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四月一日の道化 (3)
黙りこくる水下をさて置きつつ、程無くして友人の忘れ物を鞄にしまった私は、埒が明かないと感じて思い切って訊ねてみることにした。
「誰か待ってるの?」
何をするでもなく、一人教室にいる理由といえばそれが妥当であろう。そしてその後のことも、概ね見当が付く。
肯定も否定も、誤魔化すことさえもせずに押し黙る水下に私は続けて聞いた。
「ひょっとして、さやか?」
水下は沈黙を保ったまま。私の質問は続く。
「告白するの?」
その問いを最後に、私も口をつぐむ。やがて、やけに重たい沈黙を、決意するかのような間を持たせた後で水下が破った。
「……告白した」
私が全く予想だにしなかった答で。