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 月が天上に輝く頃、『神の愛し子』の成人の儀に参加する人々は、全員が聖堂の中に納まった。

 その屋根上に腰かけた青年は、聖堂から漏れる、人々のさざめきを聞きながら、白猫に話しかける。

「ニーナがまた、十七歳になってしまうね……」

「……なーう」

 青年の肩に座った白猫は、不安そうな鳴き声を上げ、彼の耳元に身を寄せた。

 白銀の髪に青い瞳を持つ神・ギードは、白猫・シュネーの体を優しく撫で、月を見上げる。

「どう動こうと、これが最後だよ。あの子が幸福になれないのなら――次なる転生は、ない」

 常ににやにやと笑っている彼の顔に、この時、笑みはなかった。

 彼の呟きに、答える者はいない。

 生ぬるい風が、彼らの脇を通り抜けるばかりだった。


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