無一文+買い物=借金
「すげー!」
店の中に大量に並んでいる武器や防具を見てつい興奮してしまった、俺が叫んだ瞬間ルーシアが咎めるようにこちらを見た。
今俺たちはギルドを出てすぐのところにあった武具屋へ来ている。
「ちょっと、恥ずかしいからあんまり大きな声出さないで」
「あ、スマン」
ルーシアは恥ずかしいと言ってるが今この店に居る客は俺たちだけなので、俺はそこまで恥ずかしいとは思わない。
「ハハハ、うちの商品を見てそう言ってくれるんなら作った俺も本望ってもんだ」
いつの間にか近づいてきていた店主に話しかけられた、店主は色黒の巨漢で顔の傷が歴戦の戦士のような雰囲気を醸し出している。普段なら近づこうとは思えないような人相である。
「ここの装備は全部あなたが作ったんですか?」
「まあな。……ここは鍛冶もやってるんで依頼されて作ったりもしてる、嬢ちゃんもなんかあれば言ってくれ」
「分かりました!」
依頼して作って貰えるなら装備の幅がかなり広がるな、何か面白い装備を考えて今度作って貰おう。
「で、今日は何を探しに来たんだ?」
「まずはミサキでも装備できる防具ね、ミサキはどんなのが良いかしら?」
「俺は防具とかよくわからないからルーシアが決めてくれないか?」
今まで戦闘とは無縁の場所に居た俺だ、防具の良し悪しなんて全く持って分からない。それなら恐らく俺よりは玄人であるはずのルーシアに選んでもらうのが良いだろう。
「そうねえ、獣人だし……軽いレザーアーマーなんかが良いんじゃないかしら」
レザーアーマー、動きやすそうだし金属の鎧だと重くて動きにくそうだからそれでいいだろう。
「じゃあそれにしよう」
「普通の装備は嬢ちゃんくらいの歳だとすぐに成長して着れなくなっちまう、だから大きさ調整の魔術の掛かった装備にした方が良いと思うが、それだとかなり高くつくことになる。……どうする?」
金を出すのは俺ではなくルーシアだ、だから予算は全てルーシアのさじ加減になる。俺はルーシアの方を向いた。
「もちろん魔術の掛かった方よ、お金の心配は要らないわ」
太っ腹だ、俺だったら赤の他人に大金使うようなことはしないが……そう言えばなんでルーシアはここまで俺に良くしてくれるのだろう?
「分かった、ちょっと待っててくれ直ぐに持ってくる」
そう言って店主は店の奥へと姿を消した、前から見た姿もそうだが後ろから見るととても堅気の人間には見えない。
「なあルーシア、本当に良いのか? 俺なんかに金使っちゃって」
「別に良いわ、お金なんて湯水の如く有るもの」
ブルジョワにしか言えない言葉だ、だが今の俺にはこの言葉が非常にありがたい。
「そうか、ありがとう」
「気にしないで」
気にしないでって言われてもなあ、お金を払ってもらってるんだし気にしちゃうよなあ。まあそんなこと考えていても仕方がないし、別の場所に意識を集中することにした。
入り口近くに剣が沢山並んでいるのを発見した。やっぱり使うなら剣が良いよな、まさにファンタジーって感じがして。……とそんなことを考えていたら店主が奥の入口から出てきた。
「待たせたな、今うちにある魔術の掛かったレザーアーマーはこれだけだな」
店主は大量に持ってきたレザーアーマーを手際よく床に並べていく、床に置いても良いのか? まあ本人が気にしてないし良いのか。
「へえ……」
一つずつ手に持ってみるが俺には全部同じようにしか見えない、というかこれも店主が全部作っているのだし同じような形になるのは当たり前か。
「じゃあこれ下さい」
適当に一つ選んで俺は店主に差し出した。選んだのは持って見て比較的軽かった物だ。
「そんな適当に選んでいいの?」
「良いよ、どうせ俺は見たってよくわからねえし」
「了解、防具の他に欲しいものはあるか?」
「次は武器ね、武器は色んなのを見てミサキが自分で決めた方が良いわ。私が適当に選んで後で後悔されても嫌だしね」
「それもそうだな」
武器が陳列されている棚に近づいて端から順にとりあえず一つずつ持ち上げてみることにした。
「重っ!」
まず手始めにと一番端にあった小ぶりな剣を持ち上げようとしたのだが……重くて持ち上げることができなかった。
「……この店じゃこの剣が一番軽い物でな、これを持ち上げられないとなると俺の店に嬢ちゃんの使える武器は無いな」
「そんなあ……」
魔法も使えないし剣は持ち上げることもできない、これじゃあ魔物と戦えない。まああの巨大なオオカミを切り殺せた爪なら多少は戦えるかもしれないが。
「いや、そうだアレなら嬢ちゃんにも使えるかもしれねえな」
そう言って案内された先には数本のナイフがあった、しかしその棚にはほこりが溜まっていて近づくだけで咳が出そうになってしまう。どうやら長い間ここは整理されていなかったようだ。
「普段ナイフなんて売れないもんだからすっかり忘れてたぜ、冒険者になる奴らなんてのは剣とか見栄えの良い武器を買ってくことが多いからな。それに魔物と戦うのにナイフなんて全く向かねえしな……」
最後の台詞を無視して俺は一つナイフを手に取った、刀身に付いていたほこりを息で吹き飛ばすと綺麗な銀色が露わになった。
振ってみた感じ重さはさほど感じない、これなら俺でも使えそうである。
「じゃあこれ下さい」
「勧めたのは俺だが本当に良いのか? ナイフで戦うとなると相当近づかなきゃなんねえしもうちょっと鍛えてから出直すって言うのも……いや、嬢ちゃんがそう決めたならいいか」
「全部でいくらになるかしら?」
いつの間にか取り出した財布の口を睨みながらルーシアが言った。
「そうだな、レザーアーマーが十二万ゴル、ナイフが二万ゴルだ」
そう言えばこの世界の通貨がどんなものかも分からないのだった、あとで聞いておかなければ……
「ならこれでいいわね」
そう言ってルーシアが取り出したのは細かな紋様の刻まれた金貨二枚だった、まだ分からないが金だし価値は高そうだ。
「金貨なんてひっさしぶりに見たな……ほい、お釣りだ」
その後すぐに店の中でレザーアーマーを装備した俺はテンションがかなり上がってしまい奇怪な踊りを店主とルーシアに見せつけてしまった、正気に戻った俺は顔を真っ赤にしながらルーシアと店主に忘れてくれと懇願したのだった。
しかし魔法ってのは凄かった。最初は俺の体より二回りは大きなレザーアーマーだったのだが着てみるとぴったりになっていた、いつ大きさが変わったのか分からないほどだった。
武具屋を出た俺たちは次に道具屋に行くことにした、理由は毒消しや傷薬を買うためだ。
武具屋から出て直ぐにルーシアに通貨のことを聞いた。通貨は銅貨が一枚百ゴル、そして鉄貨が一枚千ゴル、そして銀貨が一枚一万ゴルで金貨が一枚十万ゴルらしい。ちなみに百未満の数字は切り捨てになるようだ。そして聞いた感じ百ゴル百円くらいだった。
そう考えるとさっきのレザーアーマーは日本円で十三万円だったのか? さすがに高すぎる。
道を歩いていると結構な人数頭から耳を生やした人間を確認することができた、これなら俺も変人として扱われることもないだろう。というかよく見ると顔が完全にトカゲの人間もいた、これだと頭の耳なんて全く気にならなくなってしまう。
「あれが道具屋よ」
そう言ってルーシアが一軒の店を指さした。看板の文字は読めないが、そこに描かれた絵によって道具屋であることがうかがえる。
中に入ってみればそこには無数の薬が陳列されていた、道具屋というよりは薬屋に見える。というか見渡す限り薬以外のものが見えないのだが、これのどこが道具屋なのだろうか。
「いらっしゃいませ、欲しい物があったらここまで持ってきてください」
店員と思われる女性は、カウンターにうつ伏せになりながらこちらを見ることもなくそう言った。声ははきはきとしているが、その姿からは微塵もやる気が感じられない。
「気にしちゃダメよ、ここはいつもこうだから」
ルーシアはこういっているが店員がこれで良いのかよ……まあ別に仕事自体はするつもりのようだから大丈夫か。
「薬はいっぱいあるけど基本はこの二つね、これさえ持ってれば大抵のことはどうとでもなるわ」
渡された薬の説明を聞くと回復ポーション(下級)と毒消しだった、ポーションなんて単語を聞くと異世界なんだなあと感じてしまう。
薬の後はこの店で珍しい薬以外の商品である干し肉等保存の効く食料をいくつか買った。今回のレッドドラゴン討伐の依頼は行って帰って三日ほど時間が掛かるようなので、食料が必要になるらしい。
「あとこれを入れるバッグも必要ね」
ルーシアが俺に選んでくれたバッグは片方の肩に掛けるタイプのものだった、魔法が掛かっているらしく、見た目以上に物が入る。
しっかりと会計を済ませて(意外にも会計の時の店員は真面目だった)から店を出た、まだ日は高い位置にある。
「あとは着替えだったか」
「そうね、私がいつも買ってる場所に行くわよ」
服屋ではまず下着を買った、この世界の下着はいわゆるかぼちゃパンツと呼ばれるタイプのものが一般的らしい。採寸の時間はまさに地獄であったと言えよう、まあ詳しくは語るまい。
服に関してはルーシアのセンスに完全にお任せとした、服は完成まで三日かかるらしいのでまた三日後ここに来なければならない。
注文を終えてすることが全て終わった俺たちは、関所へ向かうこととなった。
土曜日投稿する気は無かったんですが筆が乗ったので




