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四月一日の道化 (4)
「……え?」
私はついついそんな間の抜けた声をあげていた。改めて訊ねようとするも、何から訊ねるべきか迷ううちに、水下が先んじて恥を忍ぶように俯き言う。
「寺石に告白して、フられた後だよ」
どこまでも沈んだ水下の声。思い出すことさえ苦痛な程ショックだったのが窺える。
寺石さやかとは私と水下の共通の友人で、この一年間同じクラスで多くの時間を共にした女子だった。特に馬鹿正直で騙されやすい水下は、嘘を吐いて人をからかうのが大好きなさやかにとって格好の獲物だったようで、しょっちゅうその相手をさせられていた。
そんな彼女にいつの間にか水下は惹かれていき、そして今日告白をしたのだそうだ。しかも既にフられ済み。もう長い付き合いになる私もそうそうお目にかかることのない落ち込みようだった。