎士が、そのボロボロの剣を下から振るってきた。


「くぬぅ!」


 宙に浮いた状態でなんとか剣でそれ防ぐ。

 体が横を向き、回転しながら斬撃の勢いを殺す。


 その回転に合わせて、腰に巻き付けていた鞭のような物が伸びる。

 下から斬撃を繰り出したせいで、腕を上げて体が開いた状態の骸骨に、その鞭は下から顎へと直撃する。


 回転したまま綺麗に地面に着地したローズは、鞭の直撃に怯んだ隙を利用するために前に出る。

 だが骸骨騎士の隙は既に消えていた。


 後ろへと流れる体を抑え込み、その体を前に戻す反動のまま剣を振り下ろす。

 かなりの溜めがあったため、この一撃は非常に重かった。

 直撃すれば、防いでいても衝撃でダメージを負うのが分かる一撃。


 まぁあくまでも、直撃すればの話だ。

 大振りすぎて躱すのは簡単だった。


 しかも振り切った後の隙が大きい。

 

 左に躱したローズは、右の愛剣で骸骨騎士の脚を切り裂く。

 支えを片方失いバランスを崩したところへ、振り向きざまに横なぎを食らわせる。

 

 骸骨騎士の右肩から先がはじけ飛ぶ。

 

 ローズは横なぎのまま体の回転を止めず、もう半回転し飛び上がる。

 腰の鞭が斜め上から骸骨騎士を叩きつけ、衝撃でその骨だらけの体を地面に付けることとなる。


 跳躍していた私は、両の腕を引き、その手のひらから複数の剣を発現させている。


「とどめぇっ!」


 着地のタイミングに合わせ、思いきり腕を前に突き出す。

 無数の武器たちは骸骨騎士の体を一斉に貫いた。


 武器の空中固定により、ローズは空中で静止している。

 その武器たちは骨や頭蓋を貫いて地面に突き刺さっていた。


 肝心の骸骨は、頭蓋をやられたことでその機能を停止。

 もはや動く気配がない。


「よっ……!」


 左手だけで自身を支え、引き抜いた右の武器をもう一度突き刺す。


「……ふんっ!」


 それを横に払い、骨がバラバラと散乱していく様子を確認する。


「……うん! 倒したかな?」


 死んだかどうか確かめるために追い打ちの一撃。

 私は用心深いのです。

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■ 本小説の世界の中で、別の時代の冒険を短編小説にしました。
最果ての辺獄

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