表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

温度差

作者: はんみょう

これ書くために赤ちゃんの成長!てサイト見たよ


俺素人童貞なんに

 千尋の弟は銅像だった。


 千尋が4歳のころ父が言った。

「チヒロはお姉ちゃんになるんだよ」

 千尋はよくわらなかったけどうれしかった。


 母が久しぶりに帰ってきた。

 とても良い笑顔だった、普段あまり表情を変えない父も笑ってた。

 千尋も笑った、みんなで笑った。


 母が抱きかかえてたもの見せてくれる。

 父がこの子がお前の弟だよと言う。


「ママそれおもくないの?」


 千尋が小学生になった。

 弟はそれまでに歩くようになったり、喋るようになったりしたらしいが千尋にはやはり青銅色の銅像にしか見えなかった。

 しかし弟の体は成長しており、千尋が目を離したときにだけ動くようで、それはまるでパラパラ漫画で千尋が見たときにだけページが止まる、そんな感じだった。


 ある日家族で食事をしている時、弟が水に手を伸ばすポーズをしていた。

 千尋は瞬きで弟の動きを調整し、コップを口に傾ける瞬間に弟を凝視する。

 当然水がこぼれるわけだが、両親は普通にしていた。

 千尋がそれを指摘すると、あら大変と母が布巾を用意する。

 次に弟を見ると布巾を持って水を拭くポーズをとっていた。


 千尋は両親に頼んで弟と部屋を別にしてもらった。


 小学校の友達の家に遊びに行くことになった。

「うち弟いるけどいいよねチヒロちゃん」

 千尋は恐くなったが、途中で断れなかった。

 友達の家に着いた。


「ねねちゃんただいまあ」

 普通の人間の弟が居た。


 千尋は友達の髪の毛を引っ張って、顔を引っかいた。

 友達は怒った、泣いてたのは千尋のほうだ。


 しばらくして千尋は犬を買ってもらおうと思った。

 両親はあっさり了解してくれた、普段千尋は何かものをねだることは無かったから。


 千尋は芝太郎とすっかり仲良しだ。

 毎日散歩に行き、ボール遊びをし、泥だらけになって怒られた。

 芝太郎ホントにカワイイ!大好き!今まで生きていて一番幸せな時期だった。


 ある日学校帰り

 千尋はいつも走って帰る、友達は普通にいたが放課後に友達と遊ぶより早く芝太郎に会いたかった。

 芝太郎は千尋の世界の全てだった。


 信じられないものを目にする。

 弟が歩くポーズで歩道にいた、それは別にいい。

 その手の先に紐が見えた、千尋が買ってもらったものだ。

 自分の誕生日におねだりしたものだ。

 芝太郎のリードだった。


 なんであいつが?なんであいつが?なんであいつが?なんであいつが?


 芝太郎は大人しく座っていた、弟は動けないからだ。

 千尋と芝太郎は十字路のちょうど真向かいに位置している。

 芝太郎を助けなきゃ!


「シバタローッ、こっちーッ!」

 芝太郎は千尋の声にすぐ反応し、尻尾振って立ち上がった。

 リードがピンと張って、千尋のところには来られない。

 銅像につながれているから。


 千尋は走った、体育の時より本気を出す。

 けど十字路の真ん中でいったん止まる、左側から来るトラックが見えてた。


 次の瞬間、芝太郎は駆け出す。

 千尋がトラックの方を向いたときに弟がリードを離していた。

 芝太郎は利口な犬だったが、大好きな千尋しか見えていなかった。


「あ…」


 芝太郎がキャンッと短く泣き空中に浮く。

 千尋にはその光景が、スローモーションに見える。

 芝太郎の体がコンクリートに打ち付けられた瞬間、時間が通常再生に戻る。


 千尋の絶叫がトラックのクラクションにかき消された。


「どうだ?」

「ダメ泣き止まない」

「でも雄介が無事でよかった」


 千尋は自室でずっと泣いていた、血がついたリードを握り締めて離さない。


 ガチャッ…。

 部屋のドアが開いた。弟が立っていた。

 何なのあんたッ!千尋が泣き叫ぶ。

 母親が銅像の肩にてを添えて言う。

「雄介もこうしてあやまってるんだし、許してあげて、ね?」

「なにがこうしてなのッ!?ぜんぜんわからないッ!ぜんぜんいみわかんないッ!」


 父が母の後ろに立って静かにいった。

「今は一人にしてやろう…」

 千尋は胸がすごく苦しくなりもう何もかも口から飛び出そうになって。

「芝太郎じゃなくってッ!そいつが死ねばよかったッ!」

 初めて母親にぶたれた。


 中学生三年生友達との帰り道

「ウチさ弟居るんだけど、あんたのトコと友達らしいじゃん」

「それが何?」

「前に見せてもらったけど結構イケメンじゃん、将来貰っちゃおうかな~」

「本気?」

 早足で歩く。

「ねえなんか千尋怒ってる?」

 わかってる!


 高校は全寮制の女子高に通った。

 両親は大切に思ってたし、好きだったけど家には帰らなかった。

 弟を来させないことを条件にたまに外食に行った。


 高校は普通に楽しかった。

 笑って、泣いて、けんかもした。

 思い出がたくさんできた。

 卒業後は進学しないで平凡な会社に就職した。


 21歳の頃だ

「少しは家に帰ってきなさい」

 両親にはたまに電話をかけるだけだった、雄介にも替わる?

 とふざけた提案をされることもあった、冗談じゃないそいつの声なんて私は聞いたことが無い、別人が出たとしても分からない。


 その年の夏私は実家に帰ることにした、本当なんでだろう。


 駅を出て家に向かう。

 弟に迎えをやると親にいわれたがどうでもよかった、それにそいつはわたしが見ていると動けない。


 久しぶりの地元で道に迷う。

 スマホのマップ機能がこんなに便利だとは思わなかった。

 あの十字路に来ていた。


 十字路の真ん中付近で立ち止まる。


 いつのまにか弟が少し離れたところにいた。


 私は無言だ、当然相手も話さない、話せない。

 しばらく見つめていた、背は私を追い越していた。

 高校の制服を着ていた、結局こいつは何なんだろう。

 何で私のところだけ、いや私だけこいつが普通に見えないんだろうか。

 こいつには血が通っているのか。


 私は弟を見つめたまま後ずさりするように歩く。


 クラクションが鳴った、左の方からだ。

「えっ…」

「姉さんあぶないッ!」


 しばらく立てなかった、何が起きたのか。

 足をくじいたみたいだ、すごく痛い、芝太郎はこんなものじゃなかったろうな…。

 あいつは…?


 トラックが電柱にぶつかり煙を上げていた。

 周りの様子を見る、トラックの進行方向かなり先に青銅の塊が見えた。

 弟が倒れていた。


 近づいてよく見る、あちこちバラバラになっていて無事なのが胴体と左腕と頭だ。

 弟を抱きかかえてみる、やっぱりすごく重いじゃないか。

 私の額から血が滴り落ち、弟の頬を伝った。

あれっ?

芝太郎が死んだ…


誰か彼に幸福を…。

あ、ちなみに僕どうぶつは大好きですよ、人間より好きです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ