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竜人飛翔

 噂の古代遺跡が出現したという森に着くまでに、俺たちはある程度情報交換を終えていた。


 スペンサーの冒険者ランクはAで得意武器は魔銃(魔力を直接弾丸として撃ちだす武器)。出身国はアーセムという国で、アーセムは魔導金属と呼ばれる金属を使った機械の研究が盛んに行われていて、魔銃もその研究の成果の一つなのだとか。


 一方のミラベルは冒険者ランクB、得意武器は無く戦闘では専ら光魔法を使う。光魔法は回復と光を出すことに特化していて、ミラベルの使える上級光魔法になると部品さえそろっていれば千切れた四肢でさえも繋げることができるらしい。


 二人はスペンサーが15歳の誕生日を迎えると同時に旅に出て、トレジャーハンターとして世界各地の古代遺跡を回っているそうだ。


「なんでトレジャーハンターになろうと思ったんだ?」


 森を眼前に据えて俺はそう言った。


「僕の使う魔銃のとなる道具は古代遺跡の中で見つかったらしくてね」


 それは火銃というんだが、とスペンサーはそう付け加えて少しの間黙っていた。


「そんな今の僕達でも思いつかないような物がどこで作られたのか、とか気になって調べてみたくなったんだ」

「へえ、確かにそう言うのは俺もあるな。まあ実際行動に移すのは面倒だからしないけど」


 森に入ると当たり前だが木が沢山生えていた、鳥の鳴き声が少々うるさい。歩くたびに草を踏む音が辺りに響く。


「…………さて、ここは何処だろう?」


 しばらく歩いていて先頭を切って歩いていたスペンサーがそう言った。自信満々な足取りだったからてっきり場所が分かっているものだとばかり思っていたのだが。


「はぁ? 目印に沿って歩いてたんじゃないの!?」


 真っ先に噛みついたのはルーシアだった、スペンサーは苦笑いを浮かべている。


「いやあ、最初はそうだったんだけど途中から見失っちゃって、中々言い出せなくて」

「そういうことは直ぐ言いなさいよ! ……ハア、まったく仕方ないわね、私が今()()わ」


 ルーシアはそう言うとゆっくり浮かび上がった(風魔法とかそんなところだろう)、そのま上昇して行きあたりの木より上に到達したところで動きを止めた。


「ルーシアは風魔法の使い手なのか?」 

「いや、ルーシアは闇以外の属性を全部中級まで使えるはずだ」

「へえ、それは珍しいね。普通一つか二つなのにそれを中級とはいえ全属性とは」


 魔法には光、闇、水、火、風、地の6つの属性がある。そのうち闇は魔族もしくは魔物しか扱うことはできないので、実質五属性で全てと言えるだろう。


「お前はどうなんだ?」

「ああ、僕は魔法は使えないよ。でも魔力が少し人より多いから魔銃なんて武器を使ってる」


 魔法が使えない点は俺と同じだったが、魔力の有無に関しては俺とは天と地だった。俺も魔力さえあれば飛び道具が使えるのに……。


「逆に俺は魔力が全く無くて魔法が使えない」

「それは、逆に全属性使えるより珍しいかもね」


 そんな悪い意味での珍しさは全く持って嬉しくない、まあ魔力よりは筋力の方が今は欲しいところなのだが。


「場所が分かったわ、さっさと行くわよ。着いても探索する時間が無いんじゃ困るでしょ?」


 いつの間にか地上へと降り立っていたルーシアがそう言った。


「それは困るね、急ごうか」

「なあ、さっきのはどういう魔法なんだ?」

「風魔法よ、風を起こして飛んだだけ」


 想像通りだった、しかし自分を風で飛ばすなんて怖くて俺だったら使えない。


「中級で飛べるなんて……、ほとんど上級じゃないか」

「上級にはなれないわ、さっきのだって強い風を起こしただけだもの」


 ルーシアはこう言っているがスペンサーに聞いた話によると人間を安全に浮かせるのには相当細かな調整が必要になるらしく、少し加減を間違えば地面に真っ逆さま……本当に良くそんな魔法を使う気になるものだ。


 遺跡は案外近くにあって、入口は直ぐに見えてきた。


「これは……確かに古代遺跡だな」


 それは正に古代遺跡と言うのに相応しく、朽ち果てボロボロになった石で出来た建造物だった。入口の両端には巨大な人の像が立っていた、それも長い時を感じさせるもので左側の像は所々欠けていて、右側の像に至っては上半身から上が無くなっている。


「遺跡の出現については色々説があるんだけどね、一番有力な説はどこかから転移魔法で飛ばされてくるっていうのだね」


 なんでも古代遺跡が出現するときには膨大な魔力が使われるらしく、魔力感知に特化していなくともある程度の力を持つ魔導士はそれを感じてしまうんだとか。


「……ん、あれなんだ?」

「どうしたの?」


 俺が指さした遺跡の入口近くの森からは緑色の人型がぞろぞろと出てきていた。


「リザードマンかしら、近くに集落でもあるのかもね」


 リザードマンは人型に近いが全身がトカゲのような鱗におおわれている魔物で、リザードマンは人間を見かけるとなぜだか嬉々として襲い掛かってくるらしい。


「いや、あれはリザードマンじゃないよ。あれは……」


 ふとスペンサーがそんなことを言い出した。盾と剣を持ったリザードマン達はを広げて空を飛んでいる。


竜人ドラゴニュートだ!」


 空を飛んでいた何十匹もの竜人は最も大きな個体が叫び声を上げた瞬間、堰を切ったように一斉に襲い掛かってきた。


「皆さん! 目を瞑ってください! ……『光よ』!」


 ミラベルの言葉に従って目を瞑る、目を瞑っていても分かるほどの光が辺り一面に広がった。目を開けるとほとんどの竜人は地に落ちていて、目を押さえてうずくまっている。恐らくミラベルの光魔法によってフラッシュバンよろしく目を潰されたのだろう。


 しかし何匹かの竜人は未だ空を飛んでいてこちらの様子を窺っている。そんな竜人達にスペンサーはすぐに魔銃を向け、引き金を引いた。聞こえた銃声の数は竜人の数と同じ、地に落ちた竜人も銃声と同じ数だった。


「結構強いんだな、スペンサー達って」

「まあこれでも10年は一緒に旅してるからね」


 10年ってことはスペンサー達は25歳なのか、見た目はどちらもかなり若く見えるのでまだ10代だと思っていた。


「じゃあ25か、俺と同い年だな」

「「え!?」」

「そうだったの!?」


 ミラベルとスペンサー(あとルーシア)がとんでもない顔をしている、よく考えたら今の俺は見た目10台の少女なのだった。まあ言ってしまったものはしょうがないだろう。


「ミサキって結構、いやかなり若く見えるタイプなんだね……正直13歳くらいかと思ってたよ」

「まあ、そう言ってくれると嬉しいぜ」


 今更訂正するのもかなり変なのでこのまま通すことにする。というか俺の肉体はここから成長するのだろうか、しないのだとしたら……気にしないようにしておこう。


「衝撃の事実ね……まあ、さっさと残りの竜人に止め刺して入るわよ」


 風魔法だろうか、竜人達が一か所に集まっていきそのままされて真っ赤な肉塊と化した。


「エッグい魔法使うなあ、もっと綺麗にできないのか?」

「これが楽で良いのよ、一々ナイフで止めなんてめんどくさいでしょ?」


 それはそうなのだが飛び散った肉片が生々しくて気持ち悪い、それも魔法を使ったのか一定の範囲に抑えられているが。


「ってか竜人の討伐証明は取らなくていいのか?」

「変な荷物持って行くと重くなっちゃうからね、邪魔になるんだよ」


 確かに遺跡の中に何があるともしれないのだし、できるだけ軽い身の方が良いのだろう。


「……ねえルーシア、豪快なのは良いけど、ちゃんと処理しないと別の魔物が寄ってきちゃうよ?」


 スペンサーはそう言ってコートの懐に手を入れると、瓶に入った液体を取り出した。


「それは?」

「これは僕が調合した臭い消しだよ、これを振りかけておけば最低でも五時間は臭いが完全に消せる」


 そのトンデモ臭い消しをスペンサーが掛けようとした時、ルーシアがその腕を掴んだ。


「わざわざそんなことする必要ないわ、それは取っておきなさい」


 ルーシアが手を向けると散らばっていた肉片の周りの土がせりあがり、そのまま肉片の上に覆いかぶさった。さながら土が肉を食べているかのような光景だった。


「ハハ、流石だね」


 スペンサーはニコニコと笑いながら瓶をコートの裏側に入れた、今まで気にしていなかったがそのコートはどうなっているのだろうか。


「ん、これ? このコートはこうなってるんだよ」


 コートの裏地には大量の小瓶が括り付けられていて、そのすべてに紙のラベルが貼ってありどんな用途の物かすぐ分かるようになっているらしい。


「へぇ、便利だな」

「それが作ってから直ぐに思ったんだけどね、迂闊に転ぶと瓶が割れて大惨事になるんだよね」


 特に酸なんかはね、と言ってスペンサーは笑った。正直言ってそんなもの今でも着てるほうがどうにかしてると思う。


「今は瓶の方の強度を上げて対応してるよ、それでも魔物の攻撃なんかじゃ良く割れちゃうんだけど」

「そりゃそうだろうな……」


 竜人なんて邪魔者も居なくなったことなので、俺たちは今度こそ遺跡の中に入って行く。遺跡の中はジメジメしていて明かりもなくて暗い。


 ミラベルが「『光球よ』」と呪文を唱えて発動した光魔法に照らされて、無数の壁画が浮かびあがった。


「この壁の絵にはなんか意味が在ったりすんのか?」

「時々魔法陣だったりもするけど……そんなのは稀だね、殆どは描いてあるだけで意味が無いはずだよ」

「へえ」


 本当に何気なく触れてみた壁画が輝き始めた、どうやら稀にあるらしい魔法陣だったようだ。


「ミサキ! な、なにをしたん……!?」


 壁の魔法陣はいわゆる転移魔法の類だったらしく、俺たちはその魔法の発動に巻き込まれ転移してしまったようである。唯一先行していたルーシアを除いて。


「こ、『光球よ』」


 ミラベルの魔法によって真っ暗だった部屋に明かりが灯る、どうやら飛ばされた先は今の遺跡の奥らしく同じような壁画が描かれている壁が目に入った。


「あー、気持ち悪い」

「大丈夫かい? 転移酔いかな、すぐ直ると良いんだけど」

「大丈夫だ、そこまでひどいわけじゃない」


 転移はグニャグニャと全身が飴細工のように引き伸ばされるようなそんな感覚で、もう二度と経験したくないところだ。


「それにしても……ここはどのあたりだろうね」


 そう言ってスペンサーは銃を抜いた、何か見つけたのだろうか?


「いや、一応警戒だけはしておこうと思ってね。何もなければそれが一番だよ」

「確かに警戒しといて損は無いか」


 と言っても俺には準備する武器なんて無いのだが、獣化するにしても時間を必要とするものでもないのだし。

誤字脱字等あれば教えて貰えれば幸いです。

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