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月に願いを

作者: 藍川秀一

月に願いを

藍川秀一


 毎年のように、最高気温を更新していく。地球温暖化の影響というべきか、太陽は年をおうごとに近くなっているように思える。しかし、去年の夏と、今年の夏、その二つにはどんな違いがあるのだろう? 去年の夏も相変わらず暑かった。太陽が空へと佇み、人々を照らし続け、体力をひたすらに奪っていく。汗が身体中に滴る中、アスファルトの上を歩くのは、苦行以外の何物でもない。

 夏とは、太陽の大きさを知る季節だと個人的には思う。人類全体が束になったところで、太陽に近づくことすら許されないだろう。地球上に住む生物は、太陽の輝きには遠く及ばない。

 離れた場所にいる今でさえ、溶けて消えてしまいそうになるほど、太陽の存在は大きい。

 その輝きは夜中であっても色あせることはない。夜空に浮かぶ月に反射して、暗闇の世界に光を与える。散りばめられた星々より、月は確かに輝いて見える。

 「星に願いよ」なんてよく言うが、そんな限りなく遠い存在に何を願うと言うのだろう。何光年と離れている場所には、声が届く前に、寿命が終わりを迎えてしまう。

 何かを空に願うとしたら、星ではなく、月に願うべきだと僕は思う。

 宇宙という広い空間の中で、地球との距離を一定に保ち、そこにい続けるだけの存在。姿は見えずとも、確かに月は存在している。

 

 月はまるで、世界が暗闇で覆われないように作られた、一つの電灯ように僕には見えた。


〈了〉


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