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梅雨の雨の憂鬱 オマケ (5)
「使えよ」
「えっ?」
空からもらい泣きでもしそうになる私に、誠君は傘を差し出していた。
その表情はやっぱり、昔と同じ困り顔。
「だから、使えって。どうせ桜のことだ、傘なくて困ってたんだろ?」
その偉そうな言葉遣いも、馴れ馴れしい話し方も、あの頃と同じ。
「別に、返さなくてもいいから」
誠君はそう言うと、早足で立ち去る。
そう、誠君はあの時と同じ。違うのは私。変わったのも、当たり前を終わらせたのも私。それを実感させられる。
だから雨の日は嫌いだった。
「でも、それじゃあ誠君が濡れちゃうんじゃ……」
その証拠に、私は彼に返す言葉を探すことにさえ苦労している。こんなにも嬉しいのに、どんな言葉遣いで、どんな話し方でそれを伝えればいいのかが、わからない。




