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絶体絶命古代遺跡

今回少し長くなってしまいました

 ゆっくりとロボ集団が近づいてきている。


「流石にこの数は、僕にはどうしようもないね」

「私も……」


 見た目も声もさっきのと瓜二つなロボが、少なくとも10体以上は居るだろう。短い付き合いではあるが、ずっとポジティブだったスペンサーの弱音を聞いていると、もうどうしようもないような気がしてくる。


「あー、短い人生だった。せめて金使い切ってから死にたかった……」

「……まあ、とりあえず逃げようか」


 逃げようと踵を返した俺たちを迎えたのは倒したはずの最初のロボだった、所々に穴は開いているがそれも段々と修復されている。


『援軍呼んだ?』『呼んではないが、あれだけ暴れたのだ』『警報装置が作動したの?』『そうだろう』


 相変わらずの一人二役、いや聞いてる感じ一つの体に二つの精神があるようだしむしろ二人一役と言ったところか。


「ミサキ、今から僕がアイツをもう一回さっきの技で倒す」


 コートからメリケンサックを取り出しながらスペンサーがそう言った、ミラベルもそれに合わせてポーションを取り出している。


「そうしたら僕は多分気絶すると思うから、運んでくれたら嬉しいな」

「気絶って……さっきは気絶しなかったじゃねえか」

「魔力切れって結構体にダメージがあるんだよね、だから日に何度もやると体が持たなくって」

「まあ、一応頑張るけど」

「じゃあ、頼んだよ」


 そう言ってロボの目の前まで歩いて行ったスペンサーはメリケンサックを構えた。


『同じ手は二度食わぬ!』『さっきの爆弾みたいにフェイントかも?』『防御術式を発動すれば問題なかろう』

「魔弾『火炎』!」

『防御術式の発動を確認……む!?』


 メリケンサックから放たれたレーザーはロボが作り出した半透明のバリアーを砕き、防御のためにクロスされていた鉈と棍棒を易々と貫通、そのままロボの体に無数の穴をあけた。


「行くぞ!」


 俺とミラベルはスペンサーの腕を掴み、引きずるようにして走り出す。石の地面に激しく擦りつけられているがスペンサーも死ぬよりはマシだろう。走りながらミラベルは手に持っているポーションをスペンサーに振りかけている。


「それって掛けても効くのか」

「一応……効果は薄れちゃうけど」


 後ろを向けば大量のロボが穴だらけで倒れているロボを踏みつけながらこちらに走ってきていた。


「右はさっきの行き止まりだったな、左に行くぞ!」


 少し前の二の舞にならないようルートはよく考えて選んでいく。

 俺は手に力を入れてスペンサーの上半身を少し持ち上げ、コートに手を突っ込んで中身を漁る。適当に一つ手に当たった瓶を取り出してみる。


「えーっと、『鎧蟻アーマードアントの酸』……?」


 鎧蟻アーマードアントの酸と書かれた瓶をロボに投げつける、俺の貧弱な肩では長い距離投げることはできないがこの状況なら俺にも当てられる。砕けた瓶から大量の液体が迸る、酸に当たったロボはその体を溶かされて崩れ落ちていく。


「効果覿面だな」


 4、5体のロボは脱落したものの、直ぐに後ろにいたロボが前に出てくるので殆ど変化は感じられない。


「あんまり変わった感じはしないけどね……」

「数が多すぎる! よく考えたらこのまま()()()()()()俺達は助かるんだ!?」

「確かに……」


 ゴールの見えないマラソンが始まってしまった、俺の体力が切れるのが先か、奴らが俺たちを見失うのが先か、まあ奴らが俺たちを見失うなんて多分あり得ないだろうが。


『足の速い侵入者どもだ』『逃げられる?』『入口は封鎖した、逃げられることは無い』


 後ろのロボどもが何か不穏なことを話している。


「もっと他に何か持ってないか……!?」


 もう一度スペンサーのコートから瓶を一つ取り出す、中には真っ黒なドロリとした液体が詰まっていてラベルには『爆弾竜ボム・ドラゴンの体液』と書かれている。名前を見る限り爆発するのだろう。……しかし俺の予想に反して投げた瓶の中身は爆発せず、ただロボを黒く染めただけであった。


「ラベル詐欺かよ! もっと分かりやすく書いとけ!」


 それからいくつかコートから瓶を取り出して投げつけたが効果は薄く、一応何体かのロボは倒したもののロボの数は多く全体的に見てあまり減った感じはしない。


「『竜蛇の毒』『飛針蜜蜂の毒』『牙鳥の毒』『水鼠の毒』……毒多すぎだろ」


 毒はロボには効かないだろう……一応投げておくが。予想通りロボは液体を少しも気にしていない様子だった。


「ミサキちゃん! 次はどっちに行く?」

「じゃあまっすぐ!」


 右へ曲がる道を無視してまっすぐに進んでいく。それにしても古代遺跡は広い、どこまで広がっているのだろうか。

 そのまま走って突き当りを曲がる、……しかしそこは壁が行く手を塞いでいた。


「行き止まり!?」

「そんな……このままじゃ……アイツらもすぐ来ちゃうよ」


 曲がり角に目をやるとちょうど奴らが曲がってきている所だった。


「あ、終わった」


 俺は生を完全に諦めて仰向けに寝転がる、この服従のポーズで許してもらえないだろうか。


 というかなぜか背中が妙に冷たい。何故だろう。


「殺すなら一思いにやってくれ! できるだけ痛くないようにしてください!」

「変なところで潔いね、ミサキは」


 気が付けばスペンサーが目を覚ましていた、しかしこんな絶望的な状況で目を覚ますとは運が良いのか悪いのか。


「目が覚めたのか、そのまま寝てる間に死んでた方が楽でよかったかもよ」

「自分の死に方も分からないのはごめんだね。

 ……ん? やけにコートが軽いな……って殆ど瓶が無くなってるじゃないか! 『擬態竜ドラゴンモドキのガス』も『牙鳥の毒』、『鎧蟻アーマードアントの酸』まで! 高かったのに……」

「どうせ死ぬんだしー、今更気にすんな」


 俺がそう言ってもなお項垂れているスペンサーから意識をロボに移す、今まで気付かなかったがよく見ると腹の部分に魔法陣のようなものが描かれている、あれが防御術式なのかもしれない。


「はあ」


 見せつけるように俺は嘆息する、ロボが多少の慈悲をくれないかと思ったが案の定というか俺たちを生きて返す気はさらさらないようだった。


「……何か聞こえない?」


 ふとミラベルがそんなことを言い出した、俺の耳は全く何も捉えていないが。


「確かに、何か聞こえる」

「俺は何も聞こえないんだけど」

「そう言えばミサキは魔力が無いんだったっけ……今僕たちが聞こえてるのは魔力の音だから、ミサキには聞こえないのかも」


 そう言えば前にルーシアから聞いたことがある、魔力を持つ人間は他者が魔法を発動する音が聞こえるらしい。なんでも魔力は共鳴する性質をそなえているそうで、近くで魔力を発するとそれが音となって聞こえるそうなのだ。魔力のない俺には関係のない話だが。


「どんな音だ?」

「多分これは、火魔法の音だね」


 火魔法がどんな音なのかは分からないが、つまり近くで火魔法を使っている人が居るということだろうか。恐らくこの遺跡の中には俺たち以外に人間は居ないだろうし、ともすれば使っているのは今俺たちとはぐれているルーシアということになる。


「ねえ、あれ……」


 ミラベルが指を指した方向(つまりはロボのいる方向なのだが)を見ればちょうどロボが火の海に飲まれている所だった。


「熱っ」


 その火の熱気が俺たちにも伝わってくる、その熱気だけで火傷してしまいそうである。


「あんた達何やってるのよ?」


 ロボを呑み込んだ火の海から歩いてきたのは弓を背負った金髪の女性――ルーシアだった。ルーシアは手に小さな杖を持っている、いつもは杖なんか使っていないのに。それとも大きな魔法を使うときは使わないといけないだろうか。


「ルーシア、助かった!」


 スペンサーがルーシアに走り寄ってお礼を言っている、顔には安堵の表情を浮かべながら。


「別にお礼なんていいわ、それにそんなことを言ってる暇があるなら()()()をどうにかしなきゃいけないしね」


 俺たちの目の前まで歩いてきたルーシアは振り返って弓を構えた。そしてその先では()()()()と溶けた金属が一か所に集まって行く。まるで意志を持っているかのようにその融解した金属たちは一か所に集まり、一つのカタチを作り出した。


「なんだありゃ」


 赤く熱を発していた金属は少しづつ元の銀色に戻り、冷えた姿は形こそ元のロボと同じだったがその大きさは全く持って異常だった。


「先手必勝ね」


 ルーシアの手から放たれた赤く光る矢はロボに突き刺さったが……それだけだった。それを見てルーシアは何十本もの矢を放つ、色は様々で虹をそのまま飛ばしているような技だ、恐らくは色々な属性の付与された矢なのだろう。放たれた矢は一本も外れることなくロボに穴を穿っていく。


「じゃ、僕も手伝わせてもらうね」


 さっきまで魔力を使い果たして倒れていたスペンサーが銃を構えている。さっきは死んでしまいそうな有様だったのに。


「大丈夫なのか?」

「空っぽにならなければ大丈夫だよ……多分」


 何やら不安の残る台詞だが、本人が大丈夫だと思うのなら大丈夫だろう。ルーシアとスペンサー、二人が同時にロボに攻撃を加えるが、ロボはそれほど効いている様子は無い。


「大人しく溶けなさい!」


 ルーシアの杖から炎が迸り、渦となってロボへ襲い掛かる。


『危険?』『来ると分かっていれば対処はできる』『防御術式はさっきダメだったよ?』『なら仕方ない、大人しく受けることにしよう』


 炎の渦はロボを巻き込んで激しく燃え上がる、しかし先と同じく溶けた金属が一か所に集まり、また同じ形を作り出した。


「不死身かアイツは!」

「大抵修復術式は内側に刻まれるから、溶かしたりすれば無くなるはずなんだけど……」

「……! アイツの足元を見て」


 ルーシアの言う通りロボの足をよく見る、が、俺には何も変なようには見えない。


「……地面から魔力のパスが通ってる、修復術式はこの遺跡自体に描かれてるってことか」


 スペンサーの言葉を聞いて分かったがまたしても魔力が無いと分からないタイプの物だった、この世界は魔力のない人間に少しばかり厳しすぎるような気がする。


「つまりこの遺跡のどこかにある修復術式を消せばこいつは復活しなくなるってことか?」

「まあ簡単に言えばそんなところね」


 どこにあるのか分からない上にどんな見た目をしてるかも分からない物を、この遺跡の中から見つけ出すなんて不可能だろう。


「でもそんなことする暇は無いし、今私がここから術式に干渉してパスを切るわ。だからちょっとだけ時間を稼いで頂戴」

「分かった、なら俺が時間を稼ぐ」

「僕は後ろから援護するよ」


 俺は両腕を獣化させロボに躍りかかる。縦に振るわれた棍棒を右に避け、ロボの足を切りつける。


「分かってたことだけど、すぐ直っちまうな」


 ダメージを与えたところで修復術式とやらがある以上意味が無いので、爪を立ててロボの足をよじ登って行く。俺の爪の切れ味が良いのかロボが柔らかいのか、爪は易々とロボに刺さる。


「うああああああああああ!」


 ロボは上半身を大きく振ることで俺をどかそうとしている。遊園地のアトラクションのような状況に俺は叫び声を上げながら必死でしがみつく。


『邪魔だ! 離せ!』

「離したら俺が吹き飛んで死ぬから無理だぁああ!」


 時折スペンサーの放つ弾丸が俺を掠めるので怖い、当たらなければいいのだが。当たった瞬間恐らく俺は宙を舞うことになるだろうし、そうなったら落下死は免れないだろう。


「おりゃあ!」


 スペンサーの弾が丁度弱いところに当たったのか一瞬ロボが動きを止めた、すかさず俺はロボに攻撃を加えていく。


「……ってええええ!」


 どうやらそれはフェイクだったようで唐突にロボが勢いよく体をゆすった、攻撃のために片手を離していた俺は握力が足らず宙を舞った。


「ミサキ!」


 スペンサーの心配する声が聞こえるが返事を返すほどの余裕はない。……そう言えば猫は高い位置からでも着地できるんだったか。ライオンも同じネコ科だし似たようなことができるかもしれない、そう思った俺は全身を獣化させて着地に備える。

 ……結果何とか着地は成功したが猫とは体重が違いすぎるせいか体の節々が痛い。


「いてて……大丈夫だ」

「良かった」

「ミサキ! パスを切るのに成功したわ、そこから離れて!」


 ルーシアの台詞を聞いて全力疾走でロボから離れる。俺が離れた瞬間、ロボを炎が包み込んだ。


『ぐうううう!』


 今までと同じようにロボは溶けた、しかしそれが復活する様子はない。


「これで、もう大丈夫かな」


 そう言うスペンサーの顔には安堵の表情が浮かんでいた、見ればミラベルもルーシアもほっとしたような顔をしていた。


「本当めんどくさい敵だったわね…………ミサキどうしたの? 早く獣化は解いたら?」

「な、何か着るもの持ってない? このままだと全裸で探索することになっちゃうんだけど」


 戦闘が終わり、ロボは死んだが俺は獣化したままだった。それは獣化したときに脱ぎ捨たレザーアーマーがロボに止めを刺す時に一緒に燃やされてしまったからだ。

誤字脱字等あれば教えて貰えれば幸いです。

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