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ハロウィン(23)
手紙をハワードへと突っ返す。
顔から火が出るという言葉はこういうときに使うのだろう。あまりの気恥かしさに耳まで赤くなっているであろうことは容易に想像がついた。それを悟られまいとハワードに背を向けると、彼は
「トミコへ」
あろうことか、声に出して手紙を読み始めた。
「お、音読するな!恥ずかしいから!」
慌てて振り返って手紙を奪い取る。
「恥ずかしい?どうして」
と真剣に首を傾げているハワードに私は大声で教えてやる。
「日本語でこういうことを言うと恥ずかしいの」
『アイラブユー』と『愛してる』は同じ意味でも、同じように使えるとは限らないのだ。ハワードは私の剣幕にうつむいたかと思うと
「To Tomiko……」
と滑らかにそらんじだした。
「英語で読めばいいとは言ってない!手紙は口で言いにくいことを書くんだから、それを読んだら意味ないでしょ」