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戦場荒し

「ころせええええええええ!!」

「連中を生かして帰すなああああ!」


 鎧を着た男たちが、何百人と集まって殺し合いを繰り広げている。

 戦場は赤く彩られ、死体がゴロゴロと転がっている。


 国と国の争い。

 こんな戦場が、大陸全土で行われている。

 そしてその余波は、周辺の村々での略奪や凌辱を繰り返させる原因となった。



 突如、戦線の端から人が飛び散り始めた。


「な、なんだ……?」

「おい待て、あれって……!」


 大きな斧を片手で振り回し、鋭い剣で首を飛ばす女がひとり。

 戦場で敵味方の区別なく暴れている。

 

 蹴りを入れたと思えば暗器が飛び、クルリと回転すれば腰に付けた鞭が周囲を薙ぎ払う。


「戦場荒しだ! 戦場荒しが出やがったぞ!」

「殺せ殺せ! そいつを殺せば褒賞金がたんまり出るぞ!」


 次々と女性に襲い掛かる兵たち。

 先ほどまで争っていたというのに、今は一丸となっている。


 だが、辿り着いた者から即座に肉塊へと変わっていく。


 ある者は串刺しに。

 ある者は真っ二つに。

 またある者は粉々に。


 その鬼気迫る戦力は、明らかに一個人が持っていていいものではない。


「ば、バケモノかよ……」


 気づけば、その場に立っているのは彼女ひとりだけとなっていた。


 返り血で顔は黒くなり、表情は全く読み取れない。

 その瞳だけが、物悲し気に感情を訴えるのみだった。


「まだ残っておるぞ……」

 

 どこからともなく声が聞こえる。

 女性はその声に軽く頷くと、すぐさま走り出す。


 両軍の陣営深くへと斬り込み、蹂躙の限りを尽くす。

 奥でふんぞり返っていた将校たちも、為す術なく肉塊へと変わっていった。

 

 兵と呼べる者はもう、どこにも残っていない。


 いつのまにか戦場中央には死体が積み上げられている。

 そしてそれは、どこからか着火され燃え上がった。


「灰は灰に、塵は塵に……土は土に……」

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■ 本小説の世界の中で、別の時代の冒険を短編小説にしました。
最果ての辺獄

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