第二話 始まりは赤い空
「…俺は…死んだのか…」
秋は、瞼が開いているのか閉じているのかよくわからない感覚と少しの浮遊感があった。
背中がまるで岩の上に寝ているみたいに少し痛い感じがあったが睡魔が勝っているせいかどうでもいいと感じてしまう。
遠くから少女の声が聞こえるまで。
「ぉ…ぃ…おい!」
秋は勢い良く目を開く。
その瞳は丸くなり、驚きすぎたのか瞬きなどせずにずっと目の前だけを見ていた。
目の前には動物の様な耳の付いた帽子をかぶり、ピンクと黒を基調として少し紫色の模様が入っている服を着た少女が顔を覗き込んでいた。…宙に浮いたまま。
「うぁぁぁぁ」
「わぁぁぁぁ」
両者共に叫び声を挙げる。
「って。何すんのよ!」
少女の右ストレートが秋の頬にクリーンヒット。
もちろん殴られた方はただでは済まない。
言葉が出ないまま吹っ飛ばされた秋は頬を押さえながら体を起こす。
そして、殴った本人に向かって怒鳴りつける。
「おい!いきなり何すんだよ!」
「うるさいわね!そっちがいきなり大声出すからよ!」
秋はぐうの音も出ない。
さっきの大声で睡魔がなくなったのか自分が知らない所にいると気づく。
「それより…ここどこだ」
秋は立ち上がり後ろで無視するなと言うBGMをバックに周りを見渡すとそこは、赤黒い空に鉄骨がむき出しで壁の一部が崩れていて中が見えている状態のビルだったであろう物が建ち並ぶ都市の様な場所。
まるで爆発があった様な人がいないゴーストタウンだった。
もちろん人がいるのかと言えばいない。
赤黒い空のせいで暗い感じはするが見えないわけでは無い。しかし、その風景に一言も出ない秋に後ろから声が降ってきた。
「ここは零世界よ」
「…零…世界」
するといきなり秋が少女の両肩をつかむ。
「零世界ってなんだよ、それよりお前なんで浮いてんだ俺死んだんじゃないのか…」
まだ焦りながら喋っている秋に一つも返事が出来ない少女は我慢の限界もあってか自分の右拳を握りしめ本日二度目の右ストレートが綺麗にきまった。
その時秋には星が見えたと言う。
「私はティグラ=アルでここは零世界、OK?」
「OK」
頬が真っ赤になりながら秋は地面に正座をしていた。
ティグラが話した内容を整理すると、ここは零世界と呼ばれていて何もない世界らしい。
と言っても何もないだけでここは死んだ人間がリセットつまり転生するための待機場所らしい。
しかし、人間の考える天国でも地獄でもないと言う。とてもややこしい。
でも秋にはそれより先に確認したい事があった。
「俺は死んだのか?」
「そうよ」
「あっさり言うな⁉︎」
少しだけ死んでいないと言う言葉を期待していた秋は素っ気ない返事に落ち込む。
しかし、自分のてを見つめると死んだ感覚はなく本当なのかと疑いたくなる秋。
その様子を見ていたティグラが話しかける。
「死んだ感覚がないでしょ。だってあなたは未練者だも」
「…未練者?」
次に彼女が説明したのは秋のいる立場だった。
まず秋は未練者と呼ばれ前世で未練が残って死んでしまった者がなるらしい。
そしてティグラは復讐と呼ばれ前世で恨み、怒り、復讐心が残って死んでしまった者がなると言うものだった。
しかし、そう言われても実感がない秋は頭の中ではまだ現実逃避をしているのかずっと一人で唸っていた。
そんな秋を見てティグラはため息をつくと指先が光り空中に四角を描く、するとその四角がテレビになって地面に落ちる。
その音に秋は頭を抱えながら振り返る。
テレビに電源がつくと一つのニュースが流れる。
ー今日午後1時過ぎ○○町にある森でサバイバルゲームで遊んでいた20人が死体で発見されました。生存者はおらず、その中には高校生もいたとのことです。警察は引き続き調査をしているとのことです。
そのニュースを見た秋はただ呆然とその画面を見ていた。
ちゃんと内容が入っているのか秋の瞳にはただ自分の死んだ場所と自分の名前だけが映っていた。